バイオグラフィー

ミゲル・ミラ(Miguel Milá)は、1931年2月7日、スペイン・バルセロナに生まれた。彼の家系は芸術と深く結びついた貴族階級に属し、叔父のペドロ・ミラ・カンプスがアントニ・ガウディに著名なカサ・ミラ(ラ・ペドレラとしても知られる)の設計を依頼したことで知られている。このような文化的に恵まれた環境で育ったミラは、自然と芸術とデザインの世界へと導かれることとなった。

当初、ミラは建築学を学んでいたが、1955年にこれを断念し、より実践的な職人技の世界へと方向転換した。この決断は、彼のデザイン哲学の根幹を形成することになる。1950年代、ミラは兄のアルフォンソ・ミラと建築家フェデリコ・コレアが共同で運営するスタジオでインテリアデザイナーとしてキャリアをスタートさせた。当時のスペインは戦後の困難な時期にあり、工業デザインという概念がほとんど知られておらず、産業もほぼ存在しない状況であった。すべてが手作業で作られるこの時代背景が、ミラのデザインに対する理解と感性を形作ったのである。

1957年、ミラは建築家の友人であるフランシスコ・リバス・バランゲとエドゥアルド・ペレス・ウリバリとともに、「トラモ(Tramo)」という会社を設立した。これは「Trabajos Molestos(面倒な仕事)」の略語であり、家具と照明器具のデザインと製造に焦点を当てた企業であった。ここから、後に彼の代名詞となるTMCランプ(1958年)とTMMランプ(1961年)という時代を超えた古典が誕生し、現在に至るまで世界中で愛され続けている。

ミラは、デザイナーや建築家たちとの議論に積極的に参加し、バルセロナの美学と建築的モダニティについて論じた。これらの議論から、スペイン初の工業デザイン協会であるADI-FAD(工業デザイン協会-芸術工芸振興協会)が、アンドレ・リカール、アントニ・デ・モラガス、オリオル・ボイガス、ラファエル・マルキーナらとともに創設された。ミラは1974年から1984年まで同協会の会長を務め、スペインデザインの国際的な普及に尽力した。また、バルセロナの著名なデザインスクールであるELISAVAとEINAで14年間教鞭を執り、次世代のデザイナーたちに影響を与えた。

21世紀初頭、ミラは自身のインテリアデザインスタジオを設立し、工程を大切にし、技術を完成させることに専念した。1980年代以降、彼のキャリアはサンタ&コール社と密接に関わり、同社は現在も彼のランプを製造し続けている。また、1995年からは都市家具の分野にも進出し、ウルビデルミス社のためにネオロマンティコベンチシリーズを手がけた。さらに、息子のゴンサロ・ミラとの共同制作も行い、ハルポ(2014年)などの革新的な都市家具を生み出した。

その長いキャリアにおいて、ミラは数々の栄誉ある賞を受賞した。1987年には、アンドレ・リカールとともにスペイン国家デザイン賞の第1回受賞者となり、1993年にはクルー・デ・サン・ジョルディ賞、2008年にはイタリアADIからコンパッソ・ドーロ国際賞、そして2016年にはスペイン教育文化省から芸術功労金賞を授与された。バルセロナ市のデザイン博物館には、彼の生涯にわたる作品の図面、写真資料、模型、スケッチなど2,000点以上の資料を含むミゲル・ミラ・コレクションが収蔵されている。

ミゲル・ミラは、2024年8月12日、休暇中に訪れていたビルバオにて、娘のミカエラと孫のホセとともに過ごしていた際に、93歳でこの世を去った。70年以上にわたるキャリアを通じて、彼はスペインデザインの象徴として、そのモダニティの体現者として活躍し続けた。

