トーマス・ベンツェン:デンマークデザインの現代的継承者
トーマス・ベンツェン(Thomas Bentzen, 1969年生まれ)は、現代スカンディナビアデザインを代表するデンマーク人デザイナーである。シンプルさ、合理性、機能性を基調としながら、詩的な美しさと遊び心を融合させた作品で知られ、Muuto、HAY、Louis Poulsen、Royal Copenhagenなど北欧を代表するブランドとの協働を通じて、現代の生活空間に新たな視点をもたらしてきた。特に、彼の代表作である「Coverチェア」は、成形ベニヤ材の可能性を極限まで追求した傑作として、現代デンマークデザインの象徴的存在となっている。
バイオグラフィー:職人から現代デザイナーへの歩み
1969年、コペンハーゲンに生まれたトーマス・ベンツェンは、1990年代初頭に家具職人としての訓練を受けることから、そのキャリアをスタートさせた。この職人としての経験は、後の彼のデザインアプローチに決定的な影響を与えることとなる。素材の特性を深く理解し、実際の製作工程を熟知していることが、彼のデザインに実現可能性と耐久性をもたらしているのである。
2003年、王立デンマーク美術アカデミー デザイン学校の家具・空間デザイン学科を卒業。在学中の2002年には、同級生4名とともにデザインコレクティブ「REMOVE」を共同創設した。REMOVEは芸術性と産業性の両立を追求し、2007年にはBoligmagasinet誌から「Best Upcoming Designer」に選出されるなど、若手デザイナー集団として注目を集めた。
卒業後、2005年から2010年までの5年間、著名なデンマーク人デザイナー、ルイーズ・キャンベルのスタジオでシニアデザイナーとして勤務し、2008年からはパートナーに就任。この時期、キャンベルの下で多様なプロジェクトに携わり、デザインの幅を大きく広げた。
2010年、コペンハーゲンに自身のスタジオ「Thomas Bentzen Industrial Design」を設立。独立後も、2011年から2013年までMuutoのデザインマネージャー、2013年から2015年までデザイン責任者を務めるなど、業界における重要な役割を担ってきた。この時期に、Muutoの製品開発戦略を形成し、同ブランドの成長に大きく貢献した。
現在は自身のスタジオを拠点に、家具、照明、テキスタイル、産業デザインと幅広い分野で活動を展開している。また、王立デンマーク美術アカデミーで時折講師を務め、デンマーク家具職人秋季展覧会(Snedkernes Efterårsudstilling)の理事会メンバーとして、次世代デザイナーの育成にも貢献している。
デザイン哲学:誠実さ、機能性、そして詩情
ベンツェンのデザイン哲学は、「スカンディナビアデザインとは、誠実さと機能性、そして詩情の融合である」という彼自身の言葉に集約される。この理念は、デンマークデザインの伝統的価値観を継承しながらも、現代の素材と製造技術を積極的に取り入れる姿勢に表れている。
彼のデザインプロセスの核心は、プロトタイプ制作とモデル作りにある。「インスピレーションは、ハードワークから生まれる。モデルを作り、組み立てるとき、手で考えるときに生まれるのだ」と語るベンツェンにとって、コンピュータ上の設計だけでなく、実際に手を動かして試作品を作ることが不可欠なのである。彼のスタジオには常に試作品やスケッチ、素材サンプルが溢れ、創造的実験の場となっている。
特筆すべきは、成形ベニヤ材の可能性を追求する彼の一貫した姿勢である。「好きな素材があるわけではなく、プロジェクトに適した素材を選ぶのが正しい」と前置きしつつも、「正直に言えば、木材、特にベニヤ材に弱点がある。とても楽しいが、非常に扱いが難しい」と笑顔で認める。この薄い木材シートの折り曲げ可能性を限界まで追求する姿勢が、Coverチェアをはじめとする彼の代表作を生み出してきた。
また、彼のデザイン哲学には「必要性を美徳に変える」という考え方が貫かれている。実用的な要求から出発しながら、それを単なる機能的解決に留めず、喜びや好奇心を喚起する造形へと昇華させることを目指す。「機能的でシンプルでありながら、使用時には人間のニーズを満たし、使用していないときには喜びを生み出す対象物を創造したい」という彼の言葉は、この姿勢を端的に表している。
産業生産における職人技についても、ベンツェンは独自の見解を持つ。「産業生産が正しく行われるとき、それは私にとって職人技である。複雑で高品質な、長持ちする製品を大量生産することは困難であり、熟練した職人と生産設備を必要とする。私たちデザイナーには、素材、生産、プロセス、人々に挑戦し、現代の職人技を発展・維持する役割がある」と述べ、工業デザインと伝統的職人技の連続性を強調している。
