アンナ・カステッリ・フェリエーリ ── プラスチックに美と知性を宿した建築家
1918年、イタリア・ミラノ生まれ。知識人の家庭に育ち、ミラノ工科大学で建築を学んだ最初の女性の一人として、戦後イタリアのデザイン史に深い足跡を残した建築家・インダストリアルデザイナーである。夫ジュリオ・カステッリとともにカルテル社を築き上げ、プラスチックという工業素材を生活空間に昇華させた先駆者として、今なおその名は世界中のデザイン愛好家に敬われている。
バイオグラフィー
知性の揺籃──文化人の父のもとで
1918年8月6日、アンナ・カステッリ・フェリエーリはミラノに生を受けた。父エンツォ・フェリエーリは著名なジャーナリスト、演出家、批評家であり、文芸誌『コンヴェーニョ(Il Convegno)』の創刊者として知られる知識人であった。そのサロンにはルイジ・ピランデッロやウンベルト・サバ、エウジェニオ・モンターレといった文学者たちが集い、幼いアンナは芸術と知性が交差する環境のなかで感性を磨いていった。こうした教養に満ちた家庭環境が、のちに彼女が示すことになる合理主義と美への深い信念の礎となったことは想像に難くない。
建築への志──ミラノ工科大学とフランコ・アルビーニ
1938年、アンナはミラノ工科大学(Politecnico di Milano)に入学し、建築学を専攻した。同級にわずか三名しかいなかった女性の一人として、当時の社会における先駆的な存在であった。在学中、イタリア合理主義建築の巨匠フランコ・アルビーニに師事し、「還元・機能・厳格な美」という設計理念を深く吸収する。同時にバウハウスの思想にも触れ、機能性と簡潔さを重視するモダニズムの精神を自らの創作の基盤とした。1943年(一部資料では1942年)に建築学の学位を取得。ミラノ工科大学における最初の女性建築学卒業生の一人となったことは、イタリア建築史においても特筆すべき出来事であった。
戦中の試練と戦後の再出発
卒業と同時期にナチス・ドイツによるイタリア占領が始まり、アンナは夫となる化学技術者ジュリオ・カステッリとともにミラノを離れることを余儀なくされた。この時期は二人の子ども、ヴァレリオとマリアの養育に専心する日々となったが、戦後の1946年にミラノへ帰還すると、ただちに自らの建築事務所を設立した。同年から翌年にかけて、建築誌『カザベッラ・コストゥルツィオーニ(Casabella Costruzioni)』の編集長を務め、また英国の建築専門誌『アーキテクチュラル・デザイン(Architectural Design)』のイタリア通信員としても活動を開始する。ジャーナリズムと設計実務を同時に展開するこの姿勢は、デザインを知的営為として捉える彼女の一貫した態度を象徴するものであった。
カルテルの創業と建築家としてのキャリア
1949年、ジュリオ・カステッリがプラスチック製品の製造会社カルテル(Kartell)を創業した。当初は自動車用スキーラックなどの工業製品を手がける小さな企業であったが、やがて日用品、照明、そして家具へと領域を拡大していく。アンナ自身はこの時点ではカルテルの経営には深く関与せず、建築家としての独自のキャリアを追求し続けた。1949年にはCIAM(近代建築国際会議)に初参加し、共同組織者としても活動。1952年からはイタリア都市計画研究所(INU)のメンバーとなり、1956年にはイタリア工業デザイン協会(ADI)の共同設立者となるなど、デザインと建築の制度的基盤の形成にも尽力した。
1959年から1973年にかけては、イタリアの合理主義建築家イニャツィオ・ガルデッラとの共同事務所を設立し、数多くの建築プロジェクトを手がけた。ミラノ、トリノ、ジェノヴァ、ヴィチェンツァなどの都市計画に携わり、ミラノのブラマンテの回廊やフィレンツェのパラッツォ・ベンチといった歴史的建造物の修復にも取り組んでいる。中でも特筆すべきは、ミラノ近郊ノヴィーリオ(一部資料ではビナスコ)に建設されたカルテル本社工場(1966年)と、アレーゼに建設されたアルファロメオの技術研究所(1969年〜1972年)であり、鮮やかな赤色のブロック状の構造体は、イタリア産業建築の傑出した例として評価を受けた。生涯を通じて50を超える建築プロジェクトを遂行しており、その多くが産業建築と都市計画の分野に属するものであった。
カルテルとの協働──プラスチックの可能性を拓く
アンナがカルテルのためにデザインした最初のプロダクトは、1964年、ヴェネツィアのホテル・グリッティ・パレスの付属住居のために制作されたラウンドダイニングテーブルであった。ガラス繊維で補強されたポリエステル樹脂製のこのテーブルは、イタリアの優美さと耐久性ある新素材の融合を示す象徴的な一作となった。1966年からはカルテルのデザインコンサルタントに就任し、以後、同社の製品デザインに本格的に携わることとなる。