デザインの思想とアプローチ

ミゲル・ミラは、自らを「プレ・インダストリアルデザイナー」と称した。この独特な自己規定には、彼のデザイン哲学の本質が凝縮されている。彼は次のように語っている。「私は実際には、産業化以前のデザイナーなのです。私は、失敗を修正し、過程で実験を行い、可能な限り最大限にコントロールできる技術的手順の方が心地よいのです。そこから、高貴な素材への私の嗜好が生まれます。つまり、上手に経年変化することを知っている素材への嗜好です。」この言葉は、彼が大量生産の効率性よりも、職人的な制作過程における試行錯誤と創造的自由を重視していたことを示している。

ミラのデザインアプローチは、機能性と美学の完璧な融合を追求するものであった。彼の創作スタイルは、「アイデアを持ち、余分なものを削ぎ落とす」という職人的プロセスに基づいている。これは、セスタランプ(1964年)とその後のランプファミリー、セスティタやアルバット、そしてグロボ・セスタなどの吊り下げランプの制作過程に明確に表れている。彼は、オブジェクトは美しいだけでなく機能的でなければならないという信念を持っており、この考え方が彼のすべての作品の基盤となった。

照明デザインに対する彼の哲学は、特に印象的である。「ランプは点灯している時間よりも消灯している時間の方が長いのです。だからこそ、その形状が最もエキサイティングな方法で空間に貢献するよう、細心の注意を払わなければなりません。」この言葉は、ミラが照明器具を単なる機能的な道具としてではなく、空間を構成する彫刻的なオブジェクトとして捉えていたことを示している。点灯時の光の質だけでなく、消灯時の造形美も同等に重要であるという考え方は、彼のデザインが時代を超えて愛される理由の一つである。

素材の選択においても、ミラは独自の哲学を持っていた。彼は木材、籐、金属、リネンといった天然素材や「高貴な素材」を好んだ。これらの素材は時間とともに美しく経年変化し、独特のパティナを獲得する。セスタランプの曲げ木、マニラランプの籐、M68ランプのアルミニウム、アメリカーナシリーズのメタクリレートや天然リネンのシェードなどは、すべてこの哲学を体現している。

ミラのアプローチは、1950年代のスペインの物資不足という状況から生まれたものでもあった。必要なものが市場に存在しなかったため、彼は自らそれを創造した。この必要性から生まれた創造性は、彼のデザインに実用性と誠実さを与え、装飾的な過剰さを排した純粋な形態を追求する姿勢につながった。「デザインが役に立たなければ、それは飽きられ、最終的には醜くなる。」という彼の言葉は、この実用主義的哲学を端的に表している。

また、ミラは既存のものを改良するというアプローチも重視した。彼は多くの場合、すでに存在するものから始め、良い部分を保存し、改善が必要な部分だけを修正するという方法を取った。これは革新のための革新ではなく、真に必要な改善を追求する姿勢であり、持続可能性と長寿命のデザインという現代的な価値観を先取りするものであった。彼は自身を「進歩的保守主義者」と呼び、革新性を追求することには関心がなかったと語っている。

作品の特徴

ミゲル・ミラの作品は、その清潔なライン、多機能性、そして時代を超えた魅力によって特徴づけられる。彼のデザインは、ミニマリズムと機能美の完璧な融合を体現しており、余分な装飾を排除しながらも、視覚的な優雅さと人間工学的な配慮を兼ね備えている。

照明デザインの特徴

ミラの照明デザインには、いくつかの共通した特徴が見られる。第一に、調整可能性と機能的柔軟性である。TMCランプとTMMランプは、シェードの高さを簡単に調整できる機構を持ち、使用者のニーズに応じて光の位置を変えることができる。この調整機構は、機械的な複雑さを最小限に抑えながら、最大限の使いやすさを実現している。

第二に、彫刻的な造形美である。セスタとセスティタのランプシリーズは、スペインの伝統的なランタンからインスピレーションを得た繊細な木製フレームがオパールガラスの球体を優しく包み込む形状を持ち、点灯時も消灯時も空間に温かみと優雅さをもたらす。M68ランプの大きなベル型のシェードは、光を美しく拡散させると同時に、力強い視覚的存在感を示す。

