概要
ルシアン・R・エルコラーニ(1888-1976)は、イタリア出身でイギリスで活動した家具製作者である。1920年にハイウィカムでアーコールを設立した。イギリスの伝統的なウィンザーチェアの構造を、量産の工程で作り直している。第二次世界大戦中は政府の家具供給計画に参加した。
バイオグラフィー
1888年5月8日、イタリアのアスコリ・ピチェーノに生まれた。1898年に家族とロンドンへ移住している。
ロンドンの美術学校で学びながら、家具の製造に携わった。ハイウィカムの家具工場で経験を積んでいる。
1920年、ハイウィカムでファーニチャー・インダストリーズ(のちアーコール)を設立した。
1944年から政府の家具供給計画に参加し、材料が限られる条件で椅子を大量に製造した。1976年に没している。同社は現在も家族による経営が続く。
デザインの思想と方法
ウィンザーチェアは、厚い座板に脚と背の部材を差し込む構造をとる。イギリスで数百年にわたり作られてきた形式だが、手作業が前提だった。エルコラーニが行ったのは、この構造を機械の工程で作り直すことである。
座板に部材を差し込む
厚い木の板に穴を開け、脚と背の棒を差し込む。接合は差し込みと楔によるため、金具を要さない。座板が構造の中心となり、他の部材はそこから伸びる。
楡を使う
座板には楡を用いる。楡は繊維が絡み合っており、穴を多数開けても割れにくい。ウィンザーチェアで伝統的に用いられてきた材料にあたる。
蒸気で曲げる
背の輪郭は、ブナを蒸気で曲げて作る。工場に曲げ木の設備を導入することで、手作業では時間のかかる工程を短縮した。
戦時の条件で量産する
1944年からの政府の家具供給計画では、材料も労働力も限られていた。部材の種類を減らし、工程を単純にすることで、この条件のもとで大量に製造している。
アーコールの歴史や他の製品について詳しくはアーコール ブランドページをご覧ください。
代表作にみる方法
政府の家具供給計画のための椅子(1944年〜)
戦時下の材料統制のもとで製造した椅子である。部材の種類を減らし、工程を単純にすることで大量に製造した。約10万脚が作られたとされる。
ウィンザーチェアの系列(1950年代〜)
厚い楡の座板に、蒸気で曲げたブナの背と脚を差し込んだ椅子である。伝統的な構造を機械の工程で作り直している。同社の中心的な製品にあたる。
ペブル テーブル(1959年)
小石の形を思わせる輪郭の卓である。3つの大きさが用意され、入れ子にして収納できる。→ペブルコーヒーテーブル
スタッキングチェア
積み重ねられる椅子である。学校や集会所での使用を想定し、保管の条件が構成に含まれる。
アーコールの工場(1920年〜)
ハイウィカムに設立した工場である。同地はイギリスの椅子の製造で知られる土地にあたる。設計と製造の双方を自社で行った。
評価と影響
エルコラーニは一般に、イギリスの伝統的なウィンザーチェアの構造を量産の工程で作り直した製作者と評価されている。手作業を前提とした形式を、機械の工程に置き換えている。
1944年からの政府の家具供給計画では、材料が限られる条件で約10万脚を製造した。部材の種類を減らすという方法が、この条件に対応している。
1920年に設立したアーコールは現在も家族による経営が続き、同じ構造の椅子を生産している。
収蔵
4館のAPI(MoMA、V&A、Met、AIC)で照合したが、該当する収蔵は確認できなかった。イギリス国内の他館については照合手段がない。
作品一覧
| 年 | 区分 | 作品名 | ブランド |
|---|---|---|---|
| 1920年 | 会社 | ファーニチャー・インダストリーズ(のちアーコール)設立 | ハイウィカム、イギリス |
| 1944年〜 | 椅子 | 政府の家具供給計画のための椅子 | ercol |
| 1950年代〜 | 椅子 | ウィンザーチェアの系列 | ercol |
| 1959年 | テーブル | ペブルコーヒーテーブル | ercol |
| 1950-70年代 | 家具 | 椅子・卓・収納の各種 | ercol |
プロフィール
| 生没年 | 1888年5月8日〜1976年 |
|---|---|
| 出身地 | イタリア・アスコリ・ピチェーノ |
| 国籍 | イタリア(のちイギリス) |
| 活動拠点 | ハイウィカム、イギリス |
| 分野 | 家具 |
| 主な協働ブランド | ercol |
Reference
- ercol(公式)
- https://www.ercol.com/
- Victoria and Albert Museum Collections
- https://collections.vam.ac.uk/