1967年、アンナはその最も著名な作品となる「コンポニビリ(Componibili)」のスクエアバージョン(モデル4970/84)を発表した。射出成形によるABS樹脂製のモジュラー収納ユニットは、スタッキング可能で工具不要の組み立て式という革新的なコンセプトを実現したものであった。1969年にはラウンドバージョンが追加され、鮮やかなカラーバリエーションとキャスター付きオプションとともに展開された。1972年、ニューヨーク近代美術館(MoMA)で開催された歴史的展覧会「イタリア:新しい家庭の風景(Italy: The New Domestic Landscape)」にコンポニビリが出品されたことで、国際的な注目を集めることとなった。発売から半世紀以上を経た現在もカルテルのベストセラーであり続け、累計販売数は1,000万台を超えるとされる。MoMAおよびパリ・ポンピドゥーセンターの永久コレクションに収蔵されている。
1968年には、単一の型で成形されるプラスチック製チェアを設計し、プラスチック家具製造の技術的画期を築いた。1976年にはカルテルのアートディレクターに就任し、1987年までその職を務めた。アートディレクター時代には、自らのデザイン活動を続けるかたわら、リチャード・サッパー、ジョエ・コロンボ、ガエ・アウレンティ、マルコ・ザヌーゾといった優れたデザイナーたちをカルテルに招聘し、同社を世界的なデザインブランドへと押し上げる役割を果たした。
カルテル以後──教育と新たな創造
1984年から1986年にかけてミラノ工科大学でインダストリアルデザインの教鞭をとり、1985年から1992年にはドムス・アカデミーでも教授を務めた。1988年にカルテルを義息クラウディオ・ルーティに譲渡した後も、デザイン活動への情熱は衰えることがなかった。1990年には卒業生らとともにデザイングループ「ACFオフィチーナ」を設立。カルテル以外のブランドへのデザイン提供も精力的に行い、アルフレックスのためのソファ、マッテオ・グラッシのための椅子、そしてサンボネのためのカトラリー「ハンナ(Hannah)」を手がけた。「ハンナ」は清潔感のあるミニマルなラインと機能的な優美さを兼ね備えた傑作として、1994年にコンパッソ・ドーロ賞を受賞している。
また、著述家としても活動し、1984年に『From Project to Product: Plastic and Design(プロジェクトからプロダクトへ:プラスチックとデザイン)』、1991年には『The Interface of Material(素材のインターフェース)』を上梓し、デザイナーの社会的責任について論じた。
2006年6月22日、アンナ・カステッリ・フェリエーリはミラノの自宅で逝去した。享年87。夫ジュリオもその4か月後にこの世を去っている。2016年にはミラノ市がモニュメンターレ墓地のパンテオンにその名を登録し、2017年12月にはシティライフ地区の通りに彼女の名が冠された。
デザインの思想とアプローチ
アンナ・カステッリ・フェリエーリのデザイン哲学は、彼女自身の言葉に端的に表されている。「有用なものが美しいのではない。美しいものこそが有用なのだ。美は人々の生き方と思考を向上させることができる(It is not true that what is useful is beautiful. It is what is beautiful that is useful. Beauty can improve people's way of life and thinking.)」。この一節は、バウハウスの機能主義を敬いつつも、それを反転させた独自の美学を宣言するものであった。
合理主義と美の統合
師フランコ・アルビーニから受け継いだネオ合理主義の精神は、「還元」「機能」「厳格な美」という三つの柱に集約される。アンナはこれをプロダクトデザインの領域に展開し、幾何学的な形態と最小限の構造による普遍的な美を追求した。コンポニビリに見られる円筒形や正方形の純粋な幾何学は、この思想の最も明快な結実である。
素材への探究心──プラスチックの尊厳
プラスチックが廉価な工業素材として軽視されていた時代に、アンナはその可塑性、量産性、色彩表現の豊かさに着目し、デザインの主役たりうる素材として位置づけた。ABS樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタンなど、時代ごとに登場する新素材の特性を徹底的に研究し、素材の技術的可能性と造形的可能性を同時に引き出すアプローチを一貫して採り続けた。1979年のスツール4822/4826では金属合金とポリウレタンの組み合わせという新技術を実現し、1988年のラウンジチェア4814ではマーブル模様の射出成形という新たな表現を試みている。
「スプーンから都市まで」
アンナは建築からカトラリーに至るまで、スケールを超えた横断的なデザイン活動を展開したデザイナーであった。イタリアのデザイン思想に根ざす「スプーンから都市まで(dal cucchiaio alla città)」という理念を体現し、都市計画、産業建築、家具、日用品、カトラリーの各領域で、機能性と美を兼ね備えた提案を行い続けた。この多領域にわたる実践は、デザインとは特定のスケールに属するものではなく、人間の生活全体に関わる知的行為であるという確信に基づくものであった。
