概要
インガ・センペ(1968年生まれ)は、フランスのデザイナーである。1993年に国立高等産業創造学校(ENSCI)を修了し、マーク・ニューソンのもとで働いたのち独立した。布にプリーツを寄せて面をつくる手法を照明と家具に用いる。技術的な仕組みは外から見えない位置に収め、形は単純に保つという構成をとる。
バイオグラフィー
1968年、パリに生まれた。父は挿絵画家のジャン=ジャック・センペ、母はデンマーク出身のグラフィックデザイナーである。
1993年、パリの国立高等産業創造学校(ENSCI-Les Ateliers)を修了した。1994年からマーク・ニューソンのもとで働き、製品を生産に載せる工程を学んでいる。
2000年から2001年にかけて、ローマのフランス・アカデミー(ヴィラ・メディチ)の給費研究員として滞在した。この期間にプリーツと素材の実験を進めている。
帰国後にパリで自身のスタジオを設立した。リーニュ・ロゼ、ヘイ、アルテミデ、マジス、ヴェストベリなどのために設計を行っている。2024年にはミラノ・トリエンナーレで展覧会「La Casa Imperfetta」が開かれた。
デザインの思想と方法
センペは、設計を美的な着想から始めないと述べている。まず何が必要かを決め、それを満たす構成を探す。形はその結果として現れるもので、先に決めるものではない——この順序が仕事の前提にある。
布を折って面をつくる
プリーツを寄せた布は、平らな布より張りが出て、光を通しながら形を保つ。照明のシェードに用いると、拡散面と構造を兼ねられる。折りの間隔と深さで透過の度合いが変わるため、布の加工そのものが配光を決める。
仕組みを見せない
可動や調整の機構は、外から見えない位置に収める。w153 Îleは机の縁に留める照明だが、留め具は本体に組み込まれ、外形は単純な円筒に近い。技術的な複雑さと形の単純さを両立させるという方針にあたる。
中間の色を使う
センペは、色の選択が原色に寄りがちであることを問題としてきた。彼女が用いるのは、複数の色を混ぜた中間の色である。単独では特徴を説明しにくいが、複数を並べたときに互いを打ち消さない。
完全さを目標にしない
2024年の展覧会「La Casa Imperfetta(不完全な家)」で示されたのは、均質さや完成度を目標としない立場である。使用の痕跡や不揃いを排除しない構成をとる。
ヘイの歴史や他の製品について詳しくはヘイ ブランドページをご覧ください。
代表作にみる方法
モエル アームチェア(2007年、リーニュ・ロゼ)
熱成形したABS樹脂の殻に、布を張り込んだ椅子である。殻は上部に向かって広がり、身体を左右から囲う。硬い殻と柔らかい張り地という二層の構成をとり、それぞれの役割が分かれている。
ルーシェ コレクション(2010-2014年、リーニュ・ロゼ)
細いブナ材の枠に、キルティングを施した布を掛ける座具の系列である。フランスの庭園で使われるブランコ式の座席を参照している。布は枠に吊られており、張り込まれていない。取り外して洗えるという条件も満たしている。
w103 センペ ランプ(2010年、ヴェストベリ)
工作機械の照明と画鋲を参照した卓上灯である。単純な形で、堅牢であることを条件とした。可動の関節は最小限に抑えられ、外形からは仕組みが読み取れない。
マタン ランプ(2019年、ヘイ)
プリーツを寄せた綿のシェードを持つ照明の系列である。折りの間隔で光の透過が変わり、布そのものが拡散面として働く。卓上、床置き、吊り下げ、壁付けと展開され、いずれも同じシェードの構成をとる。
ヴィトライユ ミラー(2018年、マジス)
幾何学的に分割した透明ガラスと色ガラスを組み合わせた鏡である。ステンドグラスの割付を参照しているが、図像は持たない。色ガラスの部分は像を映さないため、鏡としての面積は分割によって決まる。
評価と影響
センペは一般に、2000年代以降のフランスのデザインにおいて、必要から形を導く方向を代表する設計者と評価されている。装飾を排する立場とも、造形を主題とする立場とも異なる位置にある。
布にプリーツを寄せて拡散面と構造を兼ねさせる手法は、彼女の仕事を特徴づけるものとして繰り返し言及される。素材の加工そのものが機能を担うという構成にあたる。
2024年のミラノ・トリエンナーレでの展覧会「La Casa Imperfetta」は、完成度や均質さを目標としない立場を示すものとして扱われた。
収蔵
4館のAPI(MoMA、V&A、Met、AIC)で照合したが、該当する収蔵は確認できなかった。フランス国内の館については照合手段がない。
作品一覧
| 発表年 | 区分 | 作品名 | ブランド |
|---|---|---|---|
| 2007年 | 椅子 | モエル アームチェア | Ligne Roset |
| 2010年 | 照明 | w103 センペ ランプ | Wästberg |
| 2010-2014年 | 座具 | ルーシェ コレクション | Ligne Roset |
| 2010年代 | 照明 | w153 Île | Wästberg |
| 2018年 | ミラー | ヴィトライユ ミラー | Magis |
| 2019年 | 照明 | マタン ランプ シリーズ | HAY |
| 2010年代 | 照明 | アルテミデのための照明 | Artemide |
| 2020年代 | 家具 | ヘイのための家具 | HAY |
プロフィール
| 生年 | 1968年 |
|---|---|
| 出身地 | フランス・パリ |
| 国籍 | フランス |
| 活動拠点 | パリ |
| 分野 | 照明、家具、テキスタイル |
| 主な協働ブランド | HAY、Ligne Roset、Artemide、Magis、Wästberg |
Reference
- Inga Sempé(公式)
- https://www.ingasempe.fr/
- Inga Sempé | HAY
- https://hay.dk/en/hay/designers/inga-sempe
- Inga Sempé | Ligne Roset
- https://www.ligne-roset.com/en/designers
- Triennale Milano
- https://triennale.org/en