バイオグラフィー

ハンネス・ヴェットシュタイン(Hannes Wettstein)は、1958年3月10日、スイスのアスコーナに生まれた。20世紀後半から21世紀初頭にかけて活躍したスイスを代表する工業デザイナー、建築家として、その名を刻んでいる。

ヴェットシュタインの経歴は型破りなものだった。建築製図士(Hochbauzeichner)としての徒弟制度を修了した後、展示会場の設営工として働き始めた。しかし彼は正規のデザイン教育を受けることなく、独学でデザイナーおよび建築家としての技術を習得していった。この独自の学習経路が、後の革新的なアプローチの礎となったのである。

1980年代初頭、ヴェットシュタインは独立してデザイナーとしてのキャリアをスタートさせた。彼の最初の大きな成功は1982年、スイスの照明メーカーBeluxのために設計した照明システム「Metro」であった。これは世界初のワイヤーに張られた低電圧照明システムであり、業界に革命をもたらした。この作品により、若きデザイナーは国際的な注目を集めることとなった。

1987年には、イタリアの家具メーカーBaleri Italiaとの協働が始まった。フィリップ・スタルクの紹介により創業者エンリコ・バレリと出会ったヴェットシュタインは、創造的な試練を経て20年に及ぶ実りある関係を築くこととなる。バレリは当時を回顧して語っている。「私は彼にベルガモ郊外の丘に住んでいると告げ、住所も電話番号も教えなかった。24時間以内に私を見つけられたらデザインを見てやると言ったのだ。翌日、彼は私の玄関のベルを鳴らした。」この逸話は、ヴェットシュタインの粘り強さと情熱を物語っている。

1991年は、ヴェットシュタインのキャリアにおける重要な転換点となった。彼はチューリッヒに学際的なデザインスタジオ「Zed」を設立し、デザイナーとして、そして建築家として本格的に活動を展開し始めた。このスタジオは、家具から照明、時計、眼鏡、音響機器に至るまで、幅広い製品デザインを手がけ、企業のアイデンティティ構築や建築プロジェクトにも携わった。

デザイナーとしての活動と並行して、ヴェットシュタインは教育者としても高い評価を得ていた。1991年から1996年まではチューリッヒ工科大学(ETH Zürich)で講師を務め、1994年から2001年まではカールスルーエ造形大学(Staatliche Hochschule für Gestaltung Karlsruhe)で教授として後進の育成に尽力した。

1993年には、ヴェットシュタインはデザイングループ「9D Design」の共同創設者の一人となり、協働的なデザインアプローチの可能性を追求し続けた。

2008年7月5日、ハンネス・ヴェットシュタインは長い闘病の末、チューリッヒで50歳という若さでこの世を去った。彼の死後、スタジオはビジネスパートナーであったシュテファン・ヒュルレマン(Stephan Hürlemann)により「Studio Hannes Wettstein AG」として継続され、2016年に「Hürlemann AG」と改名された。今日もなお、彼のデザイン哲学と遺産は、このスタジオを通じて受け継がれ、新しいプロジェクトと既存作品の管理が行われている。

ヴェットシュタインのキャリアは約30年間という短いものであったが、その間に彼は合計347のプロジェクトを記録に残し、現代デザインの概念形成に多大な影響を与えた。彼の作品は世界中の美術館やコレクションに所蔵され、今日なお多くの製品が生産され続けている。

デザインの思想とアプローチ

本質の探求と規範への挑戦

ハンネス・ヴェットシュタインのデザイン哲学の核心は、あらゆる既存の規範に疑問を投げかけ、物事の本質を理解しようとする姿勢にあった。彼自身の言葉によれば、「社会的、工業的、文化的、儀式的を問わず、すべての規範に疑問を投げかけることで、新しいものを再発明できる」のである。この包括的な姿勢は単なる態度ではなく、彼のデザイン手法そのものであった。

ヴェットシュタインは自らを「アナーキスト」と称し、境界を破り、常識に挑戦することを恐れなかった。彼のアプローチは、日常的な行動、空間の組織化、物の目的など、デザインによって規定されるすべてを絶えず再考する開放性によって特徴づけられた。この探究心が、時代を超えて存続する驚くほどシンプルな解決策へと導いたのである。

機能美と本質主義

ヴェットシュタインのデザイン言語は、純粋で、派手さを抑え、機能的であることを特徴としていた。彼は繰り返し洗練された形態と古典的なモダンラインに立ち返った。これらの特徴は、彼の世界観と社会観に合致するものであり、時代に先駆けて、自明のデザインのみが永続性を持つことを理解していた。

