概要

サム・ヘクト(1969年生まれ)は、ロンドン出身のインダストリアルデザイナーである。IDEOに勤めたのち、2002年にキム・コリンとインダストリアル・ファシリティを設立した。無印良品の電話機・文具・照明、マッティアッツィのブランカ チェア、ハーマンミラーのオフィス家具ロケールなどを設計している。

バイオグラフィー

1969年、ロンドンに生まれた。セントラル・セント・マーチンズで学び、建築家デイヴィッド・チッパーフィールドのもとで実務を経験した。1993年にロイヤル・カレッジ・オブ・アートで修士号を得ている。

その後IDEOに勤め、カリフォルニアで約3年、東京で約3年を過ごした。東京では深澤直人と協働している。1999年にロンドンへ戻り、IDEOのインダストリアルデザイン部門の責任者となった。

2002年、コリンとインダストリアル・ファシリティを設立した。二人は2005年にムジ・ジャパン(無印良品)、2020年にマッティアッツィのヨーロッパ・クリエイティブ・ディレクター、2026年にハーマンミラーのグローバル・クリエイティブ・ディレクターに就いている。2008年にハーマンミラーのデザイン・アドバイザーとなり、同年RDIにも選ばれた。ロイヤル・カレッジ・オブ・アートでシニア・チューターを務め、カールスルーエ造形大学の客員教授にもなった。

デザインの思想と方法

ヘクトの考え方は、2024年のDezeenのインタビューなど本人の発言に表れている。

長く使うことを前提にする

ヘクトは、飽きたから家具をリサイクルに出すという発想は筋が通らないと述べる。リサイクルはワインの瓶には向いても家具には向かないという。耐久性のような性質は、わざわざ訴求せず当然備えているべきものと考えている。

「次の新作」を求める慣行と距離を置く

ヘクトによれば、メーカーは3、4年前の設計を見直すより新製品を出したがる。業界が常に次の新しいものを求め、プロジェクトが十分に論じられる前から記者が次は何かを尋ねることを、彼は批判している。スタジオは、Wästbergと2016年発売のダルストン ペンダント(w162)の改良も手がけた。

作者より案件を前面に置く

ヘクトは、スタジオの関心は自分たちではなく案件にあると話し、注目を集めるためだけの奇抜さは避けるという。

代表作にみる方法

電子繊維を使った通信機器の試作(2000年)

MoMAの記録は設計者としてヘクト、クリス・チャップマン、デイヴィッド・サンドバックの3名を挙げ、製造者を電子繊維「エレクテックス(ElekTex)」のエレクトロテキスタイルズ社(現エレクセン)とする。IDEOもエレクセンと組み、この繊維を使った製品案を作っている。ソフト リストフォンは電話機能を組み込んだ腕に巻く帯で、布の操作面をなでて電話帳をスクロールする。腕に巻くと柔らかく曲がり、手に持つときは広げて硬く平らになる。

無印良品の製品(2000年代〜)

ヘクトは「セカンド フォン」の設計をきっかけに、無印良品の専属デザイナーになった。AICは、無印良品が製造した製品として、セカンド テレフォン、ワイン オープナー、パスポート メモ ノートブック、タイマー ライト、「シティ・イン・ア・バッグ」「サバービア・イン・ア・バッグ」「スペース・イン・ア・バッグ」などを収蔵している。

ブランカ チェア(2010年、マッティアッツィ)

7つの木部品からなる椅子で、木の枝を着想源にしている。V&Aの解説によれば、アッシュ材をダボと一部の接着剤で接合する。最も複雑な背脚と背柱の一体部品は、機械鋸での切り出し、コンピューター制御のサンダーによる整形、8つの工具を備えた8軸のCNCロボットアームでの加工を経て作られる。デジタル加工と伝統的な手仕事を組み合わせた例として挙げられ、2011年にデザイン・ミュージアムのファニチャー・デザイン・オブ・ザ・イヤーとヘルシンキのハビターレ賞を受けた。

受賞・収蔵

受賞

  • 2008年 ロイヤル・デザイナー・フォー・インダストリー(英国王立芸術協会)
  • 2011年 ファニチャー・デザイン・オブ・ザ・イヤー(デザイン・ミュージアム、ブランカ チェア)

収蔵

以下の収蔵が確認できる(MoMA=ニューヨーク近代美術館、V&A=ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館、AIC=シカゴ美術館)。MoMAの5点はヘクト個人名義(共同設計者はチャップマンとサンドバック)、AICの収蔵はインダストリアル・ファシリティ名義でコリンのページと共通する。Metでは該当する収蔵は確認できなかった。