作品の特徴:明快さ、遊び心、そしてグラフィカルな表現
トーマス・ベンツェンの作品は、いくつかの顕著な特徴によって識別できる。
線的表現とグラフィカルな美学
彼のデザインは、明快で直線的な表現によって特徴づけられる。Linear Steel SeriesやLinear Wood Seriesに代表されるように、シンプルな線の構成により、視覚的にクリーンで現代的な印象を生み出す。この線的アプローチは、彼の初期の職人訓練と、グラフィカルな感性の融合から生まれている。
成形ベニヤ材の探求
薄いベニヤ材を布地のように扱うという発想が、ベンツェンの多くの革新的作品の基盤となっている。Coverチェアでは、成形ベニヤ材が座面と背もたれを形成し、あたかも布が木製フレームに「かぶせられている」かのような視覚効果を生み出す。Soft Chairでは、この発想をさらに推し進め、ベニヤ材が固体木材フレームに優雅に「垂れ下がる」ような表現を実現している。
幾何学的遊び心
機能性を追求する中で生まれた偶然の美しさを活かす姿勢も、ベンツェンの特徴である。Shade Binのデザインエピソードは象徴的だ。紙模型で円形を作ることが難しく、切り込みを入れたところ、それが視覚的に魅力的であるだけでなく、構造的強度を増し、光と影の美しい戯れを生み出すことを発見した。「手を使い、コンピュータではなく、実際にモデルを作ることから生まれた幸運な偶然」と彼は語る。
素材の対比と調和
Enfold Sideboardに見られるように、冷たいスチールと温かみのあるオーク材の組み合わせなど、異なる素材の特性を対比させながら調和させる技法を用いる。工場建築からインスピレーションを得た産業的な美学を、スカンディナビアの伝統的な木材使用と融合させることで、「産業的でありながら家庭的」な独特の表現を生み出している。
機能の可視化
ベンツェンは、使用方法を暗示するデザイン要素を重視する。Shade Binの取っ手について、「使い方を示すために取っ手を追加した。これが取り外し可能な蓋であることを示す。それは提案であり、ヒントなのだ」と説明する。形態が機能を語るというモダニズムの原則を、現代的な解釈で表現している。
主要代表作品:デザイン的革新の軌跡
Cover Chair Series(2013年~)
トーマス・ベンツェンを代表する作品であり、現代デンマークデザインの象徴的存在となったCoverチェアは、3年以上の開発期間を経て2013年にMuutoから発表された。古典的なスカンディナビアダイニングアームチェアという類型に、新たな視点をもたらすというブリーフから始まったこのプロジェクトは、Around Coffee Tableのデザイン作業中にベニヤ材を多用していた経験が基盤となっている。
このチェアの最も革新的な要素は、成形ベニヤ材による座面と背もたれが、固体木材のフレームと脚部を「覆う(cover)」ように構成されている点である。当初のプロトタイプではアームレストに「カバー」がなかったが、これを追加することで椅子の特徴的アイデンティティが確立された。このカバーは、前脚と後脚を強固に接続し、通常必要とされる脚間の貫を不要にするという構造的役割も果たしている。
開発において最大の課題は、軽量でありながら強度を確保することだった。「軽量で強固であることは、常に矛盾である」とベンツェン自身が語るように、これは容易ではなかった。解決策として、固体木材が座面と背もたれを支える構造を担い、座面とアームレストは非常に薄い成形合板で構成することで、軽やかに見えながらしっかりと地面に根ざした印象を実現した。
Cover Chair Seriesはその後拡張され、サイドチェア、ラウンジチェア、バースツール、カウンタースツールなど、包括的なファミリーへと発展している。特にサイドチェアは、Muutoコレクションで初のスタッキング可能な木製チェアとなり、アームレストのカバーを逆向きに配置するという新しいアイデンティティを獲得している。
Around Coffee Table(2012年頃)
Around Coffee Tableは、古いスカンディナビアデザインへのオマージュと現代的解釈が融合した作品である。かつてコーヒーテーブルには、高価なカーペットにコーヒーをこぼさないよう縁が設けられていた。ベンツェンはこの伝統的要素を現代のベニヤ材技術と組み合わせることを試みたが、美しくまとめることができずにいた。