第三に、伝統的工芸技術の活用である。セスタシリーズの木材は、伝統的な蒸気曲げ技法によって成形され、マニラランプは籐の編み込み技術を用いている。これらの手工芸的な製造方法は、各ランプに固有の個性と温かみを与え、工業製品でありながら職人の手仕事の痕跡を残している。

都市家具デザインの特徴

1990年代以降、ミラは都市家具の分野でも重要な貢献を果たした。彼の都市用ベンチは、人間工学的快適性と耐久性の融合を特徴とする。ネオロマンティコ・クラシコベンチ(1995年)は、鋳造アルミニウムの脚部と曲線を描く木製スラットの組み合わせにより、視覚的な優雅さと実用的な快適性を両立させている。その綿密な人間工学設計は、世界中の公共空間で採用される理由となった。

ネオロマンティコ・リヴィアーノ100%アルミニウム版(2002年)は、スペインで初めて「クレイドル・トゥ・クレイドル」環境認証を取得した都市家具となり、持続可能性への先見的な取り組みを示した。息子ゴンサロとの共同デザインであるハルポ(2014年)は、「21世紀の国際市場のための、初のグローバルな都市ベンチ」として構想された。分解して平らに運搬でき、形状的に謙虚で多文化的、非常に快適で表現が簡潔、シンプルな経済環境でも地元の材料で製造可能というコンセプトは、グローバル化時代のデザインの新しい可能性を示した。

素材と仕上げ

ミラの作品における素材の選択は、常に機能性、美学性、そして経年変化の美しさを考慮したものであった。木材(チェリー、オーク、ビーチ、パイン)、金属(アルミニウム、スチール、青銅仕上げ)、ガラス(オパール、透明)、籐、リネン、そして時にはポリエチレンやメタクリレートといった現代的素材まで、幅広い素材を巧みに使い分けた。

仕上げにおいては、素材の自然な美しさを尊重し、過度な加工を避ける傾向があった。木材にはオイル仕上げや透明ラッカーが施され、木目の美しさが強調された。金属部分には陽極酸化処理や粉体塗装が施され、耐久性を確保しながら控えめな美しさを保った。この素材と仕上げへの誠実なアプローチが、ミラの作品に時代を超えた品質と存在感を与えている。

主な代表作とその特徴

TMCランプ(1958年)

ミラの最初の象徴的な照明デザインであるTMCランプは、トラモ社での初期作品として誕生した。シンプルで機能的なメカニズムに基づき、十字型のベースが細いシャフトを支え、円筒形のシェードがシャフトに沿って上下に移動できる構造を持つ。この調整可能な高さ機能により、TMCは読書灯、作業灯、あるいはアンビエント照明として多様な用途に対応できる。ミニマリストの美学と機能的多様性の完璧な融合として、発表から60年以上経った現在も、サンタ&コール社によって製造され続けている。1961年にはADI-FADのデルタ・デ・オロ賞を受賞した。

TMMランプ(1961年)

TMCランプの成功を受けて開発されたTMMランプ(Tramo Móvil Madera=トラモ・可動式・木材)は、ミラの照明デザイン哲学を象徴する作品である。十字型のベースから立ち上がる細いシャフトは、最初は四角形断面であるが、途中から円形断面に変化する。これは、ドラム型のシェードがシャフトに通されて上下に移動できるようにするためであり、ゴム製のワッシャーだけで位置を固定し落下を防ぐという極めてシンプルで巧妙なメカニズムを持つ。サンタ&コール社は、これを「バルセロナで構想された工業デザインのマニフェスト」と表現している。木材、パーチメント、そして金属の組み合わせは、温かみと機能性の完璧なバランスを示している。1962年にADI-FAD批評家賞を受賞し、現在も生産が続けられている。

セスタ&セスティタランプ(1962/1964年)

ミラの最も有名で愛されている作品の一つであるセスタランプには、魅力的な創作エピソードがある。1960年代、ミラがバルセロナを散策していた際、ガラス工場の前で捨てられていたオパールガラスの球体を見つけた。彼はそれを拾い上げ、数年をかけてこの壊れやすい球体を保持するための「バスケット」をデザインした。その名の通り「セスタ(スペイン語でバスケット)」と名付けられたこのランプは、スペインの海岸沿いの家屋、田舎の農場、開放的なテラスを照らす伝統的なランタンからインスピレーションを得ている。

