概要

アレキサンダー・ジラード(1907-1993)は、アメリカの建築家・テキスタイルデザイナーである。1952年から1975年までハーマンミラーのテキスタイル部門を率い、300を超える図案を残した。世界各地の民芸品を収集し、その色と図柄を工業生産の織物に持ち込んでいる。チャールズ・イームズジョージ・ネルソンと同時期に同社に関わった。

バイオグラフィー

1907年5月24日、ニューヨークに生まれた。幼少期をイタリアのフィレンツェで過ごし、ローマとロンドンで建築を学んでいる。

1930年代にアメリカへ戻り、ニューヨークとデトロイトで建築と内装の設計を行った。1949年にはデトロイト美術館で展覧会「For Modern Living」を企画している。

1952年、ハーマンミラーにテキスタイル部門が新設され、その責任者となった。1975年まで務めている。

1953年にニューメキシコ州サンタフェへ移り、以後この地を拠点とした。世界各地で収集した民芸品は10万点を超え、1978年にサンタフェの国際民芸博物館へ寄贈されている。1993年12月31日に没した。

デザインの思想と方法

1950年代のアメリカの近代的な室内は、白い壁と木と金属で構成され、色は抑えられていた。ジラードが持ち込んだのは、メキシコやインドの民芸品に見られる強い色と反復する図柄である。工業の織機で織るという条件のもとで、これを成立させた。

民芸品の色を織物に移す

収集した民芸品の色の組み合わせを分析し、糸の色として置き換える。単色を並べるのではなく、複数の色を隣接させて発色を得る。手仕事の色を、工業の工程で再現するという操作にあたる。

単純な図形を反復する

円、三角、四角、線といった単純な図形を規則的に並べる。織機は同じ模様を繰り返すことに向いており、この条件と一致する。図柄の複雑さではなく、反復の規則と色の配分で表情をつくる。

文字を図柄にする

アルファベットや人名を並べた図案も手がけた。文字は読めると同時に図形でもあるため、意味と模様の両方として働く。

室内を一括して構成する

建築と内装の設計も行い、ラ・フォンダ・デル・ソルなどの飲食店では、家具、食器、制服、看板までを設計した。テキスタイルは、この構成の一部として扱われる。

代表作にみる方法

サークルズ(1951年、ハーマンミラー)

円を規則的に並べた織物である。単純な図形の反復と色の配分だけで構成される。ニューヨーク近代美術館が収蔵している(収蔵番号471.1975)。

レイン(1953年、ハーマンミラー)

細い線を縦に並べた織物である。線の間隔と色の変化で表情をつくる。ニューヨーク近代美術館とシカゴ美術館が収蔵している。

ネイムズ(1957年、ハーマンミラー)

人名を並べた図案の織物である。文字は読めると同時に図形でもあり、意味と模様の両方として働く。ニューヨーク近代美術館とシカゴ美術館が収蔵している。

ウッドン・ドールズ(1963年)

木の塊に顔と模様を描いた人形の系列である。自邸のために制作されたもので、収集した民芸品の影響が現れている。現在はヴィトラが生産している。→ウッデンドール

ラ・フォンダ・デル・ソル(1960年、ニューヨーク)

飲食店の内装である。家具、食器、制服、看板までを設計した。テキスタイルは、この構成の一部として扱われる。

評価と影響

ジラードは一般に、20世紀中期のアメリカの室内に色を持ち込んだ設計者と評価されている。民芸品の色と図柄を、工業生産の織物として成立させた点が挙げられる。

1952年から1975年までハーマンミラーのテキスタイル部門を率い、300を超える図案を残した。同時期のチャールズ・イームズジョージ・ネルソンとともに、同社の製品構成を決めた立場になる。

収集した民芸品は10万点を超え、1978年にサンタフェの国際民芸博物館へ寄贈された。収集そのものが、後年に資料として機能している。

収蔵

4館のAPI(MoMA、V&A、Met、AIC)で照合したところ、計60件が確認できた。大半がテキスタイルにあたる。以下は主要なものの抜粋である。

  • MoMA サークルズ(1951年) 収蔵番号 471.1975
  • MoMA マルチカラード・スクエアズ(1952年頃) 収蔵番号 473.1975
  • MoMA レイン(1953年) 収蔵番号 474.1975.1-2
  • MoMA ネイムズ(1957年) 収蔵番号 755.2015
  • MoMA エクストルージョンズ(1960年) 収蔵番号 1263.2018
  • MoMA トライアングルズ(1961年) 収蔵番号 1264.2018
  • MoMA アームチェア(1967年) 収蔵番号 1265.2018
  • Met テキスタイル見本(1952-73年) 収蔵番号 2019.161.1a–v ほか計29点
  • AIC レイン(1953年) 収蔵番号 1988.69
  • AIC スモール・スクエアズ(1953年) 収蔵番号 1988.72
  • AIC ミカド(1954年) 収蔵番号 1988.73
  • AIC リボンズ(1957年) 収蔵番号 1988.82
  • AIC グリッド(1958年) 収蔵番号 1988.74
  • AIC フルーツ・トゥリーズ(1960年) 収蔵番号 1988.76
  • AIC アルファベット(1960年代) 収蔵番号 1988.78

V&A では該当する収蔵は確認できなかった。

作品一覧

区分 作品名 ブランド / 場所
1949年 展示 「For Modern Living」展 企画 デトロイト美術館、アメリカ
1951年 テキスタイル サークルズ Herman Miller
1953年 テキスタイル レイン Herman Miller
1957年 テキスタイル ネイムズ Herman Miller
1960年 内装 ラ・フォンダ・デル・ソル ニューヨーク、アメリカ
1963年 人形 ウッデンドール Vitra
1965年 航空 ブラニフ航空の全面設計 アメリカ
1952-75年 テキスタイル アレキサンダー・ジラード ピロー Vitra
1952-75年 ラグ アレキサンダー・ジラード ラグ Vitra

プロフィール

生没年 1907年5月24日〜1993年12月31日
出身地 アメリカ・ニューヨーク
国籍 アメリカ
活動拠点 ニューメキシコ州サンタフェ
分野 テキスタイル、インテリア、建築、展示
主な協働ブランド Herman Miller、Vitra

Reference

Alexander Girard | Vitra
https://www.vitra.com/en-us/product/designer/alexander-girard
Museum of International Folk Art, Santa Fe
https://www.internationalfolkart.org/
The Museum of Modern Art Collection
https://www.moma.org/collection/works/2325
The Art Institute of Chicago Collection
https://www.artic.edu/collection