バイオグラフィー
リッカルド・ブルメールは1959年、イタリア・ロンバルディア州ベルガモに生まれた。幼少期をベルガモ近郊のネンブロで過ごし、芸術と建築に囲まれた環境で育つ。モロゾロ(ヴァレーゼ)のスコラ・リチェオ・ウニフィカートで古典的・芸術的教育を受け、演劇、創作活動、文学など数多くの文化的イニシアティブに参加。後に同校の校長を務めることとなる。
1982年、ミラノ工科大学建築学部を卒業。卒業後の1983年から1988年まで、スイス・ティチーノ派建築の巨匠マリオ・ボッタの建築事務所(ルガーノ)に勤務し、プロジェクト、展覧会、出版物の責任者として研鑽を積む。この時期、ボッタの厳格な建築哲学と構造的思考を学び、後の自身のデザイン哲学の基礎を形成した。
1988年、ヴァレーゼ州カシャゴに独立事務所を開設。建築家およびデザイナーとして、住宅、商業施設、産業建築を手掛ける傍ら、Alias、Artemide、Desalto、Poliform、Ycami、B&B、Flouなど、イタリアを代表する家具・照明メーカーと協働を開始。特にAliasとの長期的なパートナーシップは、彼のキャリアにおいて最も実り多い関係となった。
公共空間のインテリアデザイナーとしても、ミラノのテアトロ・アラ・スカラの内装設計に参画するなど、重要なプロジェクトを手がけた。また、ミラノ・トリエンナーレ、ジェノヴァのパラッツォ・ドゥカーレ、フランスのムゼ・デュ・プレジデント・ジャック・シラクなど、国内外の主要美術館での展覧会インスタレーションも数多く制作している。
2003年以降、教育者としての活動も本格化。スイス・イタリア語圏大学メンドリシオ建築アカデミーで教授に就任し、2017年からは同アカデミーのディレクターを務める。サンマリノ大学、ミラノのNABA、ヴィチェンツァのISAIDでも教鞭を執り、創造的デザイン方法論と物理的実験を通じた認知訓練に焦点を当てた研究、講義、ワークショップを展開している。
2005年、マッテオ・ボルギ、アドリアン・フレイレ・ガルシアと共に「Blumerandfriends」グループを設立。物理学と美学の実験を通じて、建築的発想プロセスを示す実験とインスタレーションを制作。これらの実験は「Esercizi Fisici di Architettura e Design(建築とデザインの物理的演習)」と呼ばれる公開カンファレンスで実演され、イタリア国内外の様々な美術館で恒久的・一時的なインスタレーションとして展示されている。2018年にはヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展に「Seven Automatic Architectures(7つの自動建築)」を出展し、アルゴリズムが生成する動的建築の新しい形態を探求した。
現在もヴァレーゼを拠点に、建築家、デザイナー、教育者、研究者として多面的な活動を続けている。彼の作品は、建築とデザインの境界を越え、構造的抵抗、光と透明性の関係、そして非本質的要素の最小化という一貫したテーマを探求し続けている。
デザインの思想とアプローチ
軽さと本質性の哲学
ブルメールのデザイン哲学の中核を成すのは、「軽さ(leggerezza)」の追求である。しかし、彼にとっての軽さとは単なる物理的な重量の軽減ではない。ブルメール自身の言葉によれば、「私にとって軽さとは、本質性の探求の結果であり、形態と静力学の関係から生まれるものである」という。この思想は、構造的に必要な要素のみを残し、非本質的な部分を徹底的に排除することで、真の軽さと美しさが実現されるという信念に基づいている。
彼のデザイン・アプローチは、まず構造に加わる力を分析し、それに対して必要最小限の形態を見出すという工学的プロセスから始まる。このプロセスにおいて、装飾や付加的要素は排除され、純粋に構造的必然性から導かれた形態のみが残される。結果として生まれる作品は、視覚的な軽さと構造的な強度を兼ね備えた、緊張感のある美しさを持つ。
自然における効率性と美の統一
ブルメールのデザイン哲学のもう一つの重要な柱は、自然における効率性と美しさの不可分な関係への洞察である。彼は述べる:「美のテーマは私にとって、自然という大きな問いに非常に密接に関連している。自然においては、効率性の側面と美の側面を分離することはできない。花から何かを取り去れば、その機能を損なうことになる。なぜなら、すべてが『何かのために役立っている』からだ。しかし、その『役立っている』ことが、実際には私たちにとって美を表現する対象を生み出しているのである」
