概要

梅田正徳(1941年生まれ)は、日本のプロダクトデザイナー・インテリアデザイナーである。1967年に渡伊し、アキッレ・カスティリオーニの事務所を経てオリベッティでエットレ・ソットサスと働いた。1981年からメンフィスに参加し、畳を単位とした「TAWARAYA」を発表。帰国後は花の形を椅子の構造に置き換えた花座シリーズを手がけ、エドラから生産されている。

バイオグラフィー

1941年3月27日、神奈川県に生まれた。1962年に桑沢デザイン研究所リビングデザイン科を修了し、河野鷹思のデザイン事務所でインテリアの実務にあたった。

1967年に渡伊し、ミラノでアキッレ・カスティリオーニの事務所に加わる。1968年、「可動供給装置」でドイツ国際工業デザイン競技のブラウン賞を受け、1970年からはオリベッティの設計顧問となった。ここでエットレ・ソットサスとともにオフィス家具のシステム「シンテシス45」の開発に携わっている。

1979年に帰国し、翌1980年にウメダデザインスタジオを設立した。照明、食器、家具、内装を手がけ、ヤマギワや岩崎電気との協働で照明器具を発表している。

1981年、ソットサスの誘いでメンフィスに参加し、「TAWARAYA」を発表した。1988年に「月苑(キキョウ)」を発表し、1990年にイタリアのエドラから製品化されている。2021年にはメンフィスから「UTAMARO」シリーズを発表した。

デザインの思想と方法

梅田が扱うのは、既存の家具の分類に収まらない対象をどう成立させるかという問題である。花の形、畳の寸法、動物の姿といった家具の外側にあるものを持ち込み、それを座具として機能させる。造形上の引用ではなく、持ち込んだ形が支持と座り心地の条件を満たすところまで詰める点に特徴がある。

花の形を構造に置き換える

花座シリーズでは、花弁の重なりがそのまま背もたれと肘掛けの配置になる。月苑では、外側の花弁が身体を左右から囲い、内側の面が背を受ける。花の輪郭を写すのではなく、花弁が中心に向かって集まるという構成そのものを、身体を包む構造として使っている。後脚に車輪を付けることで、大きさの割に動かせる。

寸法の単位を持ち込む

TAWARAYAは、畳という日本の寸法の単位を家具に持ち込んだ作品である。畳の大きさは人が横になる寸法から決まっており、座る・寝る・複数人が集まるといった用途を同時に許す。西洋の家具にはこの単位がないため、ソファでも寝台でもない対象が成立する。四方をロープで囲んだ形はボクシングのリングに由来し、内側を議論の場として設定している。

作り手と組む

花座シリーズの複雑な立体は、家具モデラーの宮本茂紀との協働によって実現している。曲面が連続する張り包みは、型紙の作り方と縫製の順序が形を左右するため、設計図だけでは決まらない。イタリアのメーカーが長期にわたって生産を続けているのは、この段階で製品としての精度が確保されているためである。

美術館に残すことを目標に置く

梅田は、作品が美術館に収められることを設計の目標として明言してきた。内装の仕事で収入を得て、そこで得た資金で椅子の試作をつくるという進め方をとっており、市場での販売量よりも作品として残ることを優先する立場にある。

代表作にみる方法

可動供給装置(1968年)

台所・浴室・音響の機能を一つの可動する単位にまとめた提案である。それぞれ別の部屋に固定されている設備を、移動できる家具として扱い直した。1968年のドイツ国際工業デザイン競技でブラウン賞を受け、梅田の国際的な活動の出発点となった。模型は巡回展示で劣化して失われ、後年に再製作されている。

シンテシス45(1975年)

エットレ・ソットサスとの共同による、オリベッティのオフィス家具システムである。机・収納・間仕切りを共通の寸法体系で構成し、事務室の配置を後から変えられるようにした。当時のオフィス家具が持っていた無彩色の前提を外し、色を部材の区別に用いている。