「ほぼフラストレーションから、縁に開口部を作った。それがテーブルに特徴を与えることになった」と彼は語る。この開口部により、木製ベニヤのフレームがテーブルの縁に沿って走るという特徴的なデザインが誕生した。機能的要素(縁)と現代的素材(ベニヤ材)、そして偶然の発見(開口部)が組み合わさり、Around Coffee Tableの独特な表情が生まれたのである。
このテーブルは複数のサイズで展開され、単独でもグループでも使用可能な多用途性を持つ。リビングルーム、ラウンジエリア、ロビー、ホテルルームなど、様々な空間で活用されている。
Linear Steel Series(2016年頃)
Linear Steel Seriesは、現代的な屋外家具に新たな視点をもたらした画期的なコレクションである。直線、折り曲げられたエッジ、そして頑丈な素材感と有機的で柔らかい形態の対比によって特徴づけられる。
このシリーズのユニークな要素は、半円形に交差する脚部と、雨水が容易に排水できるよう座面に設けられた小さな間隔である。これにより視覚的にクリーンで、長期的な美観を保つ実用性を兼ね備えている。粉体塗装されたスチール製で、マットな質感と現代的な感覚を持ちながら、細部の繊細さと細身のアームレストがエレガントな表現を生み出している。
チェア、テーブル、ベンチから構成されるこのシリーズは、スタッキング可能な設計により、商業空間でも住宅でも柔軟に使用できる。屋外使用に適した耐候性の深いマット、UV耐性粉体塗装仕上げが施されている。
Linear Wood Series(2019年)
Linear Wood Seriesは、Linear Steel Seriesの「屋外」と「屋内」の境界を曖昧にするというコンセプトを体現した作品である。ピクニックベンチにインスパイアされた屋外家具と、ほぼ同じデザインディテールを持ちながら、折り曲げられたスチールではなくオーク材で製作されている。
「屋内家具と屋外家具の境界が、ますます混ざり合ってきていることがわかる」とMuutoのデザインディレクター、クリスチャン・グローセンは説明する。家が庭へと開かれるように設計される現代において、この傾向に対応したデザインである。控えめなディテール、シンプルさ、多用途性という特徴が、両シリーズに共通している。
Enfold Sideboard(2018年)
Enfold Sideboardは、工場建築の美学を現代の家庭空間に翻訳した野心的な作品である。「デザイナーとして行う多くの工場訪問が、産業的対象物の美的魅力を探求するきっかけとなった。この要素を、スカンディナビアデザイン伝統への敬意と組み合わせて、現代の家庭に翻訳したかった」とベンツェンは語る。
このサイドボードの特徴は、パンチングされ折り曲げられたラッカー仕上げのスチール製スライドドアにある。リッジ加工された表面は、グラフィカルで現代的な表現を生み出す。この冷たいスチールの要素は、固体オーク材の温かみのある要素と対比され、「産業的でありながら家庭的」という独特のバランスを実現している。すべてのネジとボルトは視界から隠され、クリーンな外観を保っている。
垂直型と水平型の2つの構成で提供され、それぞれ調整可能な棚が設けられている。スチール要素はブラック、ライトグレー、ダスティグリーン、サンドイエローで展開され、木製フレームは透明なワニスで自然な仕上げとなっている。
Soft Chair(2019年)
TAKTのためにデザインされたSoft Chairは、成形ベニヤ材の流動的な曲線を祝福する作品である。「座面と背もたれをベニヤ材で固体木材フレームに垂れ下がらせるというアイデアが、プロジェクトの出発点だった。成形ベニヤ材をテキスタイルのように扱うという発想」とベンツェンは説明する。
このチェアは、数十年にわたりスカンディナビアデザイナーに人気のあった製造方法と素材を用いている。薄いベニヤシートを接着し、型に入れてプレスすることで成形合板を作り出す。ベンツェンの現代的解釈では、この成形プロセスを使用して座面と背もたれを形成し、それがアッシュ材の固体フレームに優雅に垂れ下がるように見せている。
この椅子は、使用された素材と構成要素すべてを祝福することを意図している。曲線的な合板要素は、露出した金属ボルトで固定されたシンプルなフレームにスロットイン方式で取り付けられている。フラットパック可能な設計により、輸送と保管の効率性も実現している。
Soft ChairはDezeen Awards 2019のSeating design部門にショートリストされ、2020年にはDezeen Seating Design Awardを受賞した。