彼は次のように述べている。「質素に生きたい者は、価値あるものを買う」。この言葉は、ヴェットシュタインのデザイン哲学を端的に表現している。一時的な流行に流されることなく、本質的な価値と品質を重視し、長く使い続けられる製品を創造することこそが、真のデザイナーの責務であると考えていたのである。

ヴェットシュタインがデザインした機能的な物体は、その優雅さと完璧さにより独自のアイデンティティを獲得し、一時的な流行が決して到達できない次元に達していた。彼のデザインは、瞬間的な魅力ではなく、時間の試練に耐えうる永続的な美しさを追求していたのである。

アーキタイプの創造

空間デザインにおいても、ヴェットシュタインは「アーキタイプ(原型)」の創造を追求した。場所特有で繊細な全体的解決策、インテリアフィッティング、セットデザインなど、彼の空間作品は単なる機能的空間を超えた、本質的な美しさと完全性を備えていた。

ベルリンのグランド・ハイアット・ホテル、ワシントンDC、テヘラン、スペインのスイス大使館のインテリアデザイン、スイステレビのスタジオセットデザイン、フランクフルト空港の小売エリアの再設計など、彼の空間デザインプロジェクトは多岐にわたる。これらすべてに共通するのは、空間の本質を理解し、その場所に最適な解決策を提供するという姿勢であった。

技術革新と素材の探求

ヴェットシュタインは技術開発と芸術史、建築に同等に魅了されていた。彼のアイデア開発の方法には、常に錬金術や発明のような要素があった。デザイン抵抗性のある分野からの技術移転、アイデアや素材についての長年にわたる科学的研究、そしてブランド品質への鋭敏な感覚が、彼の世界を形成していた。

特筆すべきは、彼が有機EL(OLED)技術の初期段階から実験を行っていた先駆者の一人であったことである。新しい技術を恐れず、むしろ積極的に取り入れ、デザインの可能性を拡張しようとする姿勢は、ヴェットシュタインのキャリア全体を通じて一貫していた。

また、窒素硬化チタン(Titanox)や硬化スチール(Durinox)といった革新的な素材を時計デザインに採用するなど、素材の特性を深く理解し、それを最大限に活かすデザインを追求した。彼にとって素材は単なる媒体ではなく、デザインの本質を形作る重要な要素であった。

質への妥協なき追求

エンリコ・バレリは、ヴェットシュタインについて次のように語っている。「ハンネスは好奇心旺盛で、常に情報を求めていた。しかし、彼のデザインの最も重要な要素は品質であった。」

この質への徹底した追求こそが、ヴェットシュタインの作品を他と一線を画すものにしていた。見た目はシンプルで直截的であっても、その背後には厳格なデザインプロセスが存在した。細部に至るまで吟味され、機能性と美しさが完璧に統合された製品のみが、彼の名のもとに世に送り出されたのである。

作品の特徴

形態言語の一貫性

ヴェットシュタインの作品を特徴づける形態言語は、洗練されたミニマリズムと幾何学的な明快さにある。彼のデザインは過度な装飾を排し、本質的な要素のみで構成されている。直線と曲線の絶妙なバランス、比例の美しさ、視覚的な軽やかさが、彼の作品全体に通底する特徴である。

家具デザインにおいては、構造の明確さと機能の最適化が追求された。JulietteチェアやCapriアームチェアに見られる積層可能性と人間工学的配慮、Globeベッドの幾何学的純粋性、Holaチェアの翼状の背もたれとシャープに傾斜した後脚など、各デザインは形態と機能の完璧な統合を示している。

光のセマンティクス

照明デザインにおいて、ヴェットシュタインは「光のセマンティクス(意味論)」という概念を提唱した。光は明るさと暗さ、集中した光線や壁面への反射など、様々な形で感じ取り、体験することができる。彼の照明デザインは、単なる照明器具ではなく、空間における光の体験そのものをデザインしようとする試みであった。

1982年のMetro照明システムは、ワイヤーケーブルシステムに取り付けられた柔軟に配置可能な低電圧照明として、照明業界に革命をもたらした。30年以上経った今日でも、その後継製品が開発され続けていることが、このデザインの先見性を証明している。

