概要

マイロ・ボーマン(1923-2003)は、アメリカの家具デザイナーである。1953年からノースカロライナ州のセイヤー・コギン社と組み、没するまで50年にわたって同社の製品を設計した。細い鋼のフレームに厚みのある座面を載せる構成を基本とし、高価な少量生産ではなく、店舗を通じて広く流通する価格帯で成立させることを条件に置いた。1969年にはブリガムヤング大学に環境デザイン学科を設けている。

バイオグラフィー

1923年10月7日、カンザス州グッドランドに生まれ、幼少期にカリフォルニア州ロングビーチへ移った。1941年に高校を卒業したのち、第二次世界大戦中は陸軍航空隊に4年間従軍し、士官クラブの内装を担当している。

戦後、ロサンゼルスのアートセンター・スクールなどで学び、西海岸で最初のモダン家具専門店であるフランク・ブラザーズに勤めた。1947年、24歳で自身の設計事務所を設立し、グレン・オブ・カリフォルニア、パシフィック・アイアン、ドレクセルなどの製品を手がけている。

1953年、家具製造の集積地であるノースカロライナ州ハイポイントを訪れ、セイヤー・コギンと組むことになった。以後50年にわたり同社の設計を担当している。ディレクショナルなど他社の仕事も並行して行った。

1969年、ブリガムヤング大学の招きで環境デザイン学科を設立し、6年間学科長を務めた。1987年から1996年にも同大学で教えている。2003年7月23日、ソルトレイクシティで79歳で没した。

デザインの思想と方法

ボーマンが条件として置いたのは、店頭に並ぶ価格で流通させることである。造形の新しさを追えば製作の手間が増え、価格が上がって届く範囲が狭まる。彼は形の側を抑えることで、加工の工程を減らし、量産に載る範囲に収めた。

フレームを細くして体積を減らす

彼の椅子とソファは、平鋼または角形の鋼を細い枠に組み、その上に厚みのある座面を載せる構成をとる。枠は座面の輪郭より内側に収まり、床との間に隙間が残る。座り心地に必要な厚みは確保したまま、部屋の中で占める体積の印象だけを減らすという処理にあたる。

形を抑えて工程を減らす

座面と背もたれは直線と単純な曲面で構成され、複雑な縫製や成形を必要としない。同じ枠の断面を椅子・長椅子・寝椅子に使い回せるため、部材の種類も少なくて済む。形の抑制は美意識の表明であると同時に、価格を成立させるための条件でもある。

素材の対比で変化をつける

形を抑えた分、質感の差が表に出る。クロームの平滑な面と革や別珍の柔らかい面、木の木目とガラスの透明さといった組み合わせが、装飾の代わりに置かれている。同じ形のまま張り地を替えるだけで印象が変わるため、製品構成の幅を工程を増やさずに広げられる。

単位を組み合わせる

1960年代後半からは、円弧を描く単位を連結して円形や半円形に構成できる長椅子を手がけた。単位の数と並べ方で形が決まるため、部屋の広さに応じて構成を変えられる。

代表作にみる方法

820-400 シェーズロング(1954年)

セイヤー・コギンとの協働の初期にあたる寝椅子である。連続する曲面で身体を受け、脚部を持たずに床に近い位置で支える。曲面は一方向にのみ湾曲するため、型を複雑にせずに成形できる。加工の制約のなかで身体に沿う形をつくるという方針が現れている。

989-103 Tバック ラウンジチェア(1963年)

背もたれを上部で横に張り出させ、正面から見てT字となる椅子である。背の上端を広げることで、肩を預ける面を確保しながら、背もたれ全体の面積は増やさない。フレームはクロームまたはステンレスの細い部材で構成される。

951-103 チェア(1966年)

平鋼を長方形に組んだ枠で座面を支える椅子である。後脚を持たない片持ちの構成をとり、枠の弾性でわずかにたわむ。ミース・ファン・デル・ローエやマルセル・ブロイヤーが鋼管で行った片持ちを、平鋼に置き換えたものにあたる。ボーマンの製品のなかで最も長く生産が続いている。

1224-303 サークル セクショナルソファ(1968年頃)

円弧を描く単位を連結し、半円形または円形に構成できる長椅子である。壁に沿って直線に並べるという前提を外すため、部屋の中央に置いて周囲から座れる。単位の数で規模が決まり、設計者が最終形を定めない構成にあたる。

ヴァイスロイ リクライナー(1965年)

背を倒す機構を備えながら、外観に機構の部品を見せない椅子である。可動部を座面の下に収め、外形は固定式の椅子と変わらない。機能を加えても形を増やさないという方針が、この処理に現れている。

評価と影響

ボーマンは一般に、戦後アメリカのモダン家具を、限られた層ではなく広い市場に届けた設計者と評価されている。1966年の『ニューヨーク・タイムズ』は、彼と協働する企業が価格と販売経路の両面で入手しやすい家具を供給している点を指摘した。

セイヤー・コギンとの50年にわたる協働は、アメリカの家具産業における設計者と製造者の関係の一例として言及される。設計と製造が同じ体制のなかで継続したことで、同じ型番の製品が長期にわたって供給された。

2010年、大手小売のクレート&バレルが951-103の取り扱いを始めたことは、彼の製品が専門店の外へ広がった節目として扱われる。現在もセイヤー・コギンが主要な設計の生産を続けている。

作品一覧

発表年 区分 作品名 ブランド
1950年代 椅子 スクープチェア Thayer Coggin
1954年 シェーズロング 820-400 シェーズロング Thayer Coggin
1963年 椅子 989-103 Tバック ラウンジチェア Thayer Coggin
1965年 椅子 ヴァイスロイ リクライナー Thayer Coggin
1966年 椅子 951-103 チェア Thayer Coggin
1960年代 シェーズロング ウェーブシェーズ Thayer Coggin
1968年頃 ソファ 1224-303 サークル セクショナルソファ Thayer Coggin
1970年代 椅子 シンライン ダイニングチェア Thayer Coggin
1950-70年代 テーブル・収納 コーヒーテーブル、サイドテーブル、キャビネットの各種 Thayer Coggin / Directional ほか

プロフィール

生没年 1923年10月7日〜2003年7月23日
出身地 アメリカ・カンザス州グッドランド
国籍 アメリカ
活動拠点 カリフォルニア、ノースカロライナ州ハイポイント、ユタ
分野 家具
主な協働ブランド Thayer Coggin、Directional、Drexel、Glenn of California

Reference

Milo Baughman | Thayer Coggin
https://www.thayercoggin.com/milo-baughman
Milo Baughman Design Archive | Brigham Young University
https://lib.byu.edu/
Design Within Reach - Milo Baughman
https://www.dwr.com/