曲げ木の優雅なフレームがオパールガラスの球体を包み込む構造は、持ち運び可能な取っ手としても機能し、照明器具の実用性を高めている。蒸気曲げという伝統的な木材加工技術を用いて手作業で製作され、各ランプは固有の個性を持つ。セスタファミリーは、その後、小型版のセスティタ、アルミニウムフレーム版のセスティタ・アルバット、充電式バッテリー版のセスティタ・バテリア、メタリック版のセスタ・メタリカ、壁掛け版のウォーリーなど、多様なバリエーションへと拡大した。60年以上にわたって愛され続けている工業的職人技の原型的作品である。

M68ペンダントランプ(1968年)

M68ランプは、ミラの照明デザインにおける別の側面を示す作品である。大きなベル型の不透明なシェードが、光を下方に美しく拡散させる構造を持つ。オリジナルはメタクリレート製であったが、現在のサンタ&コール社による再版では、アルミニウム製に更新され、ホワイト、ブラック、レッド、クロームなど複数の仕上げオプションが提供されている。シンプルでありながら力強い視覚的存在感を持つM68は、住宅のダイニングエリアから商業空間まで、幅広い用途で使用されている。その普遍的な形態は、1960年代のデザインでありながら、現代の空間にも完璧に調和する。

アメリカーナシリーズ(1960年代中期)

アメリカーナシリーズは、1950年代のジョージ・ハンセンのランプコレクションへのオマージュとして、1960年代中期にミラがデザインした。調整可能なアームとスイング機構を持つこのシリーズは、機能的な美しさと遊び心のある調和を体現している。テーブルランプ、フロアランプ、ウォールランプのバリエーションがあり、天然リネンや合成素材のシェードと金属フレームの組み合わせが特徴的である。控えめでありながら洗練されたこのシリーズは、ミラのデザインの多様性を示している。

ネオロマンティコベンチシリーズ(1995年以降)

1995年、サンタ&コールの都市部門(現ウルビデルミス社)は、ミラに都市用ベンチの再解釈を依頼した。これに応えて誕生したネオロマンティコ・クラシコベンチは、ロマンティコベンチの大幅に改良されたバージョンであり、人間工学的にデザインされた鋳造アルミニウム製の脚部と、複数の長さで提供される曲線と直線の木製スラットを特徴とする。綿密な人間工学と優雅さにより、このベンチは現代の都市デザインにおける世界的なベストセラーとなり、多くのデザイナーにインスピレーションを与えた。

このファミリーは時間とともに成長し、2000年にはより軽量な構造とアームレストを備えたネオロマンティコ・リヴィアーノが誕生した。2011年には、そのアルミニウム100%版がスペインで初めて「クレイドル・トゥ・クレイドル」環境認証を取得した都市空間要素となった。2009年には、リサイクル・リサイクル可能なエンジニアリングポリマーを使用したネオロマンティコ・カラー版も登場し、腐食に対する耐性を高めた。バルセロナの中心部にあるパセオ・デ・グラシアの歩道には、ネオロマンティコ・リヴィアーノモデルが設置されており、世界中の都市で見ることができる。

ハルポ(2014年)

ミラと息子のゴンサロが共同でデザインしたハルポは、21世紀の国際市場のために構想された革新的な都市家具である。このベンチは、同等の寸法を持つ他のベンチが必要とする容積のわずか10分の1しか占めず、平らに梱包して輸送可能で、組み立てと設置が容易、手頃な価格、そして非常に快適というコンセプトを実現した。形状的に謙虚で多文化的、表現が簡潔であり、シンプルな経済環境でも地元の材料で製造可能な、初のグローバル都市ベンチである。

