概要
ハイメ・アジョン(1974年生まれ)は、スペインのデザイナーである。デッサンを設計の起点に置き、生き物や登場人物を思わせる輪郭を家具や器物に与える。セラミック、ガラス、木といった手作業の工程が残る材料を選び、産地の工房と組んで製作する仕事が多い。フリッツ・ハンセン、カッシーナ、BDバルセロナ、リヤドロなどと協働している。
バイオグラフィー
1974年9月4日、マドリードに生まれた。10代にはスケートボードとグラフィティに関わっている。マドリードのヨーロッパデザイン学院(IED)で工業デザインを学び、パリの国立高等装飾美術学校(ENSAD)でも学んだ。
1997年、23歳でイタリア・トレヴィーゾのファブリカに研究員として加わり、まもなくデザイン部門の責任者となった。
2000年に自身のスタジオを設立し、2003年にファブリカを離れて独立する。同年、ロンドンのデイヴィッド・ギル・ギャラリーで最初の個展を開いた。
現在はバレンシアを主な拠点とし、バルセロナとトレヴィーゾにもスタジオを置く。2021年にスペイン国家デザイン賞を受けた。
デザインの思想と方法
アジョンの設計は、手で描いた線から始まる。図面や三次元の作図ではなく、輪郭を紙の上で決めてから、それを成立させる材料と工程を探す。生き物や人の姿を思わせる形が繰り返し現れるのは、この順序の帰結である。
輪郭を先に決める
デッサンで決まるのは全体の輪郭と部位の比率であり、構造や寸法は後から詰められる。この順序をとると、既存の家具の類型に収まらない形が先に出る。ショータイムの椅子が壺のような外形をとるのも、座具の型から出発していないためである。
手作業の残る工程を選ぶ
セラミック、吹きガラス、木の削り出しといった工程は、機械化された成形に比べて個体差が出る。アジョンはこの差を許容する材料を選び、産地の工房と組んで製作する。リヤドロの磁器、ボサの陶器、バカラのクリスタルはいずれもこの方針にあたる。
外殻と内側で性格を変える
2011年のファヴンは、外側を硬い殻として成形し、内側に柔らかい張りを収める。外から見た輪郭は閉じた形をとるが、座ると身体は柔らかい面に接する。二つの層で異なる性格を担わせる構成にあたる。
参照元を形に翻訳する
2015年のレアクシオン・ポエティックは、ル・コルビュジエの絵画に現れる形を、黒く着色したアッシュ材の器物に置き換えた一群である。建築や絵画の輪郭を、卓上の寸法で成立する形に移し替えている。
フリッツ・ハンセンの歴史や他の製品について詳しくはフリッツ・ハンセン ブランドページをご覧ください。
代表作にみる方法
ショータイム コレクション(2006年)
BDバルセロナのために設計した一群である。椅子は座面から立ち上がる外殻が高く閉じ、外から見ると容器のような輪郭をとる。座具としての機能は内側で満たされ、外形は別の論理で決まっている。座る位置が外から見えにくいため、置いたときの見え方が通常の椅子と異なる。→ショータイム アームチェア
ファヴン(2011年)
フリッツ・ハンセンのために設計した長椅子である。外殻を一続きの曲面として成形し、内側に張り込んだクッションを収める。デンマーク語で「抱擁」を意味する名のとおり、背から肘掛けへ回り込む面が座る人を囲う。外殻と内張りで性格を分ける構成が明確に現れている。
ザ・ゲスト(2012年)
リヤドロのために設計した磁器の人形の系列である。同じ形を基本としながら、表面の絵付けを変えることで個体の性格が変わる。形は一つ、表面は複数という構成をとり、産地の絵付けの工程をそのまま製品の幅に変換している。
レアクシオン・ポエティック(2015年)
カッシーナのために設計した木の器物の系列である。ル・コルビュジエの絵画に現れる形を参照し、黒く着色した無垢のアッシュ材で削り出した。ル・コルビュジエ没後50年と、同社のLCコレクション50周年に合わせて発表されている。
グリーンチキン(BDバルセロナ)
鶏の姿を思わせる輪郭を持つ器物である。用途は限定されず、置く物としての性格が強い。デッサンで決めた輪郭をそのまま立体化するという進め方が、最も直接に現れた例にあたる。→グリーンチキン
評価と影響
アジョンは一般に、2000年代以降のスペインのデザインを国際的な文脈に置いた設計者の一人と評価されている。機能から形を導く方向とは異なり、輪郭を先に決めてから成立させる進め方が特徴として挙げられる。
産地の工房と組む仕事が多く、セラミックやガラスといった手作業の工程が残る分野で、量産品との中間にあたる製品を継続して出している。リヤドロ、ボサ、バカラ、ナニマルキーナといったメーカーとの協働がこれにあたる。
家具のほか、店舗の内装や大規模な設置物も手がけている。2019年にはオーストリアのスワロフスキー・クリスタルヴェルテンに、回転木馬を設置した。
受賞
- 2008年 ベルギー・インテリア・ビエンナーレ ゲスト・オブ・オナー
- 2010年 メゾン・エ・オブジェ デザイナー・オブ・ザ・イヤー
- 2021年 スペイン国家デザイン賞
4館のAPI(MoMA、V&A、Met、AIC)で照合したが、該当する収蔵は確認できなかった。
作品一覧
| 発表年 | 区分 | 作品名 | ブランド |
|---|---|---|---|
| 2006年 | 椅子 | ショータイム アームチェア | BD Barcelona |
| 2006年 | 照明 | ジョセフィーヌ シリーズ | Metalarte |
| 2007年 | 陶器 | アジョン ヴェース コレクション | Bisazza |
| 2009年 | クリスタル | クリスタル キャンディ セット | Baccarat |
| 2010年 | 椅子 | ピニャ ファミリー | Magis |
| 2011年 | ソファ | ファヴン(JH3) | Fritz Hansen |
| 2012年 | 磁器 | ザ・ゲスト コレクション | Lladró |
| 2014年 | 陶器 | ホープ・バード | Bosa |
| 2015年 | 椅子 | ロー ラウンジチェア(JH1, JH2) | Fritz Hansen |
| 2015年 | 木製オブジェ | レアクシオン・ポエティック | Cassina |
| 2016年 | ラグ | アジョン × ナニ | nanimarquina |
| 2018年 | 椅子 | ミラ チェア | Magis |
| 2019年 | 設置物 | スワロフスキー カルーセル | Swarovski Kristallwelten |
| 2024年 | ソファ | ルーン ソファ | Fritz Hansen |
| 器物 | グリーンチキン | BD Barcelona |
プロフィール
| 生年 | 1974年9月4日 |
|---|---|
| 出身地 | スペイン・マドリード |
| 国籍 | スペイン |
| 活動拠点 | バレンシア、バルセロナ、トレヴィーゾ |
| 分野 | 家具、照明、セラミック、ガラス、インテリア |
| 主な協働ブランド | Fritz Hansen、Cassina、BD Barcelona、Magis、Lladró、Baccarat、nanimarquina |
Reference
- Hayon Studio(公式)
- https://www.hayonstudio.com/
- Jaime Hayon | Fritz Hansen
- https://fritzhansen.com/en/designers/jaime-hayon
- Jaime Hayon | BD Barcelona
- https://bdbarcelona.com/en/designers/jaime-hayon
- Jaime Hayon | Cassina
- https://www.cassina.com/ww/en/designers/jaime-hayon.html