民主的デザインの信念
アンナのデザインの根底には、優れたデザインを万人のものとする「民主的デザイン」への深い信念があった。プラスチックの量産技術を活用することで高品質かつ手の届く価格帯を実現し、デザインを日常の営みに開放することを目指した。コンポニビリの成功は、まさにこの理念の最も輝かしい証左といえるであろう。
作品の特徴
アンナ・カステッリ・フェリエーリの作品群には、一貫した造形言語と設計原理が認められる。
幾何学的純粋性
円、正方形、円筒といった基本幾何学をモチーフとした明快な造形が、ほぼすべての作品に共通している。装飾を排し、形態そのものの美しさで空間を構成するという姿勢は、合理主義建築の思想をプロダクトデザインに翻訳したものである。
モジュラリティと多機能性
コンポニビリに代表されるモジュール設計は、使用者が自らの生活に応じて構成を変えられる自由を提供する。スタッキング、組み替え、キャスターの着脱など、ひとつのプロダクトに複数の使用シナリオを内包させる設計手法は、アンナの作品の際立った特質である。スツール、ナイトテーブル、収納といった複数の用途をひとつの製品で実現する発想は、限られた空間を効率的に活用したいという当時の社会的要請にも応えるものであった。
大胆な色彩と光沢のある仕上げ
プラスチック素材の特性を最大限に活かした鮮やかな原色の展開と、高光沢の表面仕上げは、カルテル製品のヴィジュアル・アイデンティティそのものとなった。白、黒、赤、黄、緑といったヴィヴィッドな色彩は、スペースエイジの時代精神を反映しつつ、インテリアにおける主役級の存在感を生み出している。
建築的思考に基づくプロダクト
50を超える建築プロジェクトの経験は、プロダクトデザインにおいても建築的スケールの思考をもたらした。コンポニビリを「小さな建築」として設計したという逸話は、空間構成の原理をプロダクトに援用する彼女のアプローチを雄弁に物語っている。カルテル本社の赤いブロック状の建築と、彼女の幾何学的な家具デザインには、スケールを超えた造形的連続性が認められる。
主な代表作とそのエピソード
コンポニビリ(Componibili) 4970/84(1967年〜)
アンナ・カステッリ・フェリエーリの名を世界に知らしめた最も重要な作品であり、カルテルの象徴ともいえるプロダクトである。射出成形によるABS樹脂製のモジュラー収納ユニットで、当初は1967年にスクエアバージョンが、1969年にはラウンド(円筒形)バージョンが発表された。工具を使わずにユニットをスタッキングでき、扉のスライド開閉、キャスターの装着など、ユーザーが自在に構成をカスタマイズできる画期的な設計思想を備える。
1972年のMoMA展覧会「Italy: The New Domestic Landscape」への出品を契機に国際的名声を確立。以来、半世紀以上にわたって生産が継続され、累計販売数は1,000万台を超えるとされる。ニューヨーク近代美術館とパリ・ポンピドゥーセンターの永久コレクションに収蔵されており、20世紀のインダストリアルデザインを代表するアイコンのひとつとして広く認められている。
スタッキングチェア 4870(1986年)
エレガントな曲線を描く背もたれと丸みを帯びた脚部が特徴的なプラスチック製チェア。薄い座面がプラスチック特有のしなりをもって体を受け止め、軽量ながら安定した座り心地を実現している。座面両端に設けられた穴にもう一脚の脚を差し込むことでスタッキングが可能であり、また脚部は着脱式という優れた機能性を備える。1987年、イタリアのデザイン賞として最高の権威を有するコンパッソ・ドーロ賞を受賞。「目的・経済性・技術の調和」が評価された。合理主義とポストモダニズムの両方の感性を巧みに融合させた作品として、デザイン史上特筆される一脚である。
スツール 4822/4826(1979年)
金属合金とポリウレタンを組み合わせた世界初のプロダクトとして知られるスツール。この素材の革新的な融合により、長い脚部でも構造的安定性を確保することが可能となった。座面中央に設けられた穴にクッションを挿入できるデザインは、機能と遊び心を両立させたものであった。1979年から1998年まで生産が続けられ、カルテルのベストセラーのひとつとなった。アルヴァ・アアルトの三本脚スツールへのオマージュとも解釈されるデザインは、モダニズムの系譜における対話を感じさせる。
テーブル 4300(1982年)
すべての構成部品を射出成形ABS樹脂で製作した世界初のテーブルとして、素材技術史上の重要な位置を占める作品。プラスチック成形技術の粋を結集し、テーブルという大型家具においてもプラスチックの実用性を証明した意欲作である。
ラウンジチェア 4814(1988年)
マーブル模様の射出成形ブレンドプラスチックという新技術を採用したラウンジチェア。それまでのアンナの作品に見られた厳格な幾何学と原色の組み合わせから一転し、より遊び心のある有機的なフォルムを探求した作品であり、円熟期における新たな表現の広がりを示すものであった。
