概要
セシリエ・マンツ(1972年生まれ)は、デンマークのデザイナーである。陶芸家の両親のもとで育ち、デンマーク王立芸術アカデミーで学んだ。設計は自身の工房で手を動かして進め、図面は紙に描く。家具、照明、陶器、音響機器と対象は広く、フリッツ・ハンセン、ムート、バング&オルフセンなどと協働している。
バイオグラフィー
1972年、デンマークのオズヘレズに生まれた。両親はともに陶芸家で、自宅の工房が身近にある環境で育っている。
デンマーク王立芸術アカデミーのデザイン学科で学び、1997年に修了した。在学中にはヘルシンキ芸術デザイン大学にも学んでいる。
1998年、コペンハーゲンに自身のスタジオを設立した。少人数で運営し、設計の大半を自ら手を動かして進める体制をとっている。
2005年にライトイヤーズ(現フリッツ・ハンセン)から発表したカラヴァッジオが最初の広く知られた製品となった。2012年からはバング&オルフセンの携帯型音響機器を継続して手がけている。
デザインの思想と方法
マンツの設計は、紙に描き、工房で作り、手に取って確かめるという順序で進む。三次元の作図に頼らないため、検討できる形は自分で作れる範囲に限られる。この制約が、部材の数と接合の単純さを規定している。
自分で作れる範囲で検討する
スタジオでの試作は、寸法と比率を実物で確認するために行われる。図面や画面では判断できない重量、握りの感触、置いたときの安定を、手で確かめてから決める。結果として、複雑な成形を要する形は初期の段階で外れる。
知らない材料は先に学ぶ
陶器、ガラス、金属、樹脂と扱う材料は広いが、新しい分野に入るときはその工芸の知識を得る時間を先に取る。何が作れて何が作れないかを把握してから設計に入るという順序で、材料ごとの制約が形の条件になる。
要素を三つ以内に収める
エッセイのテーブルは、天板と2つの脚部という3つの要素だけで構成される。ミカドのテーブルは、床に立てかけた棒が互いを支える構成で、金物を用いない。部材の数を減らすと接合の検討も減り、工房での試作が現実的な範囲に収まる。
音響機器を家具として扱う
バング&オルフセンの携帯型音響機器では、電子機器としてではなく部屋に置かれる物として形を決める。持ち運ぶための把手、置いたときの向き、他の家具と並んだときの見え方が条件になる。
フリッツ・ハンセンの歴史や他の製品について詳しくはフリッツ・ハンセン ブランドページをご覧ください。
代表作にみる方法
ミカド テーブル(2004年、フレデリシア)
4本の細い棒を互いに立てかけ、その上に天板を載せる卓である。棒同士は交差する位置で支え合い、金物や蝶番を用いない。同名の遊びで散らばる棒の形に由来する。部材の数と接合を最小にするという方針が、最初期の製品に現れている。
カラヴァッジオ(2005年、ライトイヤーズ)
細長い円錐形の笠を持つ吊り照明である。開口を絞ることで光が下方に集まり、卓上を照らす。笠の内側は白く、外側は光沢のある塗装で仕上げられる。同じ形で複数の大きさが展開され、並べて使うことも想定されている。
エッセイ テーブル(2009年、フリッツ・ハンセン)
無垢材の天板と2つの脚部からなる卓である。脚部は天板の端から内側に寄せて配され、端に座る人の脚が当たらない。要素は3つだけで、寸法の比率だけで構成が決まる。
ビオリット(2012年〜、バング&オルフセン)
携帯型の音響機器の系列である。革の把手を上部に付け、持ち運びと置いたときの向きを同時に決める。円筒や角柱といった単純な立体をとり、操作は上面に集約される。電子機器を部屋の物として扱う構成にあたる。
コンパイル シェルビング(ムート)
レーザー加工した鋼の棚板と、分割式の管で構成する棚である。棚板は粉体塗装で仕上げられ、管の長さを変えて高さを調整する。部材の種類が少なく、組み替えができる。→コンパイル シェルビング
評価と影響
マンツは一般に、デンマークの家具設計の系譜を現在に引き継ぐ設計者の一人と評価されている。少人数のスタジオで手を動かして進める体制が、扱う対象の広さと両立している点が特徴にあたる。
バング&オルフセンとの10年以上にわたる協働では、音響機器を部屋に置かれる物として扱う方向が継続されている。電子機器の設計としては例外的な立場になる。
フリッツ・ハンセン、ムート、フレデリシアといったデンマークのメーカーとの関係が長い。近年はシカゴ美術館が2点を収蔵している。
受賞・収蔵
受賞
- 2018年 メゾン・エ・オブジェ デザイナー・オブ・ザ・イヤー
- デンマーク芸術財団による助成
収蔵
以下の収蔵が確認できる(AIC=シカゴ美術館)。
- AIC プルラリス チェア(2009年) 収蔵番号 2020.258
- AIC ワークショップ チェア(2016-17年) 収蔵番号 2020.191
MoMA、V&A、Met では該当する収蔵は確認できなかった。
作品一覧
| 発表年 | 区分 | 作品名 | ブランド |
|---|---|---|---|
| 2004年 | テーブル | ミカド | Fredericia |
| 2005年 | 照明 | カラヴァッジオ | Lightyears / Fritz Hansen |
| 2009年 | テーブル | エッセイ | Fritz Hansen |
| 2009年 | 椅子 | プルラリス | Fritz Hansen |
| 2012年 | 椅子 | ミニスキュール | Fritz Hansen |
| 2012年〜 | 音響機器 | ビオリット シリーズ | Bang & Olufsen |
| 2014年 | テーブル | エアリー サイドテーブル | Muuto |
| 2016-17年 | 椅子 | ワークショップ チェア | Muuto |
| 2018-20年 | テーブル | ワークショップ シリーズ | Muuto |
| 収納 | コンパイル シェルビング | Muuto | |
| プーフ | オブジェクツ・プフ | Muuto |
プロフィール
| 生年 | 1972年 |
|---|---|
| 出身地 | デンマーク・オズヘレズ |
| 国籍 | デンマーク |
| 活動拠点 | コペンハーゲン |
| 分野 | 家具、照明、陶器、音響機器 |
| 主な協働ブランド | Fritz Hansen、Muuto、Fredericia、Bang & Olufsen、HAY |
Reference
- Cecilie Manz Studio(公式)
- https://ceciliemanz.com/
- Cecilie Manz | Fritz Hansen
- https://fritzhansen.com/en/designers/cecilie-manz
- Cecilie Manz | Muuto
- https://www.muuto.com/designers/cecilie-manz/
- The Art Institute of Chicago Collection
- https://www.artic.edu/collection