この思想は、機能主義とは異なる次元での美学を提示している。機能主義が「形態は機能に従う」と主張するのに対し、ブルメールは「構造的必然性そのものが美を生む」と考える。自然界において、植物の茎の太さ、葉の形状、花びらの配置などは、すべて構造的・生物学的必然性から生まれているが、同時にそれらは人間の目には美しいものとして映る。この自然の原理を人工物のデザインに適用することが、ブルメールの創造活動の本質である。
新素材と革新的製造技術
ブルメールは、伝統的な素材と最先端の技術を融合させることで、これまで不可能だった軽量構造を実現してきた。代表作「Laleggera チェア」では、無垢材の木材フレームに発泡ポリウレタンを注入するという革新的な構造を採用。外殻は薄い合板または単板積層材で、内部の空洞には発泡ポリウレタンが充填されている。この技術は、グライダーの翼の製造技法から着想を得たもので、視覚的な軽さと構造的な強度を両立させた。
また、「Entronauta チェア」(Desalto、2006年、マッテオ・ボルギとの共同デザイン)では、さらに実験的なアプローチを採用。布製の袋を椅子の形状に縫製し、その中にポリウレタンを注入後、特殊な機械で回転させることで遠心力を利用して素材を均等に分散。硬化後、布製の袋そのものが構造体となる。見た目は柔らかそうだが触ると硬く、見た目は充填されているように見えるが実は空洞で軽い。この「感覚の魔法的な欺瞞」は、ブルメールの実験精神を象徴している。
建築的思考とデザインの統合
建築家としての訓練を受けたブルメールは、家具デザインにおいても建築的スケールと構造的思考を持ち込む。彼にとって椅子は単なる座る道具ではなく、空間を構成する建築的要素である。「Ghisa ベンチ」では、鋳鉄の積層板を用いてモジュール式のシーティングシステムを構築し、個々のベンチを連結することで、空間に曲線的な「座のランドスケープ」を創出できる。
彼のアトリエBlumerandfriendsでは、学生たちと共に「自動建築」と呼ばれる実験的インスタレーションを制作している。これらは、水と石鹸で作られる極小曲面、重力と張力のみで自立する構造体など、物理法則の極限条件を探求する作品群である。2018年のヴェネツィア・ビエンナーレで発表された「Wall」では、機械が継続的に水と石鹸の極小表面を生成し、光の反射によってのみ可視化される、ほぼ実体のない壁を創造した。これらの実験は、建築の本質——空間を定義し、光を操作し、構造的秩序を創出すること——を根源的に問い直す試みである。
作品の特徴
視覚的軽さと構造的強度の両立
ブルメールの作品に共通する最も顕著な特徴は、極端な視覚的軽さと高い構造的強度の両立である。Laleggera チェアは、その名(イタリア語で「軽い女性」を意味する)が示す通り、視覚的に非常に繊細で華奢に見えるが、実際には6脚まで積み重ね可能な強度を持つ。この矛盾した特性は、精密な構造計算と革新的な製造技術によって実現されている。
脚部の断面形状、背もたれと座面の接合部、材料の厚みなど、すべての要素が構造解析に基づいて最適化されている。結果として、椅子全体の重量は約1.6kgという驚異的な軽さでありながら、成人の体重を安全に支えることができる。この「見た目以上に軽く、見た目以上に強い」という特性は、ブルメールの設計哲学を体現している。
純粋な幾何学的形態
装飾を排した純粋な幾何学的形態もブルメール作品の特徴である。彼の椅子やテーブルには、不必要な装飾的要素が一切存在しない。曲線や角度は、すべて構造的必然性または人間工学的要求から導かれている。この純粋主義的アプローチは、20世紀初頭のモダニズム建築の精神を継承しつつ、21世紀の技術によって新たな次元へと進化させたものである。
しかし、この幾何学的純粋性は冷たさや非人間性を意味しない。むしろ、形態の純粋さは、素材の自然な美しさ——木目の表情、金属の光沢、布地の質感——を最大限に引き立てる。装飾の不在は、素材そのものの存在感を際立たせる。
素材の誠実な表現
ブルメールは素材を偽らず、その本質を誠実に表現することを重視する。木材は木材として、金属は金属として、その物質的特性を率直に示す。しかし同時に、現代技術を用いて素材の可能性を限界まで引き出す。発泡ポリウレタンの注入によって木材の強度を高めるという技法は、伝統的な木工技術と現代の化学技術を融合させた好例である。