その名は、マルクス兄弟の中で最も親しみやすく人懐っこいハルポ・マルクスに由来しており、言葉を必要とせずに世界中で認識される存在を目指している。ハルポファミリーは、ベンチ、椅子、スツール、そしてロングプロファイルのデッキチェアという4種類の座面タイプで構成され、異なる座り方や寝そべり方を提供し、瞑想と静寂を誘う。その形式的な謙虚さと優れた快適性は、父と息子という2世代のデザイナーの協働の成果である。

その他の重要作品

マニラランプ(1961年)は、籐を使用した照明デザインで、天然素材への愛着を示している。ウォーリーランプ(1962年)は、セスタファミリーの象徴的な球形シェードを壁掛け版として展開したもので、金属製のリングと腕で球体を支える優雅な構造を持つ。FADランプ(1973年)は、バルセロナのFAD(芸術工芸振興協会)カフェのために特別にデザインされ、どこでも機能するように設計された。トゥンバロ(Túmbalo)傘立て兼灰皿FSBドアハンドルトラムモジュラーベンチ(1991年)など、照明以外の分野でも多様な作品を残している。

功績と業績

ミゲル・ミラの70年以上にわたるキャリアは、スペイン工業デザインの歴史そのものと言える。彼の功績は、個々のプロダクトデザインにとどまらず、スペインにおけるデザイン文化の確立と国際的な普及に大きく貢献したことにある。

デザイン協会の創設と育成

1960年頃、ミラはアンドレ・リカール、アントニ・デ・モラガス、オリオル・ボイガス、シリシ・ペリセール、マネル・カセス、ラファエル・マルキーナらとともに、スペイン初の工業デザイン協会であるADI-FAD(工業デザイン協会-芸術工芸振興協会)の創設に参加した。この協会は、スペインデザインの国際的な普及と、若いスペインのプロフェッショナルと国際デザインとの接続を目指して設立された。ミラは1974年から1984年までの10年間、同協会の会長を務め、スペインデザインの地位向上に尽力した。

教育者としての貢献

ミラは、バルセロナの著名なデザインスクールであるELISAVAとEINAで14年間教鞭を執り、次世代のデザイナーたちを育成した。彼の教育哲学は、実践的な技術習得と理論的な思考の両立を重視するものであり、多くの学生に影響を与えた。彼の教え子たちは、スペイン国内外でデザイナーとして活躍している。

受賞歴

  • 1961年 - ADI-FAD デルタ・デ・オロ賞(TMCランプに対して)
  • 1962年 - ADI-FAD 批評家賞(TMMランプに対して)
  • 1987年 - スペイン国家デザイン賞(第1回、アンドレ・リカールと共同受賞)
  • 1993年 - クルー・デ・サン・ジョルディ賞
  • 2003年 - ADI-FAD シルバーデルタ賞
  • 2005年 - ADI-FAD シルバーデルタ賞
  • 2008年 - コンパッソ・ドーロ国際賞(イタリアADI)- 職業的キャリアとスペインデザインの海外普及への貢献を認めて
  • 2009年 - ADI-FAD セレクション賞(ネオロマンティコ・カラーベンチに対して)
  • 2016年 - 芸術功労金賞(スペイン教育文化省)

ミラは、キャリアを通じてADI-FADから6回のゴールドデルタ賞、9回のシルバーデルタ賞、そして1986年には特別ゴールドデルタ賞を受賞している。2024年9月にはバルセロナ市から金メダルを授与される予定であったが、その直前の8月に逝去した。

主要プロジェクトと公共空間への貢献

2003年、バルセロナのパラウ・ロベルトの改修工事において、ミラの家具が設置された。また、彼は1987年以降、デンマーク国鉄のIC3列車の内装テキスタイルをデザインし、交通インフラのデザインにも貢献した。バルセロナ地下鉄の車両デザインにも関わり、都市インフラの人間工学的改善に寄与した。

彼の都市家具は、バルセロナのパセオ・デ・グラシアをはじめ、世界中の都市の公共空間で見ることができる。ネオロマンティコシリーズのベンチは、その人間工学と機能性により、国際的に採用され、現代都市デザインのベンチマークとなっている。

