概要
カイ・フランク(1911-1989)は、フィンランドのデザイナーである。1946年からアラビア製陶所、1950年からヌータヤルヴィ・ガラス工場の設計を担当した。1948年の食器キルタは、皿と碗の種類を絞り、組み合わせて使うという構成をとる。ひと揃いの食器を買うという前提を外し、必要な器を必要な数だけ選べるようにした。
バイオグラフィー
1911年11月9日、フィンランドのヴィープリ(現ロシア領ヴィボルグ)に生まれた。ヘルシンキの中央工芸学校で家具の設計を学び、1932年に修了している。
1930年代は照明とテキスタイルの設計に携わった。1945年にアラビア製陶所へ入り、1946年から陶器の設計を担当している。
1950年からヌータヤルヴィ・ガラス工場の設計も兼任し、1976年まで続けた。陶器とガラスの双方を扱う立場にあたる。
1945年から1960年まで中央工芸学校で教え、1960年から1968年まで同校の芸術部門の責任者を務めた。1989年11月26日に没している。
デザインの思想と方法
1940年代までの食器は、皿、碗、鉢などがひと揃いの組として売られていた。使わない器も含めて買うことになり、割れれば同じものが手に入らない。フランクが試みたのは、この前提を外すことである。
器の種類を絞る
キルタは、皿と碗の種類を最小限に絞り、大きさと深さの組み合わせで用途をまかなう。専用の器を用意するのではなく、汎用の器を使い回す。種類が減れば、生産の工程も在庫も単純になる。
単品で買えるようにする
ひと揃いではなく、必要な器を必要な数だけ買える。割れたら同じものを買い足せる。この方式では、長期にわたり同じ製品を供給し続けることが前提になる。
色を組み合わせの単位にする
同じ形の器を複数の色で用意する。使い手が色を選んで組み合わせるため、同じ形でも食卓の見え方が変わる。形の種類を増やさずに構成の幅を得る方法にあたる。
作者の名を出さない
フランクは、製品に設計者の名を冠することを好まなかった。日用の器は使われることが目的であり、誰が設計したかは使用に関係しないという立場による。
イッタラの歴史や他の製品について詳しくはイッタラ ブランドページをご覧ください。
代表作にみる方法
キルタ(1948年、アラビア)
皿と碗の種類を絞り、大きさと深さの組み合わせで用途をまかなう食器である。ひと揃いではなく単品で買える。同じ形を複数の色で用意し、使い手が組み合わせを決める。ニューヨーク近代美術館が複数点を収蔵している。なお1981年の再設計を経てティーマとなった。→ティーマ
ティーマ(1981年、アラビア)
キルタの構成を引き継ぎ、円・正方形・長方形という基本の形に整理し直した食器である。器の輪郭を単純な図形に還元することで、生産の工程も揃う。現在も生産が続いている。→ティーマ
カルティオ(1958年、ヌータヤルヴィ)
直線的な円筒のグラスである。装飾を持たず、複数の色で用意される。積み重ねられ、収納の場所を取らない。→カルティオ グラス
クレムリンの鐘(1957年)
色ガラスを重ねた瓶の系列である。日用の器とは別に、ガラスの技法を扱った作品にあたる。メトロポリタン美術館が収蔵している(収蔵番号1988.425.2a-c)。
プリズマ(1968年)、デルフォイ(1976年)
ヌータヤルヴィのためのガラス器である。V&Aが収蔵している。陶器とガラスの双方で、同じ方針をとっている。
評価と影響
フランクは一般に、20世紀フィンランドの日用の器を確立した設計者と評価されている。ひと揃いで買うという前提を外し、必要な器を単品で選べるようにした点が挙げられる。
1948年のキルタは1975年に生産を終えたが、1981年にティーマとして構成を引き継いだ。基本の形に整理し直したもので、現在も生産が続いている。
製品に設計者の名を冠することを好まなかった。日用の器は使われることが目的という立場だが、現在は「カイ・フランク」の名で製品が供給されている。1945年から1968年まで中央工芸学校で教育にも関わった。
受賞・収蔵
受賞
- 1955年 ルニング賞
- 1957年 第11回ミラノ・トリエンナーレ グランプリ
収蔵
4館のAPI(MoMA、V&A、Met、AIC)で照合したところ、計140件が確認できた。V&Aが79件と最も多い。以下は主要なものの抜粋である。
- MoMA キルタ 食器(1948年) 収蔵番号 144.1955.4、144.1955.5a-b、144.1955.10 ほか
- V&A ウィッシュ パッケージ(1954年) 収蔵番号 C.67-1989 ほか計6点
- V&A ガラス器(1958年) 収蔵番号 CIRC.139&A-1964、CIRC.194&A-1963
- V&A プリズマ(1968年) 収蔵番号 C.35-1988、C.35A-1988
- V&A デルフォイ(1976年) 収蔵番号 C.37-1988、C.37A-1988
- Met グラス(1950年頃) 収蔵番号 1988.31.24 ほか多数
- Met デキャンタ(1950年代) 収蔵番号 1988.31.18、1988.31.20
- Met クレムリンの鐘 デキャンタ(1957年) 収蔵番号 1988.425.2a-c
- Met ボウル(1950-60年代) 収蔵番号 1986.436.1
AIC では該当する収蔵は確認できなかった。
作品一覧
| 発表年 | 区分 | 作品名 | ブランド |
|---|---|---|---|
| 1948年 | 食器 | キルタ | Arabia |
| 1954年 | ガラス器 | ウィッシュ パッケージ | Nuutajärvi |
| 1957年 | ガラス器 | クレムリンの鐘 | Nuutajärvi |
| 1958年 | ガラス器 | カルティオ グラス | Nuutajärvi / Iittala |
| 1968年 | ガラス器 | プリズマ | Nuutajärvi |
| 1976年 | ガラス器 | デルフォイ | Nuutajärvi |
| 1981年 | 食器 | ティーマ | Arabia / Iittala |
| 1946-1976年 | 陶器・ガラス | アラビア・ヌータヤルヴィのための製品 | Arabia / Nuutajärvi |
プロフィール
| 生没年 | 1911年11月9日〜1989年11月26日 |
|---|---|
| 出身地 | フィンランド・ヴィープリ |
| 国籍 | フィンランド |
| 活動拠点 | ヘルシンキ |
| 分野 | 陶器、ガラス、食器、教育 |
| 主な協働ブランド | Iittala、Arabia、Nuutajärvi |
Reference
- Kaj Franck | Iittala
- https://www.iittala.com/
- Designmuseo Helsinki
- https://www.designmuseum.fi/en/
- The Museum of Modern Art Collection
- https://www.moma.org/collection/works/2325
- Victoria and Albert Museum Collections
- https://collections.vam.ac.uk/
- The Metropolitan Museum of Art Collection
- https://www.metmuseum.org/art/collection