この「素材への忠実性」は、モダニズムのモットー「fidelity to materials(素材への忠実)」の再解釈である。ブルメールは、製造技法を隠すのでも誇示するのでもなく、ユーザーが意識的に気づくことなく、古いもの(無垢材)と新しいもの(発泡ポリウレタン)を組み合わせて快適さを示唆する。
モジュール性と拡張性
多くのブルメール作品はモジュール性と拡張性を内包している。Ilvolo テーブルシリーズは、伸長機能を持ち、必要に応じて天板のサイズを変更できる。Ghisa ベンチは、個々のシートモジュールを連結して、直線的または曲線的な配置を自由に構成できる。このモジュール性は、現代の柔軟な生活様式や、可変的な空間利用のニーズに対応している。
同時に、モジュール性は持続可能性とも関連している。部分的な破損や摩耗があった場合、全体を廃棄するのではなく、該当するモジュールのみを交換できる。この設計思想は、製品の寿命を延ばし、資源の無駄を減らすことに貢献する。
主要代表作とその特徴
Laleggera チェア(1996年、Alias)
ブルメールの最も象徴的な作品であり、現代イタリアンデザインの代表的アイコンの一つ。1996年にAliasのためにデザインされ、1998年にイタリア産業デザイン協会(ADI)の最高栄誉であるコンパッソ・ドーロを受賞。2009年にはニューヨーク近代美術館(MoMA)の永久コレクションに加わり、パリのポンピドゥー・センター、ミラノ・トリエンナーレにも展示されている。
この椅子の革新性は、グライダーの翼構造から着想を得た製造技法にある。メープル材またはアッシュ材の無垢材フレームに薄い合板または単板積層材の外殻を接着し、内部の空洞に発泡ポリウレタンを注入。硬化したポリウレタンフォームが内部から構造を補強し、外観上は極めて繊細に見えながら、高い耐久性とスタッキング性(6脚まで積み重ね可能、専用トローリー使用時は20脚まで)を実現している。
椅子全体の重量は約1.6kgと驚異的に軽く、片手で容易に持ち運べる。背もたれの独特な角度と座面の繊細な曲線は、長時間の着座でも快適性を保つよう設計されている。仕上げは透明ラッカーまたは各種着色ラッカー、レザー張りなど多様なバリエーションが用意され、住宅、オフィス、レストラン、公共施設など幅広い用途に対応している。
2013年、イタリアの出版社アシェットが発行した「デザインの主役たち」シリーズでブルメール特集号が刊行され、Laleggera チェアがその中心的作品として紹介された。発表から30年近くが経過した現在も、Aliasのベストセラー製品であり続け、タイムレスなデザインの好例となっている。
Ilvolo テーブルコレクション(2000年、Alias)
Laleggera チェアと同じ構造原理と美学を共有する伸長式テーブルのコレクション。「Ilvolo」はイタリア語で「飛行」を意味し、グライダーのような軽やかさと優雅さを表現している。テーブル天板と脚部の構造は、Laleggera チェアと同様に、無垢材フレームに合板外殻、内部に発泡ポリウレタンフォームを注入する技法を採用している。
コレクションには様々なサイズが用意されており、小型のコーヒーテーブルから大型のダイニングテーブルまで、用途に応じて選択できる。伸長機構は滑らかで操作が容易であり、日常的な使用に十分な実用性を備えている。天板の厚さは5cmと視覚的にはボリュームがあるが、実際には内部が空洞のため重量は軽く、移動や配置換えが容易である。
仕上げはメープル、アッシュ、オーク材の透明ラッカーまたは着色仕上げが選択可能。Laleggera チェアと組み合わせることで、統一感のあるダイニングセットを構成できる。このコレクションは、ブルメールの設計哲学——軽さ、構造的効率性、美的純粋性——がテーブルという家具類型にも適用可能であることを実証した。
Entronauta チェア(2006年、Desalto、マッテオ・ボルギとの共同デザイン)
最も実験的で革新的な製造プロセスを採用した前衛的な椅子。2010年にニューヨーク近代美術館(MoMA)の永久コレクションに加わった。「Entronauta」は「内部の宇宙飛行士」を意味する造語で、素材が閉じた宇宙の内部を旅し、壁にぶつかって止まる——映画「トゥルーマン・ショー」の主人公のように——というプロセスを表現している。