アーカイブとレガシー

バルセロナのデザイン博物館(Museu del Disseny de Barcelona)には、ミラの家族から寄贈された「ミゲル・ミラ・コレクション」が収蔵されている。このコレクションには、817のプロジェクトにわたる5,000点以上の資料が含まれており、図面、写真資料、模型、スケッチ、さらには彼の建築学生時代のノートブック、バルセロナ地下鉄車両のデザイン文書、A-14暖炉やM-57螺旋階段の縮尺模型などの貴重な資料が含まれている。2025年には、同博物館で「ミゲル・ミラ (プレ)インダストリアルデザイナー」と題した、スペインで最も包括的な彼の回顧展が開催されている(6月19日〜9月28日)。

評価と後世に与えた影響

ミゲル・ミラは、スペイン現代デザインを代表する存在として、他の誰よりもその歴史を体現している。1950年代の先駆者世代に属し、彼の多くの家具と照明器具は真の古典となった。彼の作品は、当初の制作環境を超越し、今日に至るまで販売され続けている。「厳格さと誠実さが高い価値であった時代に生まれた」おかげだと、ミラ自身が語っている。

スペインデザイン史における位置づけ

ミラは、スペインにおける工業デザインという概念そのものを確立した先駆者の一人である。彼が活動を始めた1950年代のスペインは、工業デザインがほとんど知られておらず、産業もほぼ存在しない状況であった。この困難な状況の中で、ミラは自らデザインし、製造し、販売するという垂直統合型のアプローチを取り、スペインデザインの可能性を示した。彼の成功は、後続のデザイナーたちに道を開き、スペインが国際的なデザイン先進国として認知されるための基盤を築いた。

国際的認知と影響

2008年のコンパッソ・ドーロ国際賞の受賞は、ミラの国際的な地位を決定的なものとした。コンパッソ・ドーロは1954年にイタリアで創設された世界最古かつ最も権威あるデザイン賞の一つであり、「デザイン界のノーベル賞」あるいは「オスカー賞」とも呼ばれている。この賞の受賞は、ミラの職業的キャリアとスペインデザインの海外普及への貢献が国際的に認められたことを意味する。

英国のデザイナー、ジャスパー・モリソンは、ミラの作品集『Miguel Milá: A Life in Design』(2022年)の序文を執筆し、ミラの業績を国際的な文脈の中で評価している。この書籍は、デザイン学者フランシスコ・ガスパル・ケベドによって編纂され、1956年から2021年までの彼の最も象徴的な作品を、アーカイブ写真や図面、そしてナチョ・アレグレによってミラのバルセロナの自宅で撮影された写真とともに詳細に振り返っている。

継続的な生産と現代性

ミラの作品の真の影響力は、その多くが60年以上経った今も現役で生産され続けていることに表れている。サンタ&コール社は、1985年の創立以来、ミラの照明器具を忠実に再版し、現代の技術基準とLED照明に対応させながらも、オリジナルのデザインの精神を保持している。TMC、TMM、セスタ、セスティタ、M68などのランプは、現在も世界中で販売され、新しい世代の顧客に愛され続けている。

ウルビデルミス社(旧サンタ&コール都市部門)は、ミラとの30年以上にわたる協働を通じて、機能的で長持ちする都市空間のためのソリューションを生み出してきた。ネオロマンティコシリーズは、世界中の都市の公共空間で見ることができ、その人間工学と耐久性は現代の都市デザインの基準となっている。

持続可能性とタイムレスデザインの先駆者

ミラのデザイン哲学は、現代の持続可能性とタイムレスデザインの概念を先取りしていた。彼は常に、時を経て美しく経年変化する「高貴な素材」を好み、流行に左右されない普遍的な形態を追求した。「デザインは役に立たなければ、飽きられ、最終的には醜くなる」という彼の言葉は、機能性と美の不可分性を示している。

ネオロマンティコ・リヴィアーノ100%アルミニウムベンチがスペインで初めて「クレイドル・トゥ・クレイドル」認証を取得したことは、彼の環境意識の先見性を示している。また、多くの作品が数十年にわたって使用され続けることで、使い捨て文化に対する持続可能な代替案を提供している。