時計デザインにおける革新

時計デザインにおいて、ヴェットシュタインは表面的なシンプルさの背後に高度な技術と洗練を隠す手法を確立した。Venturaのために設計したV-maticコレクションは、窒素硬化チタンを用いた革命的なケースと機械式ムーブメントを特徴とし、1990年代半ばにはスイス公認クロノメーター(COSC)製造者トップ10の一つとなった。

また、キネティックエネルギーを利用した自動巻き電子時計SPARC MGSは、着用者の手首の動きを捉えるマイクロジェネレーターシステムを搭載し、2011年にGOOD DESIGN賞(日本)、2012年にRed Dot「Best of Best」賞を受賞した。

彼の最後の時計デザインとなったNOMOS Zürichは、2008年に完成した。一見シンプルで丸いケース形状に見えるが、ラグとベゼルの間の小さな空間、わずかに内側にカーブしたラグ、ケースからリューズへのテーパー形状など、細部に至るまで洗練されたデザインが施されている。この時計は、故郷チューリッヒへのオマージュとして、ヴェットシュタインの名を冠して名付けられ、彼の遺産を永遠に刻むこととなった。

学際的デザインアプローチ

ヴェットシュタインの作品領域は驚くほど広範囲に及んだ。家具、照明、時計だけでなく、医療機器から双眼鏡、マッサージチェアから万年筆まで、日常生活のあらゆる製品をデザインした。協働企業には、Bosch、Brionvega、Lamy、Carl Zeiss、Shimano、Artemideなど、各分野の一流メーカーが名を連ねている。

この学際的アプローチこそが、ヴェットシュタインのデザインスタジオ「Zed」の本質であった。企業デザイン、インテリア、建築を横断し、製品デザインからコミュニケーションデザイン、工業デザインまで、総合的なデザインサービスを提供する姿勢は、彼のデザイン哲学そのものの表れであった。

主要代表作品

Metro照明システム(1982年、Belux)

ヴェットシュタインの名を世界的に知らしめた最初の作品が、1982年にBeluxのために設計したMetro照明システムである。これは世界初のワイヤーケーブルに張られた低電圧照明システムであり、照明デザインにおける革命的な発明であった。

従来の固定式照明とは異なり、Metroシステムは水平に張られた2本のワイヤーケーブルに照明器具を取り付けることで、極めて柔軟な配置と調整を可能にした。このシステムは産業的でありながら洗練されており、オフィス、ショールーム、住宅など幅広い空間に適応できる汎用性を持っていた。

30年以上経った2010年代に、Beluxは後継製品「Hello」を発表した。ヴェットシュタインの元スタジオを継承したシュテファン・ヒュルレマンは、電話のコイルケーブルからヒントを得て、構造的に静的要素と電力線を分離することで、単一のテンションケーブルのみを使用する新システムを開発した。これは、ヴェットシュタインのデザイン哲学が今日でも発展し続けていることを示している。

Julietteチェア(1987年、Baleri Italia)

30歳になる前にデザインしたJulietteチェアは、ヴェットシュタインの最もよく知られた家具デザインの一つとなった。この軽量スタッキングチェアは、シンプルな形態と優れた機能性を兼ね備え、Baleri Italiaの代表的製品となった。

Julietteチェアのデザインは、ミニマリズムの本質を体現している。無駄な装飾を一切排除し、構造的に必要な要素のみで構成されながら、座り心地と美的魅力を損なうことがない。積層可能な設計により、商業空間での使用にも適しており、機能性と美しさの完璧な統合を実現している。

Capriアームチェア(1990年、Baleri Italia)

1990年にデザインされたCapriアームチェア(Caprichairとも呼ばれる)は、ヴェットシュタインとBaleri Italiaの協働における最大の商業的成功を収めた作品である。このボックス状のアームチェアは、幾何学的な明快さと快適性を両立させ、同社のベストセラー製品となった。

1992年にはMD Du Pont Top Ten賞を受賞し、1994年には産業デザイン界の最高栄誉であるCompasso d'Oro賞の佳作に選出された。この作品は、ヴェットシュタインの成熟したデザイン言語を示すものであり、形態と機能の調和が完璧に達成されている。

Globeベッド(2000年、Cassina)

1994年から協働を開始したCassinaとの関係において、Globeベッドは象徴的な作品となった。このベッドは幾何学的純粋性と彫刻的美しさを持ち、寝室空間における芸術作品のような存在感を放っている。