製造プロセスは極めてユニークである。まず、椅子の形状を模した布製の袋を縫製する。この袋の内部にポリウレタンを注入し、注入口を閉じた後、特別に設計された機械で回転させる。遠心力によって素材が袋の内壁に均等に分散し、硬化後、布地自体がポリウレタンで固められて構造体となる。このプロセスはDesaltoが特許を取得している。
完成した椅子は、見た目には柔らかそうだが触ると岩のように硬く、充実しているように見えるが実は空洞で軽い。この「感覚の魔法的な欺瞞」が、この作品の魅力である。張り地は様々なファブリックが選択可能で、色彩と質感のバリエーションが豊富。コンパクトで軽量でありながら、高い座り心地を提供する。
Entronauta チェアは、ブルメールが素材の可能性を限界まで探求し、全く新しい製造プロセスを発明することを厭わない革新者であることを示している。この椅子は、工業デザインにおける「プロセス・イノベーション」の重要性を提示した作品として、デザイン史的にも重要である。
Ghisa ベンチ(2008年、Alias、マッテオ・ボルギとの共同デザイン)
鋳鉄製の積層板を用いたモジュール式シーティングシステム。「Ghisa」はイタリア語で「鋳鉄」を意味する。このベンチは、ブルメールが通常追求する「軽さ」とは対照的に、素材の重量感と堅牢性を表現した作品である。
各シートモジュールは、薄い鋳鉄板を積層した構造で、ラッカー仕上げが施されている。個々のモジュールは独立して使用できるが、複数を連結することで、直線的または曲線的な長いベンチを構成できる。公共空間、庭園、テラスなどでの使用を想定した屋外対応仕様も用意されている。
座面の形状は微妙に湾曲しており、身体を優しく受け止める。鋳鉄という重厚な素材を用いながらも、薄い板の積層によって視覚的な軽やかさを実現している点に、ブルメールの設計思想が反映されている。色彩は、ブラック、ホワイト、グレーなどのニュートラルカラーから、鮮やかなレッドやブルーまで、多様な選択肢が用意されている。
Dinamica スツール(2010年、Alias、マッテオ・ボルギとの共同デザイン)
人間工学的に設計されたロッキング・ベースを持つスツール。「Dinamica」は「動的」を意味し、その名の通り、座る人の動きに応答する可動性を持つ。現代のオフィスワーカーの健康問題——長時間の静的な着座による腰痛や姿勢の悪化——に対する解決策として開発された。
ロッキング・ベースは、座る人が重心を前後左右に移動させることを可能にし、筋肉の緊張を緩和し、血液循環を促進する。しかし、動きは制御されており、椅子が転倒するリスクはない。座面の高さは調整可能で、様々な体格とテーブル高さに対応できる。
デザインは極めてミニマルで、構造的に必要な要素のみで構成されている。座面は成形されたフォームで、布地またはレザーの張り地が選択可能。ベースは金属製で、耐久性が高い。このスツールは、ブルメールが「構造的必然性から美が生まれる」という自身の哲学を、人間工学的機能性の領域でも実践していることを示している。
BB チェア(2009年頃、Poliform、マッテオ・ボルギとの共同デザイン)
軽量な発泡ポリウレタンフレームにレザーの「外骨格」を被せた独創的な構造を持つダイニングチェア。この椅子の製造プロセスは逆転的である——通常、椅子は硬い構造体を作り、その上にクッションと張り地を施すが、BBチェアでは、まず柔軟なレザーで椅子の形状を縫製し、その内部に発泡ポリウレタンを注入して硬化させることで構造体を形成する。
結果として、レザーの縫い目が椅子のデザインラインとなり、構造と表面が一体化した独特の美学が生まれる。座り心地は柔らかく包み込むようでありながら、十分なサポートも提供する。重量は非常に軽く、移動が容易である。
カラーバリエーションは、ホワイト、ブラック、ブラウン、ベージュなど、レザーの自然な色調が中心。PoliformのBBコレクションには、ダイニングチェアに加えてアームチェアバージョンも用意されている。この作品は、ブルメールがEntronauta チェアで開発した製造技法を、より洗練された形でダイニングチェアに応用したものと言える。
功績・業績
主要な賞と栄誉
- 1997年:Design Preis Schweiz(スイスデザイン賞) — Laleggera チェアに対して授与。スイスにおける最も権威あるデザイン賞の一つ。
- 1998年:Compasso d'Oro ADI(コンパッソ・ドーロ) — Laleggera チェアに対して授与。イタリア産業デザイン協会が1954年から授与している世界最古のデザイン賞であり、国際的に最も権威あるデザイン賞の一つ。
