Viccarbe ヴィッカルベ
Viccarbe(ヴィッカルベ)は、スペイン・バレンシアの地中海性気候が育んだ独自の美学を持つコンテンポラリー家具ブランドです。1999年の創業以来、創業者であるヴィクトル・カラスコ・ベルランガの情熱と先見性により、世界80カ国以上で愛される国際的なデザインブランドへと成長を遂げました。地中海の豊かな陽光がもたらす温かみのある色彩感覚、素材への深い理解、そして細部への徹底したこだわりを体現し、コラボレーティブスペースのための革新的な家具を創造し続けています。
Viccarbeの作品群は、Patricia Urquiola、John Pawson、Jaime Hayon、Piero Lissoniといった世界を代表するデザイナーたちとの長年にわたる協働の結晶です。彼らはそれぞれ異なる視点から地中海的ライフスタイルを解釈し、ミニマリズムと温もり、機能性と美しさ、革新性とタイムレスな魅力を兼ね備えた作品を生み出してきました。2021年には世界的オフィス家具メーカーであるSteelcaseの傘下に入り、その優れたデザイン哲学とクラフツマンシップをさらに広く世界へと届けています。
ブランドの特徴とデザイン哲学
地中海の光が育む美学
バレンシアという土地は、年間300日以上も太陽が降り注ぐ地中海性気候に恵まれています。この豊かな光は、Viccarbeのデザイン美学の根幹を成す要素であり、色彩への感覚、素材の温もりの表現、細部へのこだわり、そしてユーモアのセンスにまで影響を及ぼしています。地中海文化特有の明るさと寛容さ、人々が自然に集い語らう開放的な空間への憧憬が、すべての製品に息づいています。
創業者ヴィクトル・カラスコは、幼少期から祖父より受け継いだ実践的な姿勢のもと、デザインと創造を学びました。若き日にバレンシアの伝統的な家具工場で働いた経験は、クラフツマンシップの本質と、新しい時代に求められるデザインの可能性を理解する礎となりました。Viccarbeという名は、カラスコの大学卒業論文プロジェクトに大学側が彼のイニシャルから名付けたものであり、偶然の産物でありながら、彼の個性とビジョンを完璧に体現する名称となったのです。
コラボレーティブスペースへの革新的アプローチ
Viccarbeは、単なる家具メーカーではなく、人々が集い、対話し、創造性を発揮するための空間を形作るパートナーです。現代社会における働き方や生活様式の変化を鋭敏に捉え、柔軟性と適応性を備えた家具システムを提案しています。オフィス、ホテル、レストラン、そして住空間において、人々の自然な動きと交流を促す家具の配置、快適さと機能性の両立、美しさと実用性の調和を追求しています。
Apple、Google、LinkedInといった革新的企業が同社の家具を採用していることは、Viccarbeのデザインが現代の多様な働き方と創造的環境の構築に貢献している証左です。固定された机と椅子という従来型のオフィス概念を超え、人々が自由に移動し、様々な姿勢で思考し、自然に協働できる空間を実現する家具システムを提供しています。
持続可能性への真摯な取り組み
Viccarbeは環境への配慮を企業哲学の中核に据えています。すべての製品はスペイン国内で製造され、供給業者の70%が工場から2時間以内の距離に位置することで、輸送による環境負荷を最小限に抑えています。使用する木材はFSCまたはPEFC認証を取得したもの、ポリプロピレンは100%リサイクル可能な素材を選択し、エアゾールや汚染された金属材料の使用を排除しています。
さらに注目すべきは、持続可能性を追求するファッションブランドEcoalfとのパートナーシップです。この協働により、家具製造における新しい持続可能素材の開発に取り組み、デザイン業界における環境配慮の新たな可能性を切り開いています。すべての製品に5年間の品質保証を提供し、長期にわたって使用できる耐久性の高い家具を作ることで、廃棄物の削減にも貢献しています。この「長く愛される家具」という思想こそが、真の持続可能性であるとViccarbeは信じています。
ブランドヒストリー
Viccarbeの物語は、一人の若きデザイナーの情熱から始まりました。1974年にバレンシアで生まれたヴィクトル・カラスコ・ベルランガは、バレンシア工科大学で優秀な成績を収めて工業デザイン工学の学位を取得しました。彼は幼少期から家具デザインに魅了され、バレンシア周辺に数多く存在する家具工場で働く機会を得て、業界の内側から学ぶという貴重な経験を積みました。この実践的な学びと、失読症を乗り越える過程で培った独自の視覚的思考法が、彼の創造性の源泉となったのです。
1999年から2000年にかけて、カラスコはダニエル・ベネディートとともにViccarbeを創業しました。当初は小規模な工房でしたが、流行に左右されない本質的なデザイン、地中海文化への深い敬意、そして国際的なデザイナーとの協働という明確なビジョンのもと、着実に成長を遂げていきます。2000年代初頭、スペイン出身の世界的デザイナーPatricia Urquiolaとの協働が始まり、彼女がデザインした「Last Minuteスツール」がブランドの代表作となりました。この成功により、Viccarbeは国際的な注目を集めることとなります。