TAWARAYA(1981年)

メンフィスで発表した、畳を単位とする家具である。約1.8平方メートルの畳を敷いた台の四方をロープで囲み、内部を座る・寝る・集まるといった複数の用途に開いている。西洋の家具の分類に対応する語がないため、名称は「俵屋」に由来してイタリア側が付けた。寸法の単位そのものを持ち込むという方法が最も明快に現れた作品にあたる。

月苑(キキョウ)(1988年/1990年製品化)

桔梗の花弁の構成を椅子に置き換えた作品である。外側の花弁が肘掛けとして身体を囲み、内側の面が背を受ける。花弁が重なる部分では張り地に複雑な曲面が生じるため、型紙と縫製の順序が形を決める。後脚に車輪を持ち、大きさの割に動かしやすい。1990年にエドラが製品化した。

花座シリーズ(1988-1990年)

月苑に続いて、蓮の「浄土」、梅の「早春」、薔薇の「ローズ」、桜の「花宴」が発表された。花ごとに花弁の枚数と重なり方が異なるため、同じ方法をとりながら椅子としての構成は毎回変わる。いずれも宮本茂紀の工房で試作が重ねられ、エドラが生産している。

評価と影響

梅田は一般に、川上元美、喜多俊之らと並ぶ、日本の設計者が国外で活動を確立した世代の一人と評価されている。1960年代にイタリアへ渡り、カスティリオーニとソットサスのもとで実務を積んだ経験が、帰国後の仕事の前提になっている。

作品は発表当初、形が具体的すぎるという評価も受けたが、分野の境界が問われる現在の文脈では改めて参照されることが増えている。エドラとメンフィスがいずれも長期にわたって生産を続けている点も、製品としての完成度が保たれていることを示す。

2015年、梅田の作品174点が香港のM+に収められ、試作、製品、図面、模型を含む資料がまとめて保存されることになった。

受賞・収蔵

受賞

  • 1968年 ブラウン賞(ドイツ国際工業デザイン競技、可動供給装置)

収蔵

以下の収蔵が確認できる(MoMA=ニューヨーク近代美術館、Met=メトロポリタン美術館)。

  • MoMA TAWARAYA リング(1981年) 収蔵番号 173.2026
  • Met ムツゴロウ(1983年) 収蔵番号 1989.49.1a, b
  • Met ムツゴロウ(1983年) 収蔵番号 1989.49.2a, b
  • Met スター トレイ(1983年) 収蔵番号 1989.49.3

このほか、2015年に作品174点が香港のM+に収められている。

作品一覧

発表年 区分 作品名 ブランド
1968年 提案 可動供給装置
1975年 オフィス家具 シンテシス45(ソットサスと共同) Olivetti
1981年 家具 TAWARAYA Memphis
1983年 食器 ムツゴロウ Memphis
1986年 照明 ウメダスタンド ヤマギワ
1988年 椅子 浄土(ハス) Edra
1988年 椅子 月苑(キキョウ) Edra(1990年製品化)
1989年 照明 ランドルーチェ 岩崎電気
1990年 椅子 早春(ウメ) Edra
1990年 椅子 ローズ Edra
1990年代 椅子 花宴(サクラ) Edra
2021年 家具 UTAMARO シリーズ Memphis

プロフィール

生年 1941年3月27日
出身地 日本・神奈川県
国籍 日本
活動拠点 東京、ミラノ
分野 家具、照明、食器、インテリア
主な協働ブランド Memphis Milano、Edra、Olivetti、ヤマギワ

Reference

Masanori Umeda | Memphis Milano
https://www.memphis-milano.com/designers/masanori-umeda/
Masanori Umeda | Edra
https://www.edra.com/en/designers/masanori-umeda
M+ Collections
https://www.mplus.org.hk/en/collection/
The Museum of Modern Art Collection
https://www.moma.org/collection/works/2325
The Metropolitan Museum of Art Collection
https://www.metmuseum.org/art/collection