- 1999年:CATAS賞 — 家具の品質と技術革新に対する賞。
- 2000年:Observeur du Design(デザイン観察者賞) — フランスのデザイン振興機関による賞。
美術館永久コレクション
ブルメールの作品は、世界の主要な美術館・デザインミュージアムの永久コレクションに収蔵されている。
- ニューヨーク近代美術館(MoMA) — Laleggera チェア(2009年収蔵)、Entronauta チェア(2010年収蔵)
- ポンピドゥー・センター、パリ — Laleggera チェア
- ミラノ・トリエンナーレ — Laleggera チェアおよびその他の作品
- パリ装飾芸術美術館(Musée des Arts Décoratifs) — Laleggera チェア
- トレント現代美術センター、カヴァレーゼ — 複数の作品
これらの収蔵は、ブルメールの作品が単なる商業的成功を超えて、20世紀末から21世紀初頭のデザイン史において重要な位置を占めることを示している。
主要な展覧会とインスタレーション
- 1996年:「Esperienze di architettura e design」(建築とデザインの経験) — パリのMoebel et Functionで開催された個展。同名の書籍も出版。
- 1999年:「Intersezioni」(交差) — ガブリエーレ・カッペッラート編集による書籍と展覧会。インテリアプロジェクトの実現作品を紹介。
- 2000-2002年:「Compasso d'oro ADI Award」巡回展 — Laleggera チェアが世界各地で展示。
- 2005年:「日本。変化の芸術」 — ジェノヴァのパラッツォ・ドゥカーレ。インスタレーション担当。
- 2006年:「日本。ジェフリー・モンゴメリー・コレクション」 — フランス、サランのムゼ・デュ・プレジデント・ジャック・シラク。インスタレーション担当。
- 2017年:「Sette Architetture Automatiche e altri esercizi」(7つの自動建築とその他の演習) — メンドリシオ建築劇場での展覧会。マリオ・ボッタ設計の劇場の開館記念として開催。
- 2018年:第16回ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展 — 「Seven Automatic Architectures」出展。アルセナーレ会場の「The Practice of Teaching」セクション。水と石鹸で構成される動的な壁のインスタレーション「Wall」を展示。
主要プロジェクト
- テアトロ・アラ・スカラ、ミラノ — 世界最高峰のオペラハウスの内装設計に参画。2002-2004年の大規模改修プロジェクトの一環。
- 住宅建築 — イタリアおよびスイスで多数の住宅を設計。特にCasa Isella(イゼッラ邸)は、建築家ダンテ・イゼッラのための住宅として知られ、2005年に書籍化。
- 商業・産業建築 — チニゼッロ・バルサモのオフィスタワー2棟など、中小規模の商業・産業建築を多数手がける。
- トスカーナのワイナリー — 建築家トマジーナとの共同プロジェクトとして進行中(検索時点)。
教育活動と出版
2003年以降、ブルメールは教育者としても重要な貢献をしている。
- メンドリシオ建築アカデミー(スイス・イタリア語圏大学) — 2003年から教授、2017年からディレクター
- サンマリノ共和国大学(IUAV-RSM) — 2006年から教授
- ミラノ新美術アカデミー(NABA) — 教授
- ヴィチェンツァ室内建築高等研究所(ISAID) — 教授
主要著作・出版
- 「Il Parco Giochi Sospeso」(吊り下げられた遊び場)Edizioni di Maieutica, Milano, 1994
- 「Riccardo Blumer. Esperienze di architettura e design」(リッカルド・ブルメール。建築とデザインの経験)Skira Editore, Milano, 1996
- 「Riccardo Blumer. Intersezioni」(リッカルド・ブルメール。交差)編集: G. Cappellato. Skira Editore, Milano, 1999
