WMF(ヴェーエムエフ)── 170年を超える金属加工の伝統が息づくドイツNo.1キッチン&テーブルウェアブランド

WMF(ヴェーエムエフ)は、1853年にドイツ南西部バーデン=ヴュルテンベルク州のガイスリンゲン・アン・デア・シュタイゲにて創業した、ヨーロッパを代表するキッチンウェアおよびテーブルウェアブランドです。正式名称はWürttembergische Metallwarenfabrik(ヴュルテンベルク金属製品工場)。創業以来170年以上にわたり、金属加工の卓越した技術と洗練されたデザインを両立させ、世界約90カ国の家庭やレストラン、ホテルの食卓を彩り続けています。

19世紀後半のユーゲントシュティール(アール・ヌーヴォー)期における銀メッキ製品の華麗な装飾から、バウハウスの思想を受け継いだヴィルヘルム・ヴァーゲンフェルドによる機能美の追求、そして21世紀の天然鉱石由来の革新素材「フュージョンテック ミネラル」に至るまで、WMFの歩みはドイツのものづくりの歴史そのものです。独自開発のステンレス素材「クロマーガン」は、1930年の商標登録以来、耐久性と美しさの代名詞として世界中で信頼を集めています。

現在はフランスのグループセブ(Groupe SEB)傘下にあり、コンシューマー向けキッチン&テーブルウェアに加え、業務用全自動コーヒーマシンの世界的リーダーとしても知られています。ドイツ国内では9年連続でキッチン用品部門No.1ブランドに選出されるなど、品質とデザインの両面で圧倒的な支持を獲得しています。

ブランドの特徴・コンセプト

ドイツのクラフトマンシップが生み出す最上の品質

WMFの製品づくりの根幹にあるのは、170年以上にわたって受け継がれてきた金属加工技術の伝統です。すべての製品はドイツで開発された自社素材を用い、ドイツ国内の工場で製造されています。素材の選定から仕上げに至るまで妥協のない品質管理が貫かれており、世代を超えて使い続けられる耐久性と信頼性を実現しています。

独自素材への飽くなき探求

WMFを語る上で欠かせないのが、自社開発による革新的な素材群です。1930年に商標登録された「クロマーガン(Cromargan®)」は、高いクロム含有量による銀のような美しい輝きと、錆びにくく酸に強い特性を兼ね備えたステンレス鋼であり、WMFの代名詞ともいえる存在です。2009年には「クロマーガン プロテクト(Cromargan protect®)」へと進化を遂げ、従来品と比較して150倍もの耐傷性を実現しました。さらに2018年には、約30種類の天然鉱石を1300℃の高温で融解して生まれたミネラル素材「フュージョンテック(Fusiontec)」を発表。遠赤外線効果による食材の旨味を引き出す調理性能と、ガラスのように滑らかでこびりつきにくい表面を両立しています。

デザインと機能の融合

WMFは創業当初から、芸術性と実用性の両立を追求してきました。19世紀末のアール・ヌーヴォー期には優美な装飾金属製品で世界的名声を確立し、20世紀にはバウハウスの理念を取り入れたモダンデザインへと進化。1950年代以降、バウハウス出身のヴィルヘルム・ヴァーゲンフェルドが20年以上にわたってWMFのデザインを手がけ、機能性から生まれる形の美しさを体現する名作を数多く生み出しました。現在も社内アトリエと国際的なデザイナーとの協働を通じ、シンプルを究めた機能美を追い求めています。

キッチンからテーブルまでのトータル提案

WMFの製品群は、鍋、圧力鍋、フライパン、包丁・ナイフ、キッチンツール、カトラリー、テーブルアクセサリー、ドリンクウェアに至るまで、キッチンとダイニングに必要なあらゆるアイテムを網羅しています。一つのブランドのもとで調理器具からテーブルウェアまでを一貫した品質とデザイン哲学で揃えることができる点は、WMFならではの大きな魅力です。

ブランドヒストリー

創業期──金属加工の黎明(1853〜1879年)

1853年、製粉所を経営していたダニエル・シュトラウブ(Daniel Straub)は、金属加工マイスターのシュヴァイツァー兄弟とともに、ガイスリンゲンに金属製品会社「シュトラウブ&シュヴァイツァー(Straub & Schweizer)」を設立しました。従業員わずか16名からの出発でしたが、その技術力は早くも1862年のロンドン万国博覧会で銀メッキの食器や調理器具が受賞するほどの水準に達していました。1868年にはベルリンに最初の販売子会社を設立し、現在まで続く小売店ネットワークの礎を築きました。

WMFの誕生と世界的メーカーへの飛躍(1880〜1918年)