Cassinaのために他にもJunoベッド(1994年)、Holaチェアシリーズ(2003年-)など、数多くの作品をデザインし、イタリアデザイン界における重要なデザイナーとしての地位を確立した。

Holaチェア(2003年、Cassina)

2003年にCassinaのためにデザインしたHola 367チェアは、翼状の背もたれが短いアームレストとして機能する独創的な構造を持つ。シャープに傾斜した後脚により、チェア全体が前傾姿勢を示し、使用者に警戒心と集中力を促すかのような印象を与える。

後に、プラスチック版(Hola Sprint、2005年)、アームレストなし版(Hola 369、2006年)などのバリエーションが開発され、多様なニーズに対応できるシリーズへと発展した。ポリウレタンフォームのパッディングとレザーの取り外し可能なカバーにより、快適性と実用性を両立している。

Alfaチェア(2000年、Molteni&C)

Molteni&Cとの協働により生まれたAlfaチェアは、現代的な洗練さと時代を超えた美しさを兼ね備えた作品である。ヴェットシュタインはMolteni Groupのために、この他にもReversiシリーズ(2003年)など複数の製品をデザインし、イタリアの高級家具市場における存在感を示した。

Velaチェア(2005年、Accademia)

Accademiaのためにデザインしたチェアコレクション「Vela」は、2006年にRed Dot Design賞を受賞した。この作品もまた、ヴェットシュタインの洗練されたデザイン言語と機能美への追求を示している。

Tototoチェア(2007年、Maxdesign)

晩年にMaxdesignのためにデザインしたTototoチェアは、2008年にシカゴ・アテナエウムのGood Design賞を受賞した。シンプルでありながら革新的なこのデザインは、ヴェットシュタインが最後まで創造力を失わなかったことを証明している。

Nomisキッチン(2002年、Dada)

2002年にDadaのためにデザインしたNomisキッチンシステムは、ヴェットシュタインのキャリアにおける最高の栄誉の一つをもたらした。このキッチンデザインは、2004年に第30回Compasso d'Oro賞を受賞し、彼の多才さとインテリア建築における卓越性を世界に示した。

Nomisキッチンは、機能性、美学、革新性の完璧な統合を実現している。モジュラーシステムにより多様な空間に対応できる柔軟性を持ちながら、一貫した美的統一性を保っている。この作品により、ヴェットシュタインは家具デザイナーとしてだけでなく、総合的な空間デザイナーとしての地位を不動のものとした。

Lamyペンデザイン

ドイツの筆記具メーカーLamyとの協働において、ヴェットシュタインは複数のペンコレクションをデザインした。2000年の「Scribble」、2005年の「Studio」シリーズは、いずれも彼の製品デザイン哲学を筆記具に応用したものであった。

これらのペンは、握りやすさと書きやすさという機能的要求と、美しい形態という審美的要求を高度に統合している。ブラッシュドメタルのボディとセラミック調のブラックファサードの組み合わせは、彼の時計デザインにも見られる特徴的なスタイルであり、製品カテゴリーを超えた一貫したデザイン言語を示している。

V-matic時計コレクション(1994-1996年、Ventura)

スイスの時計ブランドVenturaとの協働は、ヴェットシュタインの時計デザインにおける代表作を生み出した。1996年に発表されたV-maticシリーズは、機械式ムーブメントと革新的な窒素硬化チタン(Titanox)ケースを特徴とし、1990年代半ばにはスイス公認クロノメーター(COSC)製造者のトップ10に入る成功を収めた。

V-maticの革新的な「ドット式日付表示」は、デザインの簡潔性と機能性を両立させた傑作である。日付の十の位をドットで表現することで、数字を大きく表示でき、視認性を向上させながら、日付窓のデザインをすっきりと保つことができた。この独創的なアイデアは、後のNOMOS Zürichにも受け継がれている。

2002年にはV-tec Alphaクロノグラフも発表され、さらに進化した時計デザインを提示した。硬化チタンブレスレットとの組み合わせは、耐久性と快適性を両立させ、実用的でありながら高級感のある仕上がりを実現している。

SPARC MGS自動巻き電子時計(2000年代、Ventura)

2000年代に入り、Venturaは機械式時計から高度な電子時計製造へと大胆な転換を図った。ヴェットシュタインが設計したSPARC MGS(マイクロジェネレーターシステム)時計は、この革新的な方向性を象徴する製品となった。