- 「Riccardo Blumer. Ultime realizzazioni: sperimentazione e professione」(リッカルド・ブルメール。最新の実現:実験と専門職)Edizioni Città di Seriate, 2000
- 「Voglio batterti, Robin Day. Indagine sul processo evolutivo delle sedie di Riccardo Blumer」(君を打ち負かしたい、ロビン・デイ。リッカルド・ブルメールの椅子の進化プロセスの研究)
- 「Casa Isella. Dante Isella, La casa della Memoria」(イゼッラ邸。ダンテ・イゼッラ、記憶の家)Editrice Compositori, Bologna, 2005
- 「Dentro la Scala」(スカラの内部)Skira Editore, Milano, 2006
- 「La pelle come limite」(限界としての皮膚)Corraini Edizioni, Milano, 2008
- 「I protagonisti del design. Riccardo Blumer」(デザインの主役たち。リッカルド・ブルメール)Hachette Fascicoli, Milano, 2013
- 「Connotazioni tra corpi (nudi)」(身体(裸体)間の意味合い)Artphilein Edition, Lugano, 2021
評価・後世に与えた影響
同時代の評価
ブルメールは、1990年代後半から2000年代初頭にかけて、イタリアンデザインにおける「軽さの詩学」の主要な体現者として認識されるようになった。1998年のコンパッソ・ドーロ受賞により、彼はヴィコ・マジストレッティ、エンツォ・マーリ、アキッレ・カスティリオーニといった巨匠たちの系譜に連なるデザイナーとして位置づけられた。
評論家たちは、ブルメールの作品を「脱物質化された美学」「構造的ミニマリズム」「工学的詩学」といった言葉で表現した。特に、グライダーの翼構造という航空工学の原理を家具デザインに応用したことは、デザイン界において革新的なアプローチとして高く評価された。Laleggera チェアは、1990年代のデザイン美学——軽さ、透明性、非物質性への志向——を象徴する作品の一つとなった。
建築家兼デザイナーとしての独自性
ブルメールのキャリアで特筆すべきは、建築家とデザイナーの二つの専門領域を高いレベルで統合している点である。20世紀後半以降、多くの建築家が家具デザインも手がけているが、ブルメールの場合、両者は単なる副業的関係ではなく、相互に影響を与え合う有機的な関係にある。
彼の建築プロジェクトには家具的スケール感と細部へのこだわりが表れ、逆に家具作品には建築的な構造的思考と空間的視点が反映されている。テアトロ・アラ・スカラのような歴史的建造物の内装設計と、Laleggera チェアのような革新的家具デザインを同時並行で手がける能力は、稀有なものである。
素材技術革新への貢献
ブルメールは、発泡ポリウレタンという素材の可能性を家具デザインにおいて大きく拡張したデザイナーの一人である。発泡ポリウレタン自体は1940年代から存在していたが、主にクッション材として使用されていた。ブルメールは、これを構造材として活用する方法を開発し、木材と組み合わせることで、従来不可能だった軽量かつ高強度の家具を実現した。
Entronauta チェアで開発した「布袋に素材を注入して遠心力で成形する」という製造プロセスは、Desaltoが特許を取得したほどの技術革新であった。この技法は、後に他のデザイナーや企業にも影響を与え、ソフトシェル構造の家具という新しいカテゴリーを生み出した。
教育者としての影響
2003年以降の教育活動、特にメンドリシオ建築アカデミーでの実験的な教育方法は、次世代の建築家・デザイナーに大きな影響を与えている。彼の「Esercizi Fisici di Architettura e Design(建築とデザインの物理的演習)」は、理論と実践、科学と芸術を統合する独創的な教育プログラムである。