Loft Chair(2018年頃)
Loft Chairは、洗練されたシンプルさ、快適さ、機能性をすべて一つのデザインに統合した作品である。「Muutoからの課題は、小型、コンパクト、強固、快適というラインに沿っていた。即座に、可能な限り強固にするために、スチール製のベースが必要だとわかった」とベンツェンは説明する。
快適さのため、CoverチェアやAround Coffee Tableと同じ薄くシャープな合板を使用した。Loft Chairは曲げを用いず、カットのみで作られている。中央に向かって角度がつけられており、接地した強度を表現し、機能的でありながら洗練された印象を与える。
スチールベースと合板シェルの組み合わせにより、頑丈さとエレガンスという相反する要素が調和している。バースツールとカウンタースツールのバージョンも展開され、商業空間でも住宅でも広く使用されている。
Linear Lamp Series(2017年頃)
Linear Lamp Seriesは、大きな空間内に小さな雰囲気を創出することを目的とした照明デザインである。エレガントなライン、繊細なディテール、調光可能な光源が持つ本質的な機能性が組み合わさり、あらゆる空間に適した現代的で機能的な照明となっている。
ペンダントランプ、テーブルランプ、マウントテーブルランプなど複数のバリエーションが展開され、典型的な図書館ランプの親しみやすい形態を示唆しながら、コンパクトな寸法により大きな空間に親密さをもたらす。統合されたLED光源は調光可能で、様々な設定で使用できる魅力的な特徴を持っている。
Linear System Series(2019年頃)
Linear System Seriesは、現代のワークスペース、ホスピタリティ設定、教育機関の進化するニーズに対応するよう設計された包括的なシステムである。テーブル、照明、スクリーン、トレイにわたる構成可能なデザインと、カスタム統合電源ソリューションにより、あらゆる空間の正確なニーズに合わせてデザインを調整できる。
このシリーズは、ワークプレイスの柔軟性が求められる現代において、模様替えや再構成が容易なモジュラーシステムを提供する。薄いテーブルトップと外側を走るエプロンを持つシンプルでノンセンスな構成が特徴である。
Elevated Vase(2016年頃)
Elevated Vaseは、木材とガラスの組み合わせにより、自然を家庭に持ち込むというコンセプトから生まれた作品である。「Muutoにとって花瓶は私にとって異なるプロジェクトだった。なぜなら花瓶は椅子と同じ機能を果たさないからだ。Coverチェアでの作業からインスピレーションを得て、木材とガラスを組み合わせたかった。ある意味、自然から花瓶を作り、自然を家に持ち込むようなものだ」とベンツェンは説明する。
ガラスの花瓶を保持する木製ボウルは、花をほぼ儀式的に高め、詩的な方法でそれらを額縁に入れる。素材と色は、花瓶に入れる花や枝からインスピレーションを得ている。木材は土壌の根を表し、ガラスは自然の中に立つ風通しの良い樹冠を表現している。
Shade Bin(2019年)
HAYのためにデザインされたShade Binは、ゴミ箱という日常的な対象物を、エレガントなデザインオブジェクトに昇華させた作品である。「ゴミ箱は長い間やりたかったものだったが、適切なデザインを待っていた。目立ちながらも馴染むゴミ箱を探していた」とベンツェンは語る。
デザインプロセスの中で、円形を作ることが困難だったため切り込みラインを作ったところ、それが視覚的に魅力的であるだけでなく、ゴミ箱を構造的に強くすることを発見した。さらに、光が当たったときに幾何学的な平面が微妙に変化する色のグラデーションを作り出すという効果も生まれた。「コンピュータではなく、実際に手を使ってモデルを作ることから生まれた幸運な偶然」である。
取り外し可能な蓋には取っ手が設けられており、「使い方を示すため、ここに取り外し可能な蓋があることを示すため。それは提案であり、ヒントだ」という意図が込められている。14リットルの容量を持つこのゴミ箱は、耐久性のあるポリプロピレン製で、複数の色で展開されている。
Dedicate Lamp(年代不詳)
Dedicate Lampは、一つのランプではなく、システム全体として設計された照明である。同じ要素から構成され、異なる機能と長さを持つ3つのモデルで展開される。4つの異なるベース(テーブルクランプ、ウォールマウント、テーブルピン、テーブルベース)との組み合わせオプションにより、この多用途照明シリーズは独特の自由度と柔軟性を提供する。