1880年、シュトラウブ&シュヴァイツァーはエスリンゲンの金属製品会社リッター&カンパニーと合併し、株式会社「ヴュルテンベルク金属製品工場(Württembergische Metallwarenfabrik=WMF)」が正式に発足しました。この時期、アール・ヌーヴォー(ユーゲントシュティール)の潮流のもと、WMFアートスタジオの責任者アルベルト・マイヤー(Albert Mayer, 1867〜1944年)が1884年から1914年まで美術監督を務め、花のモチーフや流麗な曲線を特徴とする装飾金属製品で国際的な名声を確立しました。1889年には電気銀メッキのカトラリー生産を開始し、生産コストの革新を実現。1900年までにWMFは3,500人以上の従業員を擁し、世界最大の家庭用金属製品メーカーへと成長しました。

バウハウスの影響と革新素材の誕生(1919〜1949年)

1919年にヴァイマールで設立されたバウハウスは、WMFのデザイン方針に大きな影響を与えました。1927年、WMFは社内にコンテンポラリー・デコラティブ・アート部門(NKA)を設立し、著名なデザイナーや建築家との協働による特別コレクションを展開。同年には世界初の家庭用安全圧力鍋「Sicomatic(ジコマティック)」を発表し、「Siko」の愛称とともに国民的ブランドとしての地位を確立しました。また、カラフルなガラス製品「Ikora(イコラ)」シリーズは、美術工芸品メーカーとしてのWMFの名声をさらに高めました。1927年にはクルップ社のV2A鋼(ステンレス鋼)の使用権を取得し、1930年に「クロマーガン(Cromargan®)」として商標登録。1932年には初のクロマーガン製カトラリーを発表し、銀メッキに代わる新時代の幕開けとなりました。

ヴァーゲンフェルドの時代──モダンデザインの確立(1950〜1970年代)

第二次世界大戦による甚大な被害を乗り越え、1950年代にWMFは再び隆盛を迎えます。この時代のWMFデザインを決定づけたのが、バウハウスの金属工房で学んだヴィルヘルム・ヴァーゲンフェルド(Wilhelm Wagenfeld, 1900〜1990年)です。20年以上にわたりWMFの仕事を手がけた彼は、機能性から生まれる形の美しさを信条とし、クロマーガンの素材特性を最大限に活かしたキッチン用品やテーブルウェアを次々と発表しました。なかでも1954年にデザインされた「マックス&モーリッツ(Max und Moritz)」ソルト&ペッパーシェーカーは、バウハウスの精神を日用品に結実させた名作として現在も生産が続いています。1955年には業務用コーヒーマシンの製造を開始し、1962年にはテーブルナイフの刃の製造、1969年には世界初の全自動コーヒーマシンを発表するなど、事業領域を着実に拡大しました。

国際化とグループセブへの統合(1980年代〜現在)

1980年代以降、WMFは国際的デザイナーとの幅広いコラボレーションを積極的に推進し、多様な個性が製品スタイルに新たな刺激をもたらしました。1998年にはドイツの調理器具メーカー「Silit(シリット)」を、2002年には製菓器具メーカー「Kaiser(カイザー)」を傘下に収め、製品ラインナップを拡充。2009年にはクロマーガンの進化版「クロマーガン プロテクト」を開発し、2018年には天然鉱石由来の画期的素材「フュージョンテック」を発表しました。2012年にKKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)に買収された後、2016年にフランスのグループセブ(Groupe SEB)に統合。WMF、Silit、Kaiser、Schaerer、Heppなど6つのブランドを擁するグループとして、コンシューマー製品、業務用コーヒーマシン、ホテル・レストラン向け設備の3つの事業領域でグローバルに展開しています。

主なインテリア・プロダクトとその特徴

クロマーガン カトラリーコレクション

WMFの原点ともいえるカトラリーは、1932年のクロマーガン製カトラリー発表以来、ブランドの看板製品であり続けています。銀のように美しい輝きを持ちながら、錆びにくく、酸に強く、食器洗浄機にも対応する実用性を備えています。「クロマーガン プロテクト」仕様のカトラリーは、真空炉で1000℃以上に加熱する熱化学処理を施すことにより、日常使いによる傷をほぼ完全に防ぐ耐久性を実現しました。クラシカルなものからモダンなものまで多彩なシリーズが展開されており、家庭からホテル・レストランまで幅広い場面で愛用されています。

マックス&モーリッツ ソルト&ペッパーシェーカー

1954年、ヴィルヘルム・ヴァーゲンフェルドがデザインしたソルト&ペッパーシェーカー「マックス&モーリッツ」は、WMFを象徴するアイコニックな製品です。ヴィルヘルム・ブッシュの同名の絵本に登場するいたずら好きの双子にちなんで名付けられたこの作品は、クロマーガンとガラスの組み合わせによるシンプルかつ愛らしいフォルムが特徴です。バウハウスの理念である「機能から生まれる美」を体現した名作として、70年以上にわたり生産が続けられています。

圧力鍋 パーフェクトシリーズ

1927年に世界初の家庭用安全圧力鍋「Sicomatic」を発表して以来、WMFは圧力鍋のパイオニアとして知られています。現行の「パーフェクト」シリーズは、世界初のワンタッチ着脱式ハンドルを採用し、技術部品をすべてハンドル内に収めた革新的な設計が特徴です。加圧時の驚くほどの静音性、直感的な操作性、そして分解洗浄の容易さにより、圧力鍋の新たな基準を打ち立てました。