ハンナ(Hannah)カトラリー(1994年)
サンボネ社のために設計されたカトラリーセット。清潔感のあるミニマルなラインと機能的な優美さを兼ね備え、日用品を芸術作品へと昇華させるアンナのデザイン哲学を凝縮した傑作として高い評価を受けた。コンパッソ・ドーロ賞を受賞し、アンナにとってカルテルの4870チェアに続く二度目の栄誉となった。建築から家具、そしてカトラリーに至るまで、「スプーンから都市まで」の理念を実践した彼女のキャリアの到達点のひとつである。
ラウンドダイニングテーブル 4991/4997(1964年〜)
アンナがカルテルのために手がけた最初のプロダクト。ヴェネツィアのホテル・グリッティ・パレスの付属住居のためにイニャツィオ・ガルデッラとともに設計されたもので、ガラス繊維で補強されたポリエステル樹脂製天板とクロムメッキの金属脚を組み合わせている。イタリアの伝統的な優美さと、手頃で耐久性のある新素材とを融合させた、カルテルの家具デザインの出発点を画す一作である。
功績・業績
受賞歴
- 1947年
- 第8回ミラノ・トリエンナーレ 金メダルおよび名誉賞(子ども用ベッドとアームチェアの設計)
- 1950年
- ミラノ・トリエンナーレ 金メダル
- 1968年
- オスカー・プラスト賞(ロンドン)
- 1969年
- 銀メダル オーストリア建築センター(ウィーン)
- 1972年
- 金メダル(モンツァ)、MACEF賞(ミラノ)
- 1973年
- Bundespreis Gute Form(西ドイツ連邦政府デザイン賞)── モジュラーエレメント4970/84
- 1977年
- SMAU賞(ミラノ)
- 1979年・1984年
- プロダクトデザイン賞、リソース・カウンシル(ニューヨーク)
- 1981年
- デザイン賞、アメリカ工業デザイナー協会、サンディエゴ美術館
- 1982年
- 金メダル BIO9(リュブリャナ)、ケルン家具見本市デザイン賞
- 1983年
- インダストリアル・デザイン・マガジン年間賞(ニューヨーク)
- 1984年
- 年間優秀家具賞(ハンブルク)
- 1987年
- コンパッソ・ドーロ賞(ADI、ミラノ)── カルテル 4870チェア
- 1994年
- コンパッソ・ドーロ賞(ADI、ミラノ)── サンボネ ハンナ・カトラリー
- 1994年
- Kölner Klopfer ケルン国際デザインスクール
主要展覧会
- 1968年
- 「Design Italian Style」ホールマーク・ギャラリー、ニューヨーク
- 1972年
- 「Italy: The New Domestic Landscape」ニューヨーク近代美術館(MoMA)
- 1979年
- 「Design and Design」パラッツォ・デッレ・ステッリーネ、ミラノ
- 1980年
- 「Italienisches Möbel Design」市立美術館、ケルン
- 1983年
- 「Dal Cucchiaio alla Città」ミラノ・トリエンナーレ
- 1985年
- 「Italian Women Designers」高島屋、東京
- 1985年
- 「Anna Castelli Ferrieri per Kartell」ガリアーノ、トリノ
- 1986年
- 「Anna Castelli Ferrieri」ギャラリー・モードゥス、ベルリン
- 1988年
- 「Sedersi Kartell」ラ・リナシェンテ、ミラノ
- 1992年
- 「Industrial Elegance」パシフィック・デザイン・センター、ロサンゼルス
団体活動・役職
- 1945年
- 建築研究運動(MSA:Movimento di Studi per l'Architettura)共同設立、ミラノ
- 1949年〜
- CIAM(近代建築国際会議)参加・共同組織者
- 1952年〜
- イタリア都市計画研究所(INU)メンバー
- 1956年
- イタリア工業デザイン協会(ADI)共同設立
- 1969年〜1971年
- ADI会長
- 1976年〜1987年
- カルテル社アートディレクター
- 1984年〜1986年
- ミラノ工科大学 インダストリアルデザイン教授
- 1985年〜1992年
- ドムス・アカデミー教授
- 1990年
- デザイングループ「ACFオフィチーナ」設立
著作
- 1984年
- 『From Project to Product: Plastic and Design(プロジェクトからプロダクトへ:プラスチックとデザイン)』
- 1991年
- 『The Interface of Material(素材のインターフェース)』
美術館収蔵
コンポニビリをはじめとする作品群は、ニューヨーク近代美術館(MoMA)、パリ・ポンピドゥーセンター、ロンドン・ヴィクトリア&アルバート博物館、クーパー・ヒューイット・スミソニアン・デザインミュージアム、英国芸術大学ボーンマスのデザイン・イン・プラスチックス博物館(MoDiP)など世界各地の主要美術館・博物館に収蔵されている。
