概要
キム・コリン(1961年生まれ)は、アメリカ出身でロンドンを拠点とするデザイナーである。建築を学んだのち、2002年にサム・ヘクトとインダストリアル・ファシリティを設立した。製品を単体として設計せず、それが置かれる部屋や机の上でどう働くかを条件に置く。ハーマンミラー、無印良品、マッティアッツィ、ヘイなどと協働している。
バイオグラフィー
1961年、アメリカ・カリフォルニア州ロサンゼルスに生まれた。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)で美術史と建築の学士号を、南カリフォルニア建築大学(SCI-Arc)で建築の修士号を得ている。
建築の実務と、建築誌の編集に携わったのち、ロンドンへ移った。
2002年、サム・ヘクトとともにロンドンのクラーケンウェルにインダストリアル・ファシリティを設立する。設計事務所と工場のあいだに位置する場という意味を名称に込めている。
2008年からハーマンミラーの設計顧問を務め、無印良品では長期にわたり設計の助言にあたっている。2018年から2021年まで、イタリアのマッティアッツィのアートディレクターを務めた。2015年にロイヤル・デザイナー・フォー・インダストリーに選ばれている。
デザインの思想と方法
コリンが建築から持ち込んだのは、物を単体で見ないという視点である。建築では、一つの部屋は隣の部屋と廊下との関係で決まる。製品も同じく、机の上や部屋の中で他の物と並んだときにどう働くかが問題になる——この見方が設計の前提にある。
置かれる状況から寸法を決める
製品の設計では、まずそれがどこに置かれ、周囲に何があるかを想定する。事務机の上なら、書類や画面や手の動きと共存できる高さと奥行きが要る。製品単体の造形として最適でも、置かれた状況で邪魔になるなら成立しない、という判断をとる。
過不足のない量に収める
インダストリアル・ファシリティは、必要十分な状態を設計の目標に置く。機能を足せば製品は使いにくくなり、削りすぎれば用を成さない。この釣り合いの点を探すため、試作の段階で機能の追加と削除を繰り返す。
流行を追わない
コリンは、記録された時点で流行はすでに過去のものになると述べている。変化を起こす側ではなく、生活の変化に応じる側に立つという姿勢で、これは長く生産される製品を条件とすることにつながる。
書くことを設計の一部にする
スタジオでは執筆と出版を実務の一部としている。製品の設計だけでなく、それがどのような状況を想定しているかを言葉で示すことで、判断の根拠が製品の外にも残る。
ハーマンミラーの歴史や他の製品について詳しくはハーマンミラー ブランドページをご覧ください。
代表作にみる方法
ブランカ チェア(2010年、マッティアッツィ)
木材をCNC加工で削り出した椅子である。脚から背もたれへ枝分かれする構成をとり、接合部の数を減らしている。CNCは削る量が多いほど時間がかかるため、削り代を抑えつつ必要な断面を確保する形が求められる。加工方法の条件が形を決めた例にあたる。V&Aが収蔵している。
ローカル オフィスシステム(2013年、ハーマンミラー)
事務所の作業空間を構成する系列である。片持ちの卓、高さを変えられる仕切り、移動できる什器を組み合わせ、机を固定席として割り当てない使い方に対応する。人が場所を移りながら働くという前提から、部材の構成が決まっている。
無印良品のための製品(2000年代〜)
家具から衣類、電子機器、食品まで50点を超える製品に関わっている。同社の既存の製品群に並べたときに違和感がないことが条件になるため、単体としての新しさは追わない。置かれる状況から設計するという方針が、企業単位で適用された例にあたる。
スリング ラウンジチェア(2021年、タクト)
認証材のオークと麻の布を用いた椅子である。使い手が自分で組み立てることを前提とし、部材を平らに梱包して運ぶ。工具の種類と手順を限定することで、組み立ての可否が寸法と接合の設計を規定している。
評価と影響
コリンは一般に、建築の視点を工業デザインに持ち込んだ設計者と評価されている。製品を単体ではなく状況の中で扱う方法が、インダストリアル・ファシリティの仕事の特徴として挙げられる。
ハーマンミラー、無印良品、マッティアッツィといった性格の異なる企業との長期的な関係が続いている。いずれも既存の製品群があり、その中に加わる製品を設計するという条件が共通している。
スタジオの仕事はサム・ヘクトとの共同名義で発表されるため、個々の担当は分けて記されない。2015年のロイヤル・デザイナー・フォー・インダストリーへの選出は、工業デザインの分野で女性が同称号を受けた例として言及される。
受賞・収蔵
受賞
- 2015年 ロイヤル・デザイナー・フォー・インダストリー(英国王立芸術協会)
収蔵
以下の収蔵が確認できる(V&A=ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館)。
- V&A ブランカ チェア(2010年) 収蔵番号 W.17-2011
作品一覧
いずれもサム・ヘクトとの共同設計による。
| 発表年 | 区分 | 作品名 | ブランド |
|---|---|---|---|
| 2010年 | 椅子 | ブランカ チェア | Mattiazzi |
| 2013年 | オフィス家具 | ローカル オフィスシステム | Herman Miller |
| 2000年代〜 | 各種 | 無印良品のための製品(50点以上) | 無印良品 |
| 2010年代 | 家具 | ヘイのための家具 | HAY |
| 2010年代 | 家具 | ムート のための家具 | Muuto |
| 2021年 | 椅子 | スリング ラウンジチェア | Takt |
プロフィール
| 生年 | 1961年 |
|---|---|
| 出身地 | アメリカ・ロサンゼルス |
| 国籍 | アメリカ/イギリス |
| 活動拠点 | ロンドン |
| 分野 | 家具、オフィス家具、日用品 |
| 主な協働ブランド | Herman Miller、無印良品、Mattiazzi、HAY、Muuto、Takt |
Reference
- Industrial Facility(公式)
- https://www.industrialfacility.co.uk/
- Industrial Facility | Herman Miller
- https://www.hermanmiller.com/designers/
- Industrial Facility | Mattiazzi
- https://www.mattiazzi.eu/designers
- Branca Chair | Victoria and Albert Museum
- https://collections.vam.ac.uk/