SPARC MGSは、着用者の手首の動きによって生じるキネティックエネルギーを、マイクロジェネレーターで電気エネルギーに変換し、時計を駆動するという画期的なシステムを採用している。電池を必要とせず、人間のエネルギーのみで動作するこのエコフレンドリーな時計は、2011年にGOOD DESIGN賞(日本)、2012年にRed Dot「Best of Best」賞を受賞した。

続いて発表されたSPARC Sigma MGSは、2012年にGOOD DESIGN賞、2013年にRed Dot賞を受賞し、ヴェットシュタインの時計デザインにおける革新性が継続的に評価されていることを示した。

NOMOS Zürich時計(2008年)

ヴェットシュタインが生涯最後に手がけた時計デザインが、ドイツの時計ブランドNOMOS GlashütteのためのZürichであった。2008年、癌との長い闘いの末に彼が亡くなる直前に完成したこの時計は、彼の故郷チューリッヒにちなんで命名され、彼の遺産を永遠に刻むこととなった。

Zürichのケースデザインは、一見シンプルで丸い形状に見えるが、細部に至るまで洗練された工夫が施されている。ラグとベゼルの間の小さな空間は、ケースをセットされたダイヤモンドのように際立たせる。ラグはまっすぐに見えるが、実際にはわずかに内側にカーブしており、ケースからリューズへのテーパー形状は、この時計の「王冠」として機能している。

Zürich Weltzeit(ワールドタイム)モデルは、NOMOS自社製自動巻きムーブメントDUW 5201を搭載し、24のタイムゾーンを一度に表示できる。バウハウスにインスパイアされたミニマルなデザインは、NOMOSブランドのアイデンティティを完璧に尊重しながら、ヴェットシュタイン独自の精緻なデザインを統合している。

この時計は複数の賞を受賞し、39.9mm径のステンレスケース、ホワイトシルバーメッキダイヤル、そしてシカゴで鞣される世界最高級のコードバンレザーストラップの組み合わせにより、長く愛される現代の古典となっている。

インテリアデザインプロジェクト

ヴェットシュタインの才能は、製品デザインだけでなく、大規模なインテリアデザインプロジェクトにおいても発揮された。

グランド・ハイアット・ベルリン(1995-1998年):建築家ラファエル・モネオが設計したこのホテルの全インテリアデザインを担当。ホテル空間全体に一貫したデザイン哲学を浸透させ、機能性と美的洗練を両立させた。

スイス大使館(2002-2006年、ワシントンDC):建築家スティーヴン・ホール、Rüssli Architektenとの協働により、大使館レジデンスのインテリアデザインを担当。このプロジェクトは2007年、英国王立建築家協会(RIBA)からRIBA国際賞を受賞した。同様にテヘランとスペインのスイス大使館のインテリアも手がけている。

スイステレビのスタジオセット(2005-2008年):「Club」「SF Meteo」「Rundschau」「Schweiz aktuell」「SF-Sport」、そしてニュース番組「SF Tagesschau」と「10vor10」のセットデザインを担当。特にニュース番組のセットデザインは2006年にPromax金賞を受賞し、放送デザインにおける新たな基準を確立した。

その他の代表的プロジェクト

ヴェットシュタインの創造性は、さらに多様な分野に及んだ。Carl Zeiss社のための光学機器デザイン(2000-2008年)、EST社のための自転車デザイン(1997-2002年)、horgenglarus社のアートディレクション(1999-2008年)、宝飾店Kurz(チューリッヒとバーゼル)の店舗コンセプト(2004-2008年)、フランクフルト空港の小売エリア再設計など、生活のあらゆる側面にデザインの可能性を見出し、実現していった。

功績と業績

主要な受賞歴

ヴェットシュタインの50年の生涯において、彼が受けた数々の賞は、その卓越した才能と影響力を証明している。

1992年
MD Du Pont Top Ten賞(Caprichair)
1993年
MD Du Pont Top Ten賞(Mollyシステム、Baleri Italia)
1994年
Compasso d'Oro佳作(Caprichair)
2004年
Compasso d'Oro賞(Nomisキッチン、Dada) ― 産業デザイン界における最高栄誉
2006年
Promax金賞(スイステレビニュース番組「Tagesschau」と「10vor10」のセットデザイン)
Red Dot Design賞(Velaチェア、Accademia)
2007年
デンマーク誌「Bo Bedre」第1位(ソファコンセプト「EJ Delphi」、Erik Jørgensen)
RIBA国際賞 ― 英国王立建築家協会(ワシントンDCのスイス大使館プロジェクトチームの一員として。Steven Holl Architects、Rüssli Architektenと共同)
iF Design賞(Rivoアームチェア、Dietiker)
2008年
Good Design賞 ― シカゴ・アテナエウム(Tototoチェア、Maxdesign)
2011年
GOOD DESIGN賞 ― 日本(SPARC MGS時計、Ventura)
2012年
Red Dot「Best of Best」賞(SPARC MGS時計)
GOOD DESIGN賞(SPARC Sigma MGS時計)
2013年
Red Dot賞(SPARC Sigma MGS時計)

