概要

トーマス・ベンツェン(1969年生まれ)は、デンマークの家具デザイナーである。デンマーク・デザインスクールで学び、2010年に自身のスタジオを設立した。持ち運ぶ、片づける、置くといった日常の動作を出発点として、家具に把手や取っ手を組み込む構成をとる。ヘイのDLMサイドテーブル、ムートのカバー・チェアが代表にあたる。

バイオグラフィー

1969年、デンマークに生まれた。デンマーク・デザインスクール(現デンマーク王立芸術アカデミー デザイン学科)で家具とインテリアを学んでいる。

卒業後は複数のデザイン事務所に勤め、家具と什器の設計に携わった。

2010年、コペンハーゲンに自身のスタジオを設立する。同年、ヘイからDLMサイドテーブルを発表した。

以後、ムート、フリッツ・ハンセン、ヘイなどのために家具と照明を設計している。カバー・チェア、アラウンド・テーブル、リニア・シリーズなどが知られる。

デザインの思想と方法

家具は据え置かれるものとして設計されることが多いが、実際には動かされ、片づけられ、持ち上げられる。ベンツェンが出発点に置くのは、この持ち運びの動作である。どこを持てばよいかが形から分かることが、設計の条件になる。

把手を構造に組み込む

DLMサイドテーブルは、天板の中央に窪みを設ける。物を置く面としては欠けになるが、指をかけて持ち上げられる。別部材の把手を付けるのではなく、天板の成形の中で機能を成立させている。

持ち上げたときの重心を決める

把手の位置は、持ち上げたときに水平を保てる位置に置く必要がある。天板の中央に設けるのは意匠上の選択ではなく、脚部を含めた重心の位置から決まる。持つ動作を条件にすると、部材の配分も規定される。

座面と背を一続きにする

カバー・チェアでは、背もたれから肘掛けへ回り込む面を一続きの木で構成する。曲げ木の工程で成立する曲率の範囲内で、身体を囲う形をつくる。加工の限界が輪郭を決める。

色を材料の側で持つ

樹脂の成形や粉体塗装のように、材料そのものが色を持つ仕上げを選ぶ。塗り重ねないため、傷がついても下地が出ない。持ち運ぶ家具では接触が多く、この処理が有効になる。

代表作にみる方法

DLM サイドテーブル(2010年、ヘイ)

天板の中央に窪みを設けた小卓である。窪みは指をかける把手として働き、片手で持ち上げて移動できる。名称は「Don't Leave Me(置いていかないで)」の略で、持ち運ぶことを前提とした家具であることを示す。粉体塗装した鋼で作られ、色は材料の側が持つ。→DLM サイドテーブル / ドント・リーブ・ミー サイドテーブル

カバー・チェア(ムート)

背もたれから肘掛けへ回り込む面を、一続きの木で構成した椅子である。曲げ木の工程で成立する曲率に収めつつ、身体を左右から囲う形をとる。座面は別部材で、張り仕様も用意される。

アラウンド・テーブル(ムート)

丸みを帯びた縁を持つ卓である。角を落とすことで、通行時の接触や衣服の引っかかりを減らす。脚は天板の端から内側に寄せられ、端に座る人の脚が当たらない。

リニア・シリーズ(ムート)

屋外用のベンチと卓の系列である。細い部材を並べて座面と天板をつくり、間隔を空けることで水が抜ける。屋外に据え置く前提のため、把手は持たず、部材の耐候性が条件になる。

評価と影響

ベンツェンは一般に、2010年代のデンマークの家具において、日常の動作から形を決める方向を代表する設計者の一人と評価されている。持ち運びを条件に含めるという設定が、繰り返し言及される。

DLMサイドテーブルはヘイの主要な製品となり、天板に把手を設ける構成はその後の各社の小卓にも見られる。用途を据え置きに限定しないという前提が、この形式の広がりを支えている。

ムート、フリッツ・ハンセン、ヘイといったデンマークのメーカーとの関係が続いている。

受賞・収蔵

受賞

  • デンマーク芸術財団による助成

収蔵

4館のAPI(MoMA、V&A、Met、AIC)で照合したが、該当する収蔵は確認できなかった。

作品一覧

発表年 区分 作品名 ブランド
2010年 テーブル DLM サイドテーブル / ドント・リーブ・ミー サイドテーブル HAY
2010年代 椅子 カバー・チェア Muuto
2010年代 テーブル アラウンド・テーブル Muuto
2010年代 屋外家具 リニア・シリーズ Muuto
2010年代 収納 ストークト シェルフ Muuto
2020年代 家具 フリッツ・ハンセンのための家具 Fritz Hansen

プロフィール

生年 1969年
出身地 デンマーク
国籍 デンマーク
活動拠点 コペンハーゲン
分野 家具、照明
主な協働ブランド HAY、Muuto、Fritz Hansen

Reference