次世代への影響

ミラの影響は、彼の直接の弟子たちだけでなく、広くスペインおよび国際的なデザイン界に及んでいる。彼の息子ゴンサロ・ミラも工業デザイナーとなり、父との共同作業を通じて新しい世代のデザインアプローチを示した。ハルポベンチは、二世代にわたるデザイナーの対話の成果であり、伝統と革新の融合を体現している。

若いデザイナーたちは、ミラの作品に機能主義と美学の完璧なバランス、職人技への敬意、そして素材への誠実さを見出している。彼の「プレ・インダストリアルデザイナー」という自己規定は、大量生産の時代においても、手仕事の価値と制作過程における創造性を重視する姿勢を示しており、現代のメイカームーブメントや職人回帰の潮流とも共鳴している。

文化的遺産としての評価

バルセロナ市は、2024年9月にミラにバルセロナ金メダルを授与する予定であった。彼の逝去はその直前であったが、これは彼の文化的貢献が市の最高レベルで認識されていたことを示している。彼の作品は、バルセロナの都市景観の一部となっており、パセオ・デ・グラシアのベンチから地下鉄の車両まで、市民の日常生活に溶け込んでいる。

スペイン教育文化省が2016年に授与した芸術功労金賞は、ミラの業績が国家レベルで文化的遺産として認識されたことを意味する。彼の作品は、20世紀スペイン文化の重要な一部として、後世に継承されるべき価値を持つものとして評価されている。

デザイン思想の現代的意義

ミラの「余分なものを削ぎ落とす」というアプローチ、「デザインが役に立たなければ意味がない」という実用主義、そして「消灯時の美しさ」への配慮は、現代のミニマリズム、機能主義、そして全体的デザインアプローチに通じる普遍的な価値を持っている。彼の作品は、デザインが単なる装飾ではなく、人々の生活の質を向上させる実践的な芸術であることを示している。

ウルビデルミス社は、ミラとの協働について次のように述べている。「人々は常に良いデザインを認識するわけではないが、それを評価します。なぜなら、それが彼らの生活を改善するからです。」この言葉は、ミラのデザイン哲学の本質を捉えている。デザインの真の価値は、その美的な魅力だけでなく、日常生活における実用性と快適性にあるという彼の信念は、時代を超えて有効な原則である。