ダイキャストおよび押出成形された粉体塗装アルミニウムで製造され、COB LEDを中心に構築され、統合された冷却リブと表現力豊かなディテーリングを備えている。機能性とデザインの両立が追求されている。
功績と業績:現代スカンディナビアデザインへの貢献
国際的な認知と受賞歴
トーマス・ベンツェンの作品は、国際的なデザインコミュニティから高い評価を受けてきた。
- 2005年
- Aluminiumsprisen(アルミニウム賞)受賞 - デンマーク・アルミニウム業界組織より
- 2007年
- Boligmagasinet誌「Best Upcoming Designer」選出 - REMOVEデザイングループとして
- 2020年
- Dezeen Seating Design Award受賞 - TAKTのためのSoft Lounge Chairに対して
- 年代不詳
- Kyoto Global Design Award ローリエイト認定
主要ブランドとの協働
ベンツェンは、北欧を代表する複数のデザインブランドと長期的な協働関係を築いている。
- Muuto
- 最も緊密な協働関係。2011年からデザインマネージャー、2013年からデザイン責任者を務め、同ブランドの方向性を形成。Cover Chair、Around Table、Linear SeriesなどMuutoの主要コレクションを多数デザイン。
- HAY
- Shade Bin、Don't Leave Me Side Tableなど、日常的な対象物に新たな視点をもたらすデザインを提供。
- TAKT
- Soft Chairをはじめとする、持続可能性とフラットパック可能性を重視した家具をデザイン。
- Louis Poulsen
- デンマークを代表する照明ブランドとの協働。
- Royal Copenhagen / Menu
- テーブルウェアや家庭用品のデザインにも携わり、家具以外の分野でも活躍。
教育・業界貢献
自身のデザイン活動に加えて、ベンツェンはデンマークデザインコミュニティの発展にも貢献している。
- 王立デンマーク美術アカデミー デザイン学校での時折の講師活動を通じた、次世代デザイナーの育成
- デンマーク家具職人秋季展覧会(Snedkernes Efterårsudstilling)理事会メンバーとして、伝統的職人技と現代デザインの橋渡し
- REMOVEデザイングループの共同創設者として、若手デザイナーの集団的活動の促進
国際展示会・見本市への参加
ベンツェンの作品は、世界中のデザイン展示会や見本市で展示されてきた。コペンハーゲン国際家具見本市、ミラノデザインウィーク、その他北欧およびヨーロッパの主要デザインイベントへの定期的な参加を通じて、スカンディナビアデザインの現代的展開を国際的に発信し続けている。
評価と影響:現代デザインにおける位置づけ
デザイン史における位置
トーマス・ベンツェンは、20世紀中期のデンマークデザイン黄金期と21世紀の現代デザインを橋渡しする世代を代表する存在である。ハンス・J・ヴェグナー、アルネ・ヤコブセン、ヴェルナー・パントンといった巨匠たちが確立したスカンディナビアデザインの原則を継承しながら、現代の素材、技術、生活様式に適応させている。
彼のアプローチは、伝統への敬意と革新への意欲のバランスにある。「スカンディナビアデザインは常に誠実さと機能性、そして詩情についてだった。私はそれが好きだ。スカンディナビアデザイナーは、もはや家具職人の隣に立っていない時代に、彼らの遺産を持ち込むことに成功したと思う。しかし、私たちは新しい素材と新しい生産方法に挑戦され、興奮している」という彼の言葉は、この姿勢を明確に表している。
現代デザイン界への影響
ベンツェンの作品と活動は、現代デザイン界に複数の面で影響を与えている。
素材探求の再評価
成形ベニヤ材の可能性を執拗に追求する彼の姿勢は、伝統的素材に対する現代的アプローチの可能性を示した。デジタル技術が支配的になりつつあるデザイン界において、手作業によるプロトタイピングと素材との直接的な対話の重要性を再確認させている。
機能と美の統合
ベンツェンのデザインは、機能性を追求することが美的革新につながることを実証している。Shade Binの幾何学的平面が構造強度と光の効果を同時に生み出すように、実用的要求への応答が意図せぬ美的価値を創出する過程を示している。
産業デザインにおける職人性