加えて、彼の作品は合計5回のRed Dot Design賞と5回のiF Design賞を受賞しており、継続的な革新性と卓越性が評価されている。

教育者としての貢献

ヴェットシュタインはデザイン実践者であると同時に、優れた教育者でもあった。1991年から1996年までチューリッヒ工科大学(ETH Zürich)で講師を務め、1994年から2001年までカールスルーエ造形大学(Staatliche Hochschule für Gestaltung Karlsruhe)で教授として後進の指導にあたった。

彼の教育アプローチは、自身のデザイン哲学を反映したものであった。規範に疑問を投げかけ、本質を探求し、機能と美の統合を追求する姿勢を、次世代のデザイナーたちに伝えていった。彼の教え子たちは、今日、ヨーロッパのデザイン界で活躍している。

記録されたプロジェクト

2011年にチューリッヒ工科大学(ETH Zürich)で開催された回顧展において、ヴェットシュタインが生涯に手がけた合計347のプロジェクトが初めて包括的に記録され、展示された。中央ホールに数百枚の手描きスケッチが巨大な投影スクリーンに映し出され、来場者をヴェットシュタインのデザイン世界へと引き込んだ。

展示された家具製品とインテリア建築プロジェクトの多くは、すでにデザインの古典として認識されており、彼のアーキタイプ追求が継続的に成功していたことを証明している。

出版物

2011年、Lars Müller Publishersから『Hannes Wettstein: Seeking Archetypes(ハンネス・ヴェットシュタイン:アーキタイプを求めて)』が出版された。この包括的なモノグラフは、彼の生涯の仕事を初めて書籍形式で記録したものである。

この書籍には、作品、スケッチ、個人的な物品の画像が収録され、その多様性が彼の創造的業績の本質を明らかにしている。包括的なカタログ・レゾネがヴェットシュタインの全作品の完全な概要を提供し、彼自身の引用、人生の逸話、エッセイ、デザインと建築界の著名人による声明が補完され、この卓越したデザイナーの多面的な肖像を提供している。

評価と後世への影響

スイスデザイン界における位置づけ

ハンネス・ヴェットシュタインは、スイスデザイン界における最も革新的で影響力のあるデザイナーの一人として認識されている。彼の独学による経歴は、規範に囚われない創造性の源泉となり、技術開発、芸術史、建築への広範な興味が、独特のデザインアプローチを形成した。

アルフレッド・ヘーベルリと並び、ヴェットシュタインはスイスデザインの重鎮として、次世代のデザイナーたちに大きな影響を与えた。モーリッツ・シュミット、ティス・ウェーバー、イェルク・ボナーなど、新世代のスイスデザイナーたちは、ヴェットシュタインのような巨匠の影から抜け出し、独自の道を歩み始めている。

国際的な影響力

ヴェットシュタインの影響は、スイス国内に留まらず、国際的なデザイン界に広く及んでいる。イタリアの一流家具メーカー(Cassina、Baleri Italia、Molteni&C、Arflex)、デンマークのErik Jørgensen、オーストリアのWittmann、ベルギーのBuloなど、ヨーロッパ各国のトップブランドとの協働により、現代家具デザインの方向性に影響を与えた。

特にイタリアデザイン界においては、Compasso d'Oro賞の受賞により、スイス人デザイナーとして最高の評価を得た。彼の作品は、イタリアデザインの伝統的な感性とスイスの精密さを融合させ、新たな美学を創造したと評価されている。

時計デザインへの貢献

時計デザインの分野において、ヴェットシュタインは建築家やインダストリアルデザイナーが時計をデザインする潮流の重要な担い手となった。Venturaとの協働により確立したデザイン言語は、洗練されたミニマリズムと技術革新の融合として高く評価されている。

