概要

アルフォンソ・ビアレッティ(1888-1970)は、イタリアの技術者・製造者である。アルミの鋳造と加工に携わった経歴を持ち、1933年に直火式のコーヒー沸かしモカ・エキスプレスを製品化した。水を沸かした蒸気圧で湯を押し上げるという機構により、家庭で圧力をかけた抽出ができるようになった。

沿革

ビアレッティは1888年6月17日、イタリアのオメーニャ近郊に生まれた。フランスでアルミの加工に携わった経歴を持つ。

1919年、イタリアへ戻りアルミの加工を扱う工房を設立した。当初は他社のための部品と半製品を製造している。

1933年、モカ・エキスプレスを製品化した。八角形の胴を持つ直火式のコーヒー沸かしである。

販売は当初、地元の市場に限られた。1946年に息子レナートが事業を引き継ぎ、以後、生産と販売が拡大している。1970年に没した。

デザインの思想と方法

1930年代までのエスプレッソは、業務用の機械でしか作れなかった。圧力をかけるための装置が大きく、家庭には置けない。ビアレッティが用いたのは、水を沸かした蒸気圧そのものを利用するという方法である。

蒸気圧で湯を押し上げる

下部の水を加熱すると蒸気が生じ、圧力で湯が管を上がる。途中の粉の層を通り、上部に溜まる。外部の動力を要さず、火にかけるだけで成立する。

アルミの鋳造で作る

アルミは熱が伝わりやすく、軽い。鋳造で一体に成形できるため、複雑な形も作れる。当時、アルミの加工技術が普及し始めた時期にあたる。

八角形の胴にする

胴を八角形にすると、火の熱が面ごとに当たる。円筒より表面積が大きく、加熱が速い。鋳造では角のある形も作れる。

3つの部材で構成する

下部の水槽、中間の粉の受け、上部の抽出液の容器で構成される。ねじで組み、分解して洗える。部材は3つに限られる。

代表作にみる方法

モカ・エキスプレス(1933年)

水を沸かした蒸気圧で湯を押し上げる直火式のコーヒー沸かしである。外部の動力を要さず、火にかけるだけで成立する。アルミの鋳造による八角形の胴は、円筒より表面積が大きく加熱が速い。下部の水槽、中間の粉の受け、上部の容器という3つの部材で構成される。ニューヨーク近代美術館が収蔵している(収蔵番号431.2008)。→モカエキスプレス

アルミの加工(1919年〜)

設立当初は他社のための部品と半製品を製造した。モカ・エキスプレスはこの技術の延長にあたる。

寸法の展開

1杯用から複数杯用まで、寸法の異なる型が用意された。機構は共通で、容量だけが変わる。

事業の継承(1946年〜)

息子レナートが事業を引き継ぎ、生産と販売を拡大した。以後、イタリアの家庭に広く普及している。

評価と影響

ビアレッティは、設計者ではなく技術者・製造者として言及される。蒸気圧を利用するという機構が、家庭での圧力抽出を可能にした。

モカ・エキスプレスは1933年の製品化から現在まで、構成を変えずに生産が続いている。3つの部材とねじによる組み立ても当時のままにあたる。

販売の拡大は1946年以降、息子レナートの代による。ビアレッティ自身の時期には地元の市場に限られていた。

収蔵

以下の収蔵が確認できる(MoMA=ニューヨーク近代美術館)。

  • MoMA モカ・エキスプレス(1933年設計) 収蔵番号 431.2008

V&A、Met、AIC では該当する収蔵は確認できなかった。イタリア国内の館については照合手段がない。

作品一覧

区分 作品名 ブランド
1919年 工房 アルミ加工の工房を設立 オメーニャ、イタリア
1933年 什器 モカエキスプレス Bialetti
1930-40年代 什器 モカ・エキスプレスの各容量 Bialetti
1919-1946年 製造 アルミの部品・半製品 Bialetti

プロフィール

生没年 1888年6月17日〜1970年
出身地 イタリア・オメーニャ近郊
国籍 イタリア
活動拠点 オメーニャ、イタリア
分野 什器、アルミ加工
主な協働ブランド Bialetti

Reference

Bialetti
https://www.bialetti.com/
The Museum of Modern Art Collection
https://www.moma.org/collection/works/2325