評価・後世に与えた影響
アンナ・カステッリ・フェリエーリは、プラスチック素材を家具デザインの主流に押し上げた最大の功労者の一人として、デザイン史上確固たる地位を占めている。1960年代から1980年代にかけてのイタリアを代表する女性インダストリアルデザイナーとして、男性中心であったデザイン界に道を拓いた先駆者でもある。
プラスチックの可能性を信じ、工業素材に知性と優美さを付与するという彼女のヴィジョンは、後進のデザイナーたちに計り知れない影響を与えた。フィリップ・スタルクのゴーストチェアに代表されるカルテルの現代的展開は、アンナが切り開いたプラスチックデザインの系譜の延長線上にあるといえるであろう。
その評価は、受賞歴や美術館収蔵にとどまらない。コンポニビリが半世紀以上を経てなお現役の製品として生産・販売され続けているという事実こそ、デザイナーに対する最高の賛辞にほかならない。2016年にミラノ市がモニュメンターレ墓地のパンテオンにその名を刻み、2017年にはシティライフ地区の通りに名を冠したことは、アンナ・カステッリ・フェリエーリがイタリアの文化的遺産の一部として永く記憶されるべき存在であることを証するものであった。
建築からプロダクトデザイン、教育、著述、デザイン組織の運営に至るまで、70年にわたる多面的なキャリアは、デザインとは人間の生活の質を総合的に高める知的行為であるという信念の壮大な実践であった。その遺産は、今日のデザインにおける持続可能性、モジュラリティ、民主的アクセスといった重要なテーマの先取りとして、ますます現代的な意義を増している。
| 年月 | 区分 | 作品名 | ブランド |
|---|---|---|---|
| 1947年 | 家具 | 子ども用ベッド・アームチェア(ミラノ・トリエンナーレ出品) | — |
| 1964年 | テーブル | ラウンドダイニングテーブル 4991(ホテル・グリッティ・パレス住居用) | Kartell |
| 1966年 | 建築 | カルテル本社工場(ノヴィーリオ / ビナスコ) | — |
| 1967年 | 収納家具 | コンポニビリ スクエアエレメント 4970/84 | Kartell |
| c.1967年 | テーブル | ラウンドテーブル 4997(イニャツィオ・ガルデッラとの共作) | Kartell |
| 1968年 | 椅子 | シングルモールドプラスチックチェア | Kartell |
| 1969年 | 収納家具 | コンポニビリ ラウンドエレメント(円筒形) 4953/4955 | Kartell |
| 1969年〜1972年 | 建築 | アルファロメオ技術研究所(アレーゼ) | — |
| c.1970年代 | プランター | プランター(キャスター付き円筒形) | Kartell |
| c.1970年代 | ベッド | ベッド 4550(イニャツィオ・ガルデッラとの共作) | Kartell |
| 1979年 | スツール | スツール 4822/4826 | Kartell |
| 1979年 | 灰皿 | テーブルアシュトレイ 4639/4611 | Kartell |
| 1981年 | 収納家具 | 回転式ブックケース 3605/3622(キャスター付き) | Kartell |
| 1982年 | テーブル | テーブル 4300(全構成部品ABS射出成形) | Kartell |
| 1983年 | テーブル | テーブル 4310 | Kartell |
| c.1980年代 | コートスタンド | コートスタンド 4788 アウトライン・シリーズ | Kartell |
| 1985年 | サイドテーブル | サイドテーブル 4583(3サイズセット) | Kartell |
| 1986年 | 椅子 | スタッキングチェア 4870(コンパッソ・ドーロ賞受賞) | Kartell |
| 1987年 | スツール/テーブル | スツールテーブル 4810 | Kartell |
| 1988年 | ラウンジチェア | ラウンジチェア 4814(マーブル射出成形) | Kartell |
| 1986年 | ヴァレット | ヴァレット(衣服掛け) | Kartell |
| c.1990年代 | 椅子 | チェア 4855 | Kartell |
| c.1990年代 | 椅子 | ラウンジチェア 4841 | Kartell |
| c.1990年代 | コートスタンド | セルヴォムート(フロアスタンド型サーヴァント) | Kartell |
| 1994年 | カトラリー | ハンナ(Hannah)カトラリーセット(コンパッソ・ドーロ賞受賞) | Sambonet |
| — | ソファ | ソファデザイン | Arflex |
| — | 椅子 | チェアデザイン | Matteo Grassi |