「産業生産が正しく行われるとき、それは職人技である」という彼の主張は、工業化と職人技の対立を超えた視点を提示している。大量生産においても、素材への深い理解と細部への配慮により、高品質で長持ちする製品を創出できることを示している。
持続可能なデザインへの貢献
ベンツェンのデザイン哲学には、明示的ではないものの、持続可能性への深い配慮が貫かれている。「耐久性とは、品質、形態、機能性であり、必要性を美徳に変えるために膨大なエネルギーを注ぐこと」という彼の言葉は、一時的な流行を追うのではなく、長期的に使用される製品を創造することへの commitment を示している。
TAKTとの協働におけるSoft Chairのフラットパック設計や、Muutoとの作品における生産効率性への配慮は、環境負荷を軽減しながら高品質なデザインを実現する可能性を示している。
次世代デザイナーへの影響
教育活動と理事会活動を通じて、ベンツェンは次世代デザイナーの育成に直接的に貢献している。彼のアプローチ—伝統的職人技への敬意、現代技術の活用、手を使った試作の重視、そして素材との対話—は、若手デザイナーたちに実践的な指針を提供している。
REMOVEデザイングループの共同創設者として、集団的創造活動の価値も示している。個人の名声を追求するだけでなく、協働を通じて互いに刺激し合い成長する姿勢は、現代デザイン界における重要なモデルとなっている。
国際的評価
ベンツェンは現在、「現代スカンディナビアデザインの最も優れたデザイナーの一人」として国際的に認知されている。Coverチェア、Aroundテーブル、Linearシリーズといった彼の代表作は、世界中のデザインショールーム、ホテル、オフィス、住宅で使用され、現代デンマークデザインの顔となっている。
2020年のDezeen Seating Design Award受賞は、彼の成形ベニヤ材への探求が国際的なデザインコミュニティから最高レベルの評価を受けたことを示している。Kyoto Global Design Awardのローリエイトとしての認定も、彼の作品が文化的境界を超えて普遍的な価値を持つことを証明している。
作品一覧
| 発表年 | 区分 | 作品名 | ブランド |
|---|---|---|---|
| 2004年 | スツール | PLUS Stool | Askman Furniture |
| 2012年頃 | テーブル | Around Coffee Table | Muuto |
| 2013年 | チェア | Cover Armchair | Muuto |
| 2013年頃 | チェア | Cover Lounge Chair | Muuto |
| 2016年頃 | 花瓶 | Elevated Vase | Muuto |
| 2016年頃 | テーブル・チェア | Linear Steel Series (Side Chair, Armchair, Café Table, Dining Table, Bench, Bar Stool, Counter Stool) | Muuto |
| 2017年頃 | 照明 | Linear Pendant Lamp | Muuto |
| 2017年頃 | 照明 | Linear Table Lamp | Muuto |
| 2017年頃 | 照明 | Linear Mounted Table Lamp | Muuto |
| 2018年 | サイドボード | Enfold Sideboard | Muuto |
| 2018年頃 | チェア | Loft Chair | Muuto |
| 2018年頃 | スツール | Loft Bar Stool | Muuto |
| 2018年頃 | スツール | Loft Counter Stool | Muuto |
| 2019年 | テーブル・ベンチ | Linear Wood Series (Dining Table, Bench) | Muuto |
| 2019年 | チェア | Soft Chair | TAKT |
| 2019年頃 | ワークスペースシステム | Linear System Series (Tables, Lighting, Screens, Trays) | Muuto |
| 2019年 | ゴミ箱 | Shade Bin | HAY |
| 2019年頃 | サイドテーブル | Don't Leave Me Side Table | HAY |
| 2020年頃 | チェア | Cover Side Chair | Muuto |