NOMOS Zürichは、彼の最後の作品として特別な位置を占めている。この時計は、ヴェットシュタインの遺産を永続させるだけでなく、建築家やデザイナーによる時計デザインの可能性を示す象徴的存在となった。NOMASブランドのアイデンティティを尊重しながら独自の精緻なデザインを統合する能力は、真のデザインマスターの証であった。

機能主義デザインの再定義

ヴェットシュタインのデザイン哲学は、伝統的なスイス機能主義を再定義するものであった。単なる機能の最適化ではなく、「質素に生きたい者は、価値あるものを買う」という信念のもと、持続可能で長く愛される製品を創造することを目指した。

彼のデザインは、一時的な流行に左右されることなく、時間の試練に耐えうる普遍性を持つ。これは、ヴェットシュタインが追求した「自明のデザイン」の本質であり、今日の持続可能なデザインの考え方に通じるものである。

継承される遺産

ヴェットシュタインの死後、彼のスタジオはビジネスパートナーであったシュテファン・ヒュルレマンにより継承された。「Studio Hannes Wettstein AG」(2016年に「Hürlemann AG」と改名)は、新しいプロジェクトと既存作品の管理のバランスを取りながら、彼の芸術的・デザイン的遺産を守り続けている。

ヒュルレマンは、Beluxの照明システム「Hello」の開発において、ヴェットシュタインの「Metro」システムの思想を発展させ、単一テンションケーブルのみを使用する革新的なシステムを実現した。これは、ヴェットシュタインのデザイン哲学が今日も生き続け、進化していることを示している。

現代デザインへの示唆

ヴェットシュタインの作品と哲学は、21世紀のデザイナーたちに重要な示唆を与え続けている。持続可能性、本質主義、品質への妥協なき追求、学際的アプローチ、技術革新への開放性といった彼の価値観は、今日のデザイン課題に対する解答の一つとなっている。

彼が追求した「アーキタイプ」の創造、つまり時代を超えて存続する本質的なデザインの探求は、大量消費社会における製品のあり方を問い直すものである。ヴェットシュタインの遺産は、単に美しい製品の数々ではなく、デザインとは何か、デザイナーの責務とは何かを問い続ける姿勢そのものにあると言えよう。

記憶に残る言葉

エンリコ・バレリは、友人でありビジネスパートナーであったヴェットシュタインについて、こう語っている。「ハンネスは友人であり、ユニークなデザイナーでした。彼の名前と評判を利用して金儲けをしようとする試みは、安っぽく、彼にふさわしくないでしょう。」

この言葉は、ヴェットシュタインという人物の本質を表している。彼は名声や商業的成功以上に、真摯なデザイン探求と質への献身を重視した。その姿勢こそが、彼を真に偉大なデザイナーたらしめているのである。