| — | テキスタイル | テキスタイルデザイン | Lanerossi |
Reference
- Anna Castelli Ferrieri - Wikipedia
- https://en.wikipedia.org/wiki/Anna_Castelli_Ferrieri
- Anna Castelli Ferrieri - designer and architect (1918 - 2006) - designindex
- https://www.designindex.org/designers/design/anna-castelli-ferrieri.html
- Anna Castelli Ferrieri's Plastic Fantastic - Core77
- https://www.core77.com/posts/42547/anna-castelli-ferrieris-plastic-fantastic
- A PROFILE OF ANNA CASTELLI FERRIERI – Luxxdesign.com
- https://www.luxxdesign.com/en-us/blogs/luxx-news/excellence-made-italy-profile-anna-castelli-ferrieri
- Anna Castelli Ferrieri | Museum of Design in Plastics (MoDiP)
- https://www.modip.ac.uk/blog/2022/10/anna-castelli-ferrieri
- Anna Castelli Ferrieri — Form + Field
- https://formandfield.com/field-notes/modernist-designers-series-anna-castelli-ferrieri
- Anna Castelli Ferrieri, the plastic touch of Italian design - DesignWanted
- https://designwanted.com/design-icon-anna-castelli-ferrieri/
- Women in design: Anna Castelli Ferrieri - LZF Lamps Blog
- https://blog.lzf-lamps.com/women-in-design-anna-castelli-ferrieri
- Anna Castelli Ferrieri: The Pioneer of Plastic Elegance - Möbel Design Museum
- https://www.mobeldesignmuseum.se/news-design/anna-castelli-ferrieri-the-pioneer-of-plastic-elegance-in-modern-design
- Anna Castelli Ferrieri: Ideology and Philosophy - Re-thinking The Future
- https://www.re-thinkingthefuture.com/know-your-architects/a5134-anna-castelli-ferrieri-ideology-and-philosophy/
- Fantastic Plastic: Anna Castelli Ferrieri and Giulio Castelli's Kartell Furniture - Fabrics Store
- https://blog.fabrics-store.com/2021/07/18/fantastic-plastic-anna-castelli-ferrieri-and-giulio-castellis-kartell-furniture/
- Anna Castelli Ferrieri – Design Within Reach
- https://www.dwr.com/designer-anna-castelli-ferrieri?lang=en_US
- Sambonet Designer Anna Castelli Ferrieri
- https://www.sambonet.com/it-it/designers/castelli-ferrieri-anna.html
- Anna Castelli Ferrieri Furniture - 1stDibs
- https://www.1stdibs.com/creators/anna-castelli-ferrieri/furniture/
- Anna Castelli Ferrieri products - Connox
- https://www.connox.com/designers/anna-castelli-ferrieri.html