フュージョンテック ミネラルシリーズ

2018年に発表された「フュージョンテック ミネラル」は、WMFの素材技術の結晶ともいえるシリーズです。約30種類の厳選された天然鉱石を1300℃の高温で融解し、独自のミネラル素材を生成。ガラスと同じ中性の表面は酸やアルカリの影響を受けず、傷やひび割れにも極めて強い特性を持ちます。高い遠赤外線放射率と優れた熱伝導性により、食材の旨味を損なうことなく調理できる点が高く評価されています。鍋、フライパン、マルチポットなど多彩なアイテムを展開しています。

業務用全自動コーヒーマシン

WMFの業務用コーヒーマシンは、1955年の製造開始から半世紀以上の歴史を持ち、1969年には世界初の全自動コーヒーマシンを発表しました。現在では業務用全自動コーヒーマシン市場で世界シェア約28%を占めるリーディングブランドとして、レストラン、ホテル、空港、クルーズ船など世界中の施設で採用されています。1日150杯から1000杯までの幅広い規模に対応する製品群と、迅速なアフターサービス体制が、プロフェッショナルからの厚い信頼を支えています。

アール・ヌーヴォー期の装飾金属製品

19世紀末から20世紀初頭にかけて、アルベルト・マイヤーの指揮のもとWMFアートスタジオが生み出したユーゲントシュティール様式の銀メッキ製品群は、今日のアンティーク市場においても極めて高い評価を受けています。花卉文様や人物像を配したセンターピース、花瓶、クラレットジャグ、名刺トレイなどは、世界各地の美術館にも所蔵されており、装飾金属工芸の最高峰として美術史にその名を刻んでいます。

主なデザイナー

アルベルト・マイヤー(Albert Mayer, 1867〜1944年)

彫刻家・デザイナーとして、1884年から1914年までWMFアートスタジオの美術監督を務めました。ユーゲントシュティール(アール・ヌーヴォー)様式の装飾金属製品のデザインを統括し、WMFを世界最大の家庭用金属製品メーカーへと押し上げる原動力となりました。人物像や自然のモチーフを取り入れた優美な造形は、現在もアンティーク市場で高い評価を受けています。

ヴィルヘルム・ヴァーゲンフェルド(Wilhelm Wagenfeld, 1900〜1990年)

バウハウスの金属工房で学び、20世紀ドイツを代表する工業デザイナーとして活躍しました。バウハウスの名作「ヴァーゲンフェルド テーブルランプ(WA24)」の作者としても知られています。1950年代から20年以上にわたりWMFのデザインを手がけ、クロマーガンの素材特性を活かした機能的かつ美しいキッチン用品・テーブルウェアを数多く発表。「マックス&モーリッツ」ソルト&ペッパーシェーカーをはじめとする作品群は、日用品における民主的なデザインの理想を体現しています。

クルト・マイヤー(Kurt Mayer)

1950年代にWMFのカトラリーデザインを手がけた工業デザイナーです。1955年にデザインされた「4100 ストックホルム ローレル」シリーズなど、モダニズムの精神を反映した洗練されたカトラリーコレクションを発表し、戦後のWMFデザインの方向性を確立する一翼を担いました。

カール・ヴィーデマン(Karl Wiedmann)

1930年代にWMFのガラス製品デザインを担当し、アール・デコ期の「Ikora(イコラ)」シリーズのガラス作品で知られています。色彩豊かなクラックルガラスや装飾ガラスのデザインは、WMFの美術工芸品メーカーとしての名声を高めることに大きく貢献しました。

基本情報

正式名称 WMF GmbH(旧称:Württembergische Metallwarenfabrik AG)
日本語表記 ヴェーエムエフ
設立 1853年(シュトラウブ&シュヴァイツァーとして創業)、1880年にWMFとして発足
創業者 ダニエル・シュトラウブ(Daniel Straub)、フリードリヒ&ルイス・シュヴァイツァー兄弟(Friedrich & Louis Schweizer)
本社所在地 ドイツ、バーデン=ヴュルテンベルク州 ガイスリンゲン・アン・デア・シュタイゲ(WMF Platz 1, 73312 Geislingen an der Steige, Germany)
親会社 グループセブ(Groupe SEB)※2016年より傘下
日本法人 株式会社グループセブ ジャパン(東京都港区)
主な事業領域 コンシューマー向けキッチン&テーブルウェア、業務用コーヒーマシン、ホテル&レストラン向け設備
グループブランド WMF、Silit、Kaiser、Schaerer、Hepp、Curtis
展開国 世界約90カ国
直営店舗 ドイツ、オーストリア、スイスを中心に約200店舗
独自素材 Cromargan®(クロマーガン)、Cromargan protect®(クロマーガン プロテクト)、Fusiontec(フュージョンテック)
公式サイト(グローバル) https://www.wmf.com/
公式サイト(日本) https://www.wmf.co.jp/
公式オンラインショップ(日本) https://shop.wmf.co.jp/