  • MoMA 会議用電話機の試作(2000年) 収蔵番号 1412.2001
  • MoMA キーボード(2000年) 収蔵番号 1413.2001
  • MoMA ソフトフォン(2000年) 収蔵番号 1414.2001
  • MoMA ソフトリモート(2000年) 収蔵番号 1415.2001
  • MoMA ソフト リストフォン(2000年) 収蔵番号 1416.2001
  • V&A ブランカ チェア(2010年) 収蔵番号 W.18-2011
  • AIC フラットウェア(2006年) 収蔵番号 2011.771
  • AIC セカンド テレフォン(2002-06年) 収蔵番号 2011.772
  • AIC シティ・イン・ア・バッグ(2005年) 収蔵番号 2011.773
  • AIC サバービア・イン・ア・バッグ(2005年) 収蔵番号 2011.774
  • AIC スペース・イン・ア・バッグ(2005年) 収蔵番号 2011.775
  • AIC ペンタゴン 万年筆(2011年) 収蔵番号 2011.777
  • AIC チャントリー モダン ナイフシャープナー(2005年) 収蔵番号 2011.778
  • AIC パスポート メモ ノートブック(2006年) 収蔵番号 2011.780
  • AIC ワイン オープナー(2007年) 収蔵番号 2011.781
  • AIC タイマー ライト(2011年) 収蔵番号 2011.783
  • AIC テーブル、ベンチ、チェア(2009年) 収蔵番号 2011.701
  • AIC アナーム バイブレーション ウォッチ(2010-11年) 収蔵番号 2012.19
  • AIC ジェットラグ クロック(2008-11年) 収蔵番号 2012.22
  • AIC ベル クロック(2009-11年) 収蔵番号 2012.25

作品一覧

2002年以降の作品はいずれもキム・コリンとの共同設計による。年は美術館の記録および製造元・メディアの発表による。

発表年 区分 作品名 ブランド
2000年 通信機器 ソフトフォン、ソフト リストフォンほか Electrotextiles
2002-06年 電話機 セカンド テレフォン 無印良品
2005年 日用品 シティ/サバービア/スペース・イン・ア・バッグ 無印良品
2006年 文具 パスポート メモ ノートブック 無印良品
2007年 台所用品 ワイン オープナー 無印良品
2008-11年 時計 ジェットラグ クロック IDEA
2009年 家具 テーブル、ベンチ、チェア Established & Sons
2010年 椅子 ブランカ チェア Mattiazzi
2011年 照明 タイマー ライト 無印良品
2013年 オフィス家具 ロケール Herman Miller
2021年 椅子 スリング ラウンジチェア Takt

プロフィール

生年 1969年
出身地 イギリス・ロンドン
国籍 イギリス
活動拠点 ロンドン
分野 電子機器、家具、日用品
主な協働ブランド 無印良品、Herman Miller、Mattiazzi、Takt、Emeco

Reference

Industrial Facility(公式)About
https://www.industrialfacility.co.uk/about-us
Sam Hecht | Royal Designers for Industry
https://royaldesignersforindustry.org/rdi/66/sam-hecht
サム・ヘクト | KYOTO Design Lab
https://www.d-lab.kit.ac.jp/?p=9523
Sam Hecht and Kim Colin | Design Within Reach
https://www.dwr.com/designer-sam-hecht-and-kim-colin?lang=en_US
Sam Hecht and Kim Colin | Herman Miller
https://www.hermanmiller.com/es_lac/designers/hecht-and-colin/
Kim Colin and Sam Hecht of Industrial Facility | Dezeen(2024年)
https://www.dezeen.com/2024/09/04/industrial-facility-kim-colin-sam-hecht-interview/amp/
Softphone | The Museum of Modern Art
https://www.moma.org/collection/works/82159
Sam Hecht | The Museum of Modern Art
https://www.moma.org/artists/22582
Soft concepts | we make money not art
https://we-make-money-not-art.com/soft_concepts/
Branca Chair | Victoria and Albert Museum
https://collections.vam.ac.uk/item/O1224758/
Sam Hecht | Wikipedia
https://en.wikipedia.org/wiki/Sam_Hecht
Industrial Facility | Phaidon
https://www.phaidon.com/products/industrial-facility
Art Institute of Chicago | Industrial Facility(Second Telephone)
https://www.artic.edu/artworks/213192