作品一覧

年月 区分 作品名 ブランド
1958年 照明 TMC ランプ Tramo / Santa & Cole
1961年 照明 TMM ランプ(Tramo Móvil Madera) Tramo / Santa & Cole
1961年 照明 マニラ ランプ Tramo
1962年 照明 ウォーリー ランプ Tramo / Santa & Cole
1962年/1964年 照明 セスタ テーブルランプ Tramo / Santa & Cole
1962年/1964年 照明 セスティタ テーブルランプ Tramo / Santa & Cole
1962年 照明 TMM Corto ウォールランプ Santa & Cole
1960年代中期 照明 アメリカーナ シリーズ(テーブル、フロア、ウォール) Santa & Cole
1968年 照明 M68 ペンダントランプ Tramo / Santa & Cole
1970年代 照明 各種クランプ式ウォール/テーブルランプ Tramo
1973年 照明 FAD テーブルランプ / フロアランプ Santa & Cole
1973年 家具 FAD テーブル Gres
- 照明 TMD フロアランプ Santa & Cole
- 照明 M64 ペンダントランプ Santa & Cole
- 照明 グロボ セスタ ペンダントランプ Santa & Cole
- 照明 セスティタ アルバット ポータブルランプ Santa & Cole
- 照明 セスティタ バテリア コードレステーブルランプ Santa & Cole
- 照明 セスタ メタリカ テーブルランプ Santa & Cole
- 照明 セスタ アウトドア テーブル/フロアランプ Santa & Cole
- 照明 ウォーリー セスティタ ウォールランプ Santa & Cole
- 照明 ウォーリー セスタ ウォールランプ Santa & Cole
- 照明 ウォーリー ウォールランプ Santa & Cole
- 照明 ディアナ フロアランプ / テーブルランプ Santa & Cole
- 照明 アサ テーブルランプ Santa & Cole
- 照明 シングラー W2 Santa & Cole
- 照明 セクスタ ペンダント Santa & Cole
- 照明 リネア エスタディオ リニアサスペンション Santa & Cole
- 照明 スタジアム ウォールランプ Santa & Cole
- 照明 アミーゴ ウォールランプ(屋外用も) Santa & Cole
1991年 都市家具 TRAM モジュラーベンチ Escofet
1995年 都市家具 ネオロマンティコ クラシコ ベンチ Urbidermis (Santa & Cole)
2000年 都市家具 ネオロマンティコ リヴィアーノ ベンチ Urbidermis (Santa & Cole)
2002年 都市家具 ネオコンボ ベンチ Urbidermis (Santa & Cole)
2002年/2011年 都市家具 ネオロマンティコ リヴィアーノ 100% アルミニウム Urbidermis (Santa & Cole)
2003年 都市家具 ロベール ガーデンエッジングシステム(ベス・フィゲラスと共同) Urbidermis (Santa & Cole)
2009年 都市家具 ネオロマンティコ カラー ベンチ Urbidermis (Santa & Cole)
2010年 プロダクト カンティール(限定版) -
2014年 都市家具 ハルポ ベンチ/チェア/スツール/デッキチェア(ゴンサロ・ミラと共同) Urbidermis (Santa & Cole)
- 都市家具 ベーシック ベンチ(ゴンサロ・ミラと共同) Urbidermis (Santa & Cole)
- 都市家具 インナー ベンチ Urbidermis (Santa & Cole)
- プロダクト トゥンバロ(Túmbalo)傘立て兼灰皿 Misel·lania
- プロダクト FSB ドアハンドル FSB
1960年代 家具 各種テーブル、家具 Gres, Polinax
1987年以降 テキスタイル IC3列車内装テキスタイル デンマーク国鉄
- 都市インフラ バルセロナ地下鉄車両デザイン バルセロナ交通局

Reference

Miguel Milá - Santa & Cole
https://www.santacole.com/en/biography/miguel-mila/
About - Miguel Milà Official Website
https://miguelmila.com/about/
Miguel Milá. Design. Biography and works at Spain is culture
http://www.spainisculture.com/en/artistas_creadores/miguel_mila.html
Miguel Milá: A Life in Design - Apartamento Magazine
https://www.apartamentomagazine.com/product/miguel-mila-a-life-in-design-2/
Designing is seeing life through a magnifying glass. Goodbye to Miguel Milá - METALOCUS
https://www.metalocus.es/en/news/designing-seeing-life-through-magnifying-glass-goodbye-miguel-mila
Miguel Milá, the father of the Cesta lamp - Design Stories
https://www.finnishdesignshop.com/design-stories/design/miguel-mila-the-father-of-the-cesta-lamp-trusts-in-a-process-of-craftsmanship
30 years of urban design with Miguel Milá - Urbidermis
https://www.urbidermis.com/blog/30-years-of-urban-design-with-miguel-mila/
Miguel Milá - Urbidermis Biography
https://www.urbidermis.com/biographies/miguel-mila/
Miguel Milà | Miguel Milà Designs - HIC Arquitectura
https://hicarquitectura.com/2025/09/miguel-mila-miguel-mila-designs/
Miguel Mila - twentytwentyone
https://www.twentytwentyone.com/collections/designers-miguel-mila
Exploring Miguel Milá's Iconic TMC and TMM Lamps - Encyclopedia of Design
https://encyclopedia.design/2024/06/25/exploring-miguel-milas-iconic-tmc-and-tmm-lamps/
MIGUEL MILÁ. (PRE)INDUSTRIAL DESIGNER - ITSLIQUID
https://www.itsliquid.com/miguel-mila-preindustrial-designer.html