学生たちは、重力、張力、遠心力、表面張力といった物理的現象を直接実験し、そこから建築的・デザイン的着想を得る。鳥かごの連続、水と石鹸の極小曲面、重力のみで自立する構造体など、これらの実験は、建築とデザインの根源的な原理——空間の定義、構造の創出、素材の操作——を探求するものである。2018年のヴェネツィア・ビエンナーレでの展示は、この教育方法の成果を国際的に示した。
ブルメールの教育哲学は、「学校は文化を教える場であり、職業訓練所ではない」という信念に基づいている。彼は、技術的スキルと同時に、倫理的価値観と思考の規律を重視する。この教育アプローチは、マリオ・ボッタやペーター・ツムトアといったティチーノ建築学派の伝統を継承しつつ、21世紀の技術と感性で更新したものである。
持続可能性への先駆的視点
ブルメールのデザイン哲学——構造的本質性の追求、非本質的要素の排除——は、結果として持続可能性にも貢献している。必要最小限の素材で最大の機能と美を実現することは、資源の効率的利用を意味する。Laleggera チェアの重量1.6kgは、同等の機能を持つ伝統的な木製椅子の半分以下であり、輸送時のエネルギー消費も削減される。
また、彼の作品の多くが発表から20年以上経過した現在も継続的に生産され、使用され続けていることは、「タイムレスなデザイン」としての持続可能性を示している。流行に左右されず長期間使用できる製品は、頻繁な買い替えを必要とせず、結果として環境負荷を低減する。
現代デザインへの継続的影響
2020年代に入っても、ブルメールの作品と思想は現代のデザイナーに影響を与え続けている。特に、軽量化と構造最適化という課題は、デジタルファブリケーション技術(3Dプリンティング、CNCミリング、トポロジー最適化)の発展により、新たな関心を集めている。
現代のデザイナーたちは、コンピュテーショナルデザインツールを用いて、ブルメールが手作業と直感で探求した「構造的必然性から生まれる形態」を、より精密に、より大規模に実現しようとしている。その意味で、ブルメールの作品は、アナログ時代の構造最適化の到達点であると同時に、デジタル時代のデザインへの橋渡しとなっている。
Aliasはブルメールの作品を「イタリアデザインのアンバサダー」として位置づけ、2023年の「Italia Geniale」展では、Laleggera チェアを中心的な展示作品の一つとして世界各地で展示している。これは、ブルメールの作品が単なる過去の名作ではなく、現代においても新鮮で革新的であり続けていることを示している。
作品一覧
| 年月 | 区分 | 作品名 | ブランド |
|---|---|---|---|
| 1985年 | 照明 | Helios ウォールライト | Lumina / Artemide |
| 1996年 | 椅子 | Laleggera チェア(Model 301) | Alias |
| 1996年 | 椅子 | Laleggera チェア レザー(Model 301_L) | Alias |
| 1996年 | 椅子 | Laleggera アームチェア(Model 304) | Alias |
| 1996年 | スツール | Laleggera スツール(Model 310) | Alias |
| 1996年 | スツール | Laleggera リトルスツール(Model 315) | Alias |
| 1996年 | 椅子 | Laleggera チェア+(Model 316) | Alias |
| 1996年 | ベンチ | Laleggera ベンチ(Model 307) | Alias |
| 2000年 | テーブル | Ilvolo テーブル(Model 390) | Alias |
| 2000年 | テーブル | Ilvolo 伸長式テーブル(Model 396) | Alias |
| 2006年 | 椅子 | Entronauta チェア(XX コレクション) | Desalto |
| 2008年 | ベンチ | Ghisa ベンチ(Model G01) | Alias |
| 2009年頃 | 椅子 | BB チェア | Poliform |
| 2009年頃 | 椅子 | BB アームチェア | Poliform |
| 2010年 | スツール | Dinamica スツール | Alias |
| 年代不詳 | 椅子 | Origami チェア | Ycami |
| 年代不詳 | 椅子 | Arco チェア | Byografia |
| 年代不詳 | 照明 | Cricket ランプ | Artemide |