| 2020年頃 | スツール | Cover Bar Stool | Muuto |
| 2020年頃 | スツール | Cover Counter Stool | Muuto |
| 2020年頃 | チェア | Soft Lounge Chair | TAKT |
| 年代不詳 | 照明 | Dedicate Lamp System | 未確認 |
| 年代不詳 | トラベルグッズ | KIN Bags and Accessories | PROJECTKIN |
Reference
- Thomas Bentzen Industrial Design - Official Website
- https://thomasbentzen.com/
- Get to know - interview with Danish designer Thomas Bentzen - Nordic Nest
- https://www.nordicnest.com/inspiration-tips/get-to-know/danish-designer-thomas-bentzen/
- Meet our designers: Thomas Bentzen - TAKT
- https://taktcph.com/thomas-bentzen/
- Thomas Bentzen - HAY Designer Profile
- https://us.hay.com/designer-thomas-bentzen
- Thomas Bentzen - Muuto Designer Profile
- https://www.muuto.com/content/designer/thomas-bentzen/
- Thomas Bentzen's Cover chair family was designed for togetherness - Design Stories
- https://www.finnishdesignshop.com/design-stories/interview/thomas-bentzen-cover-chair-family-for-muuto
- A Muuto Talk—Studio Visit with Thomas Bentzen - Muuto
- https://muuto.com/stories/a-muuto-talk-studio-visit-with-thomas-bentzen
- Thomas Bentzen designs factory-inspired sideboard for Muuto - Dezeen
- https://www.dezeen.com/2018/05/05/enfold-sideboard-thomas-bentzen-muuto/
- Veneer seat and backrest "drape" over frame of Thomas Bentzen's Soft Chair - Dezeen
- https://www.dezeen.com/2019/10/06/thomas-bentzen-plywood-veneer-soft-chair/
- Thomas Bentzen designs Linear Wood dining table and bench for Muuto - Dezeen
- https://www.dezeen.com/2019/04/08/thomas-bentzen-linear-wood-dining-table-bench-muuto/
- Thomas Bentzen's Shade Bin - HAY News
- https://www.hay.com/news/news-2019/shade-bin-by-thomas-bentzen
- Thomas Bentzen — Kyoto Global Design Award
- https://www.kgd-a.org/laureates/en/thomas-bentzen
- Dezeen Awards 2020 - Danish Architecture and Design Review
- http://danishdesignreview.com/kbhnotes/2020/12/30/dezeen-awards-2020
- PROJECTKIN and Thomas Bentzen Design Collaboration
- https://projectkin.com/thomas-bentzen/