作品一覧

区分 作品名 ブランド
1980年 照明 Snodo Belux
1982年 照明 Metro(低電圧ワイヤーケーブル照明システム) Belux
1982年 照明 Luminaire Ball フロアランプ Belux
1980年代 照明 Ypsilon フロアランプ Belux
1980年代 照明 Scope デスクランプ Belux
1987年 チェア Juliette(スタッキングチェア) Baleri Italia
1990年 チェア Capri / Caprichair(アームチェア) Baleri Italia
1990年代 ソファ Bill シリーズ(アームチェア・ソファ) Baleri Italia
1990年代 テーブル Ludwig(ガラステーブル) Baleri Italia
1990年代 照明 Faro Terra フロアランプ Pallucco
1990年代 照明 Optical シリーズ Pallucco
1990年代 チェア Speedster アームチェア Pallucco
1994年 ベッド Juno Cassina
1994年 時計 V-matic シリーズ Ventura
1995-1998年 インテリア Grand Hyatt Berlin(ホテル全体のインテリアデザイン) Grand Hyatt
1996年 時計 V-matic コレクション(機械式、硬化チタンケース) Ventura
1997-2002年 自転車 Bikes EST
1999-2008年 アートディレクション Art Direction(総合ディレクション) horgenglarus
2000年 筆記具 Scribble ペンシリーズ Lamy
2000年 ベッド Globe Cassina
2000年 チェア Alfa Molteni&C
2000-2008年 光学機器 Optical Instruments(双眼鏡など) Carl Zeiss
2000年代 時計 SPARC MGS(自動巻き電子時計、マイクロジェネレーターシステム) Ventura
2000年代 時計 SPARC Sigma MGS Ventura
2002年 時計 V-tec Alpha クロノグラフ Ventura
2002年 チェア Double You Bulo
2002年 キッチン Nomis(キッチンシステム) Dada
2002-2006年 インテリア Swiss Embassy Washington D.C.(大使館レジデンスのインテリア) Swiss Government
2000年代 インテリア Swiss Embassy Tehran(インテリア) Swiss Government
2000年代 インテリア Swiss Embassy Spain(インテリア) Swiss Government
2003年 チェア Hola 367 Cassina
2003年 家具 Reversi シリーズ Molteni&C
2004年 チェア Lyra horgenglarus
2004-2008年 店舗デザイン Juwelier Kurz 店舗コンセプト(チューリッヒ・バーゼル) Juwelier Kurz
2005年 チェア Hola Sprint(プラスチック版) Cassina
2005年 筆記具 Studio ペンシリーズ Lamy
2005年 チェア Vela コレクション Accademia
2005-2008年 セットデザイン TV Studios(Club, SF Meteo, Rundschau, SF-Sport, Tagesschau, 10vor10) Schweizer Fernsehen
2006年 チェア Hola 369(アームレストなし版) Cassina
2007年 チェア Tototo Maxdesign
2007年 ソファ EJ Delphi ソファコンセプト Erik Jørgensen
2007年 チェア Rivo アームチェア Dietiker
2008年 時計 Zürich / Zürich Weltzeit(ワールドタイム) NOMOS Glashütte
年代不詳 照明 各種照明器具 Artemide
年代不詳 照明 各種照明器具 Oluce
年代不詳 家具 各種家具 Arflex
年代不詳 家具 各種家具 Wittmann
年代不詳 家具 各種家具 UMS Pastoe
年代不詳 プロダクト 音響機器 Brionvega
年代不詳 プロダクト 医療機器、マッサージチェアなど各種製品 Bosch
年代不詳 プロダクト 自転車部品 Shimano
年代不詳 インテリア Novartis オフィスコンセプト(パイロットプロジェクト) Novartis
年代不詳 インテリア Frankfurt Airport 小売エリア再設計 Frankfurt Airport
年代不詳 インテリア Fotomuseum Winterthur 空間デザイン Fotomuseum Winterthur
年代不詳 時計 各種時計デザイン Braun

注:ヴェットシュタインは生涯に合計347のプロジェクトを記録しているが、上記は主要な確認可能な作品のリストである。多くのプロダクトデザイン、コンサルティングプロジェクト、企業アイデンティティデザインなどが含まれていない可能性がある。

Reference

Hannes Wettstein (1958 - 2008) Swiss Furniture Designer - Encyclopedia of Design
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https://www.stylepark.com/en/designer/hannes-wettstein
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HANNES WETTSTEIN product design on Architonic
https://www.architonic.com/en/microsite/hannes-wettstein/5207065
Hannes Wettstein | Biography | Designer and docent | Cassina
https://www.cassina.com/ww/en/contemporanei/hannes-wettstein.html
Hannes Wettstein | Lars Müller Publishers
https://www.lars-mueller-publishers.com/hannes-wettstein
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https://www.architecturalrecord.com/articles/4498-hannes-wettstein---swiss-designer-who-championed-function-over-flair
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The story - Baleri Italia
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Cassina Hola Chair | AmbienteDirect
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Contemporary design chair - Alfa - Molteni&C
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https://moltenimuseum.com/designer/hannes-wettstein/
Studio Hannes Wettstein Watches | TheCoolist
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Ventura Returns with the V-Matic Ego | SJX Watches
https://watchesbysjx.com/2019/06/ventura-v-matic-ego.html
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https://www.chrono24.com/nomos/zuerich--mod284.htm
Hannes Wettstein | Swiss Interior Architect and Designer | Luminaire
https://luminaire.com/blogs/designers/hannes-wettstein
The come back | Worldtempus(Ventura再興記事)
https://en.worldtempus.com/article/ventura-the-come-back-6657.html
About us | Ventura Watches
https://www.ventura.ch/index.php/about-us/
Zürich — NOMOS Glashütte
https://nomos-glashuette.com/en/zurich/zurich-806
Introducing the Nomos Zürich Weltzeit Singapore Edition | SJX Watches
https://watchesbysjx.com/2017/09/introducing-the-nomos-zurich-weltzeit-singapore-edition-world-time.html
Hello by Belux | Archello
https://archello.com/product/hello
Hannes Wettstein (1958 – 2008) | Hürlemann
https://www.huerlemann.com/work/hannes-wettstein-1958-2008