2008年には、その卓越した企業活動に対してスペイン王室よりPrincipe Felipe賞が授与され、デザイン業界におけるViccarbeの地位が確固たるものとなりました。その後もGood Design賞、Red Dot賞など数々の国際的な栄誉に輝き、60カ国以上への展開を実現。2021年10月には、10年以上にわたる良好なパートナーシップを基盤として、世界的オフィス家具メーカーSteelcaseによる買収が発表されました。この統合により、Viccarbeの地中海的デザイン哲学とSteelcaseのグローバルな販売網・研究開発力が結合し、さらなる成長への道を歩み始めています。
創業から四半世紀を経た現在、Viccarbeは世界80カ国以上で展開され、バレンシアの本社工場では熟練した職人たちが一つひとつの製品を丁寧に仕上げています。地元の伝統的なクラフツマンシップと最先端のデザイン技術の融合、地中海の精神と国際的な視野の調和こそが、Viccarbeを唯一無二の存在たらしめているのです。
主要なインテリアとその特徴
Aletaコレクション
スペインを代表するアーティスト兼デザイナーであるJaime Hayon(ハイメ・アジョン)が2017年にデザインしたAletaコレクションは、Viccarbeを象徴する作品の一つです。「Aleta」とはスペイン語で「ヒレ」を意味し、その名の通り、サメの生理学的特徴と優雅な動きからインスピレーションを得た流麗なシルエットが特徴です。曲線を描く背もたれは座る人を優しく包み込み、長時間の使用でも快適性を保ちます。
このコレクションの誕生には興味深いエピソードがあります。Hayonとカラスコは偶然飛行機の中で隣り合わせになり、そこで意気投合したことがコラボレーションのきっかけとなりました。両者ともバレンシアを拠点とし、ユーモアと詩的感性を重んじるデザイン哲学を共有していたことから、完璧なマッチングとなったのです。Aletaは椅子、ラウンジチェア、エグゼクティブバージョン、スツール、ローテーブルで構成され、オフィス、ホスピタリティ空間、レストラン、住宅など多様な環境に対応します。木製または金属のベース、アームレストの有無など豊富なカスタマイズオプションにより、あらゆるプロジェクトの要求に応えることができます。
Last Minuteスツール
Patricia Urquiola(パトリシア・ウルキオラ)が2006年にデザインしたLast Minuteスツールは、Viccarbeを国際的なブランドへと押し上げた記念碑的作品です。ロトモールド成形されたポリエチレンの人間工学的なシート部分と、洗練されたスチールフレームの組み合わせは、コンテンポラリー・スペインデザインの新鮮で自由な精神を体現しています。
このスツールの真の革新性は、その多機能性にあります。高さの異なる3つのバージョン(ハイ、ミディアム、ロー)が用意され、キッチンアイランド、バーカウンター、ワーキングハブ、さらには屋外のテラスまで、あらゆる状況に適応します。シート部分はそのままでも使用できますが、Viccarbeのファブリックコレクションでアップホルスターすることも可能で、プロジェクトごとに最適な仕様を選択できます。軽量でありながら頑丈な構造は、商業施設での集中的な使用にも耐える耐久性を持ち、20年近く経った現在もモダンクラシックとして世界中で愛され続けています。
Trestleテーブルシステム
英国を代表するミニマリスト建築家John Pawson(ジョン・ポーソン)がデザインしたTrestleは、コラボレーションとクリエイティビティを促進するテーブルシステムです。無垢のオーク材の重厚な脚部と、対照的に薄いテーブルトップの組み合わせは、視覚的な軽やかさと堅牢性を両立させています。Pawsonの特徴である完璧なプロポーションと洗練された美学が、この作品にも如実に表れています。
Trestleシステムの真価は、その驚異的な柔軟性にあります。3種類の高さ(テーブル74cm、カウンター88cm、バー105cm)、多様な素材とボードサイズの組み合わせにより、個人使用からチームミーティング、カフェからオフィスまで、あらゆる空間に対応します。特筆すべきは、Viccarbeが特許を取得した電気配線ソリューションです。ケーブルを脚部内に完全に隠蔽し、接合部やネジを一切見せることなく、圧力によって装着する革新的な機構により、ミニマリストな外観を保ちながら高い機能性を実現しています。テーブルトップに自然に統合される控えめなパワーボックスも選択でき、現代のワークスペースに不可欠な電源供給をスマートに解決しています。
Seasonコレクション
イタリアの巨匠Piero Lissoni(ピエロ・リッソーニ)がデザインしたSeasonコレクションは、幾何学的形態と有機的な快適さを融合させた傑作です。Seasonチェアは、背もたれと座面という二つの明確に認識できるパーツから構成され、エッジのない柔らかな幾何学形態が特徴です。無垢材のフレームに変形しないポリウレタンフォームを組み合わせ、豊富なファブリックとレザーのオプションから選択できます。
このコレクションの独創的な特徴は、ベース部分に隠された小さなキャスターです。この実用的なディテールにより、椅子を容易に移動でき、レストラン、ロビー、ラウンジなど多様な環境での使用における柔軟性が大幅に向上しています。さらに、足元の前面部分には技術的なファブリックの保護帯が施され、使用による摩耗を防ぎます。当初はベンチとプーフからスタートしたSeasonコレクションにチェアが加わったことで、一貫した美学を持つ完全な家具システムとなり、住宅のダイニングルームから商業施設まで幅広く対応しています。
Foroテーブル
John Pawsonによるもう一つの傑作であるForoテーブルは、古代ローマのフォルム(公共広場)という概念から着想を得ています。人々が集い、社会的・経済的活動を行った市場という文化的背景が、このテーブルのデザインコンセプトの出発点となりました。対話、アイデア交換、饗宴、そして人々が一堂に会するという協働的概念を、現代の文脈で物質化したものです。
無垢のオーク材から丁寧に作られたForoテーブルは、豊かさ、耐久性、温もりをあらゆる空間にもたらします。スクエアまたはレクタンギュラーのバージョンがあり、脚部は45度の角度で配置されたミニマリストな外観です。この脚部の中にはワイヤーが隠蔽され、テーブル中央部には電源ソケットバンクへアクセスできるハッチが設けられています。この革新的な電気配線システムにより、ケーブルの乱雑さを排除し、クリーンで機能的なワークスペースを実現します。仕事や余暇のための空間に、リッチさ、質感、そして奥行きをもたらすForoは、現代の協働的環境における理想的なテーブルソリューションです。
その他の注目コレクション
Viccarbeのコレクションは、これらの代表作以外にも多数の優れた作品を擁しています。Patricia UrquiolaによるBurinテーブルは、彫刻的な美しさと実用性を兼ね備え、家族の団らんや商談の場に温かみのある雰囲気をもたらします。Victor Carrasco自身がデザインしたSavinaソファは、雲のような柔らかさで使用者を包み込み、リラクゼーションの完璧な聖域を創出します。Naoto FukasawaによるCommonベンチシステムは、待合スペースやウェルカムエリアを多目的な協働空間へと変容させます。
Lievore Altherr MolinaがデザインしたSistemaモジュラーソファシステムは、極めて高い汎用性を持ち、アームレスト、背もたれ、座面、アクセサリーの種類を自由に組み合わせることで、各スペースのニーズに応じた無限の構成を可能にします。これらすべての作品が、地中海のライフスタイルを独自の視点で解釈し、最高品質の基準に従って創造された、Viccarbeの総合的なビジョンの一部を成しているのです。
主要なデザイナー
Patricia Urquiola
1961年にスペイン・オビエドで生まれたPatricia Urquiolaは、現代デザイン界を代表する女性デザイナーの一人です。マドリード工科大学とミラノ工科大学で建築を学び、巨匠Achille Castiglioniのもとで論文を完成させました。1990年代にはDe Padova社で新製品開発に携わり、Vico Magistrettiとともに数々の名作を生み出しました。2001年に自身のスタジオをミラノに設立して以降、B&B Italia、Moroso、Kartell、Foscariniなど世界的ブランドとの協働を展開しています。
Viccarbeとの長年にわたるパートナーシップにおいて、Urquiolaは「Last Minuteスツール」や「Burinテーブル」といったブランドのアイコン的作品を創造してきました。彼女のデザインは、清潔なモダン美学とスペイン・イタリアの伝統的工芸技術(特にテキスタイル)を融合させた独特のスタイルで知られています。折衷的な文化要素を引き出し、デザインをヒューマナイズする彼女の才能は、Viccarbeの地中海的哲学と完璧に調和しています。
John Pawson
1949年にイギリス・ヨークシャーのハリファックスで生まれたJohn Pawsonは、ミニマリズム建築の巨匠として国際的に認知されています。若き日に日本に滞在し、特に建築家・デザイナーの倉俣史朗のスタジオを訪れた経験が、彼のデザイン哲学形成に大きな影響を与えました。プロポーション、光、そして素材への深い理解に基づく彼の作品は、究極の簡潔さと精神性を追求しています。
Viccarbeのために創造した「Trestleテーブルシステム」と「Foroテーブル」は、Pawsonの特徴である完璧なプロポーション、洗練された素材使用、そして機能性と美しさの調和を体現しています。無駄を削ぎ落とした形態の中に深い思索と丁寧なディテールが宿る彼の作品は、Viccarbeのコレクションに知的な静謐さと普遍的な美しさをもたらしています。
Jaime Hayon
1974年にマドリードで生まれたJaime Hayonは、アーティストとデザイナーの境界を越境する独創的なクリエイターです。マドリードとパリで工業デザインを学んだ後、1997年にベネトンが資金提供するデザイン・コミュニケーションアカデミーFabricaに参加し、2003年までデザイン部門のディレクターを務めました。その後独立し、&traditionなどスカンディナビアのブランドをはじめ、世界中のメーカーとの協働で知られるようになりました。
Viccarbeとの協働は、Hayonとカラスコが飛行機内で偶然隣り合わせになったという運命的な出会いから始まりました。同じバレンシアを拠点とし、デザインにユーモアと詩的感性を注入するという共通の価値観を持つ二人の出会いは、必然とも言える完璧なマッチングでした。Hayonが創造した「Aletaコレクション」は、彼の特徴である明確な線と遊び心の見事な融合を示し、Viccarbeのコレクションに躍動感と親しみやすさをもたらしています。
Piero Lissoni
イタリアを代表する建築家・デザイナーであるPiero Lissoniは、建築から家具、製品デザインまで幅広い分野で活躍しています。ミラノを拠点とする彼のスタジオLissoni Associatiは、Kartell、Cassina、B&B Italia、Living Divaniなど数多くの一流ブランドとの協働で知られ、洗練されたミニマリズムと実用性の完璧なバランスを追求しています。
Viccarbeのために創造した「Seasonコレクション」は、Lissoniの純粋な形態への探求を示しています。幾何学的でありながら有機的、構造的でありながら快適というバランスの取れた作品は、住宅からホスピタリティ空間、企業環境まで多様な文脈で機能します。プロポーションとエレガンスを重視する彼のデザイン哲学は、Viccarbeの地中海的温もりと調和し、タイムレスな魅力を持つ作品群を生み出しています。
その他の協働デザイナー
Viccarbeは、これらの主要デザイナーに加え、Jean-Marie Massaud、Naoto Fukasawa、Arik Levy、Lievore Altherr Molinaといった国際的に著名なデザイナーたちとも継続的な協働関係を築いています。フランスの巨匠Jean-Marie Massaudは「Ad-hoc」チェアなど芸術的な作品でViccarbeのViccarte(アート家具)ラインに貢献し、日本のデザイナーNaoto Fukasawaは「Commonベンチシステム」で協働空間に新しい可能性をもたらしました。
これらの多様な才能との協働を通じて、Viccarbeは単一のスタイルに固執することなく、それぞれのデザイナーの独自性を尊重しながら、ブランド全体として一貫した地中海的美学と品質基準を維持しています。この開かれた協働の姿勢こそが、Viccarbeを常に進化し続ける革新的なブランドたらしめているのです。
基本情報
| ブランド名 | Viccarbe(ヴィッカルベ) |
|---|---|
| 設立 | 1999年 |
| 創業者 | Víctor Carrasco Berlanga(ヴィクトル・カラスコ・ベルランガ)、Daniel Benedito(ダニエル・ベネディート) |
| 所在地 | スペイン・バレンシア Travesía Camí El Racó 23, P.I. Norte, 46469 Beniparrell, Valencia, Spain |
| 現在の所有企業 | Steelcase Inc.(2021年10月買収) |
| 主要デザイナー | Patricia Urquiola、John Pawson、Jaime Hayon、Piero Lissoni、Jean-Marie Massaud、Naoto Fukasawa、Arik Levy、Lievore Altherr Molina |
| 製品カテゴリー | チェア、アームチェア、ラウンジチェア、ソファ、スツール、テーブル、ベンチ、その他コラボレーティブ家具 |
| 生産地 | すべてスペイン製(Made in Spain) |
| 展開地域 | 世界80カ国以上 |
| 主な賞 | Principe Felipe Award(2008年)、Good Design Award、Red Dot Award |
| 認証 | ISO 14001環境マネジメントシステム認証、FSC/PEFC森林認証木材使用 |
| 保証期間 | 5年間(通常使用における品質保証) |
| 公式サイト | https://www.viccarbe.com/ |