| 年代不詳 | 照明 | Mandraky ランプ | Artemide |
| 年代不詳 | ベッド | Rem ベッド | Flou |
| 年代不詳 | 家具 | Cuoio teso | B&B |
| 年代不詳 | 椅子 | Ditadidama 彫刻的椅子 | Fornasarig |
| 年代不詳 | 椅子 | Limited Edition チェア | Alias |
注記:上記リストは確認できた主要作品であり、完全なカタログではありません。ブルメールは1988年以降、多数の住宅建築、商業建築、インテリアプロジェクト、展覧会インスタレーションを手がけていますが、それらの詳細な年表は公開情報から完全に復元することは困難です。また、Blumerandfriendsグループとして制作された実験的インスタレーション作品(「Seven Automatic Architectures」シリーズなど)も含まれていません。
Reference
- Riccardo Blumer - Wikipedia (イタリア語)
- https://it.wikipedia.org/wiki/Riccardo_Blumer
- Architetto Riccardo Blumer - Alias Design
- https://alias.design/it/designers/riccardo-blumer
- Riccardo Blumer, Designer - Archiproducts
- https://www.archiproducts.com/en/designers/riccardo-blumer
- Riccardo Blumer - STYLEPARK
- https://www.stylepark.com/en/designer/riccardo-blumer
- Collezione LALEGGERA - Alias Design
- https://alias.design/it/collezioni-indoor/laleggera
- LALEGGERA CHAIR - 301 - Archiproducts
- https://www.archiproducts.com/en/products/alias/stackable-wooden-chair-laleggera-chair-301_223240
- Riccardo Blumer, Matteo Borghi. Entronauta Chair. 2006 - MoMA
- https://www.moma.org/collection/works/129213
- Riccardo Blumer - Polittico Research Lab
- https://polittico.unipi.it/riccardo-blumer
- Interview with Riccardo Blumer – Venice Architecture Biennale 2018 - Domus
- https://www.domusweb.it/en/speciali/biennale/2018/riccardo-blumer-seven-automatic-architectures-and-other-exercises.html
- Riccardo Blumer Installations at Venice Biennale - e-architect
- https://www.e-architect.com/venice/riccardo-blumer-installation-venice-biennale
- Biennale Architettura 2018 - La Biennale di Venezia
- https://www.labiennale.org/en/architecture/2018/partecipants/riccardo-blumer
- Italia Geniale - Alias Design
- https://alias.design/en/magazine/italia-geniale
- Riccardo Blumer – Dimore Design 2017
- https://archivio.dimoredesign.it/en/designer/riccardo-blumer/