LEUCHTTURM1917 ― 灯台が照らす、手書きの未来

LEUCHTTURM1917(ロイヒトトゥルム1917)は、1917年にドイツで創業した老舗ステーショナリーブランドである。「LEUCHTTURM」はドイツ語で「灯台」を意味し、その名の通り、一世紀以上にわたり文房具の品質と機能性において確かな指針を示し続けてきた。切手・コインアルバムの製造から出発した同社は、2005年にノートブックブランド「LEUCHTTURM1917」を立ち上げ、瞬く間に世界80カ国以上で愛される存在へと成長した。ページ番号の印刷、目次ページの搭載、インクに強い用紙、豊富なカラーバリエーションなど、ディテールへの徹底したこだわりが同ブランドの核心であり、その機能美あふれるプロダクトは、バレットジャーナル愛好家をはじめ世界中のクリエイターや知識労働者に支持されている。ドイツの名門企業・ブランドを収録したベストセラー事典「DEUTSCHE STANDARDS」にも掲載され、メルセデス・ベンツやBMWと並び称されるドイツの品質の象徴的存在である。

ブランドの特徴・コンセプト

LEUCHTTURM1917の哲学は、「小さなディテールが大きな違いを生む(Details make the difference)」という一文に集約される。同ブランドは、ノートブックを単なる消耗品ではなく、思考を育み、記憶を紡ぐための「耐久消費財」と位置づけている。すべての製品は、書き終えた後も捨てられることなく、個人のアーカイブとして大切に保管されることを前提に設計されている。

機能性へのこだわり

LEUCHTTURM1917のノートブックには、使い手の生産性と創造性を最大限に引き出すための工夫が随所に施されている。全ページにページ番号が印刷され、冒頭には空白の目次ページが設けられている。これにより、書き込んだ内容を後から体系的に参照することが可能となる。さらに、ゴム製のエンクロージャーバンド、しおり用のリボンマーカー、背表紙用のラベルステッカー、裏表紙内側のガゼットポケットなど、実用性を追求した付属品が標準装備されている。糸綴じ製本により180度フルフラットに開くことができ、筆記時のストレスを軽減する設計も特筆に値する。

用紙品質

標準的なノートブックには80g/m²の中性紙が採用され、万年筆やローラーボールペンのインクに対しても高い耐性を持つ。バレットジャーナルエディション2では120g/m²のFSC認証紙が使用され、より厚みのある書き心地と裏抜けへの万全な対策が施されている。すべての用紙はFSC認証を取得しており、環境に配慮した原材料調達が徹底されている。

カラーの世界観

LEUCHTTURM1917の大きな魅力のひとつが、豊富かつ洗練されたカラーバリエーションである。毎年テーマに基づいた新色が発表され、定番色と合わせて常時多数のカラーが展開されている。2026年コレクションでは1970年代のクリエイティブなエネルギーからインスピレーションを得た大胆な色調が採用されるなど、時代の感性と共鳴するカラー戦略を展開している。ノートブック、ペン、ペンループに至るまで同色で統一できるコーディネートシステムも、デザインコンシャスなユーザーから高い評価を得ている。

サステナビリティ

LEUCHTTURM1917は、製品そのものが持つ「保存される」という本質的な特性を、最も根源的なサステナビリティと捉えている。書き終えたノートブックは多くのユーザーによって大切に保管され、廃棄されることは稀である。この「捨てられない製品づくり」という思想こそが、同ブランドの環境哲学の根幹をなしている。用紙にはFSC認証素材を採用し、責任ある森林管理に基づく原材料調達を実践している。

ブランドヒストリー

創業期:切手アルバムから始まった物語(1917年〜)

1917年5月8日、リトグラフ作家であり熱心な切手収集家でもあったパウル・コッホと、ビジネスパートナーのバインが、ドイツ・ザクセン=アンハルト州アッシャースレーベンに「KABE出版社(Koch & Bein)」を設立した。同社は精緻な印刷技術を駆使した高品質の切手アルバムを製造し、コレクター市場において確かな地位を築いていった。しかし1930年代に入り、コッホは財政上の理由から自ら創業した出版社を手放すこととなった。

戦後の再出発:ハンブルクに灯る新たな灯台(1948年〜)

第二次世界大戦の終結後、パウル・コッホはわずかな資本を元手に、ハンブルクにて「LEUCHTTURM Albenverlag(ロイヒトトゥルム・アルベン出版社)」を新たに設立した。「灯台」の名を冠したこの新会社は、切手アルバムの製造を主軸に事業を再開する。一方、旧KABEは新たなオーナーのもとで戦中を生き延び、1953年に東ドイツでの国有化を経てゲッピンゲンで再建された。コッホは1956年に逝去し、会社はハンブルク近郊のゲーストハハトに移転した。

国際展開とシュトゥルケン家の経営(1960年代〜)

1959年にハンブルクの実業家ヴォルフガング・シェーンが経営に参画し、輸出拡大に着手した。1962年にはクルト・シュトゥルケンが入社し、海外事業の推進役を担った。1967年にはニューヨークに海外初の現地法人「Lighthouse Publications, Inc.」が設立され、1972年にはカナダ・モントリオールにも拠点を開設。切手・コインアルバム分野において世界最大級のサプライヤーへと成長を遂げた。1972年、シュトゥルケンはコッホ家から経営権を取得し、1990年にはフランスのフィラテリーアルバムブランド「MOC」を買収。1997年には、かつてコッホが創業した旧KABE出版社との統合を果たし、創業者が築いた二つの出版社が再びひとつとなった。

第四世代とステーショナリーブランドの誕生(1990年代〜2005年)

1990年代末、クルト・シュトゥルケンの息子であるアクセル・シュトゥルケンとマックス・シュトゥルケンが第四世代として経営を引き継いだ。ハンザ同盟都市の伝統を受け継ぐ家族経営の精神を維持しつつ、オンライン販売への移行と国際市場のさらなる開拓を推進した。2004年にフィリップ・デーブラーを招聘し、翌2005年にステーショナリーブランド「LEUCHTTURM1917」を立ち上げた。ページ番号、目次ページ、ラベルステッカー、インク耐性用紙など、競合製品にはなかった機能的ディテールを武器に、世界のノートブック市場に新風を吹き込んだ。現在ではノートブック事業が会社全体の売上の半分を占めるまでに成長している。

主なプロダクトラインとその特徴

ノートブック・クラシック

LEUCHTTURM1917の象徴的存在であるクラシックノートブックは、ハードカバーとソフトカバーの2種類で展開される。サイズはA7(ポケット)からA4+(マスター)まで幅広く揃い、罫線タイプはドット方眼、横罫、方眼、無地の4種類から選択可能である。A5ミディアムサイズのハードカバー・ドット方眼が最も広く普及しており、ブランドを代表するプロダクトとして世界中で親しまれている。80g/m²の中性紙に249ページ(ハードカバー)が収められ、すべてのページにページ番号が振られている。

バレットジャーナル・エディション2

ニューヨークのデザイナー、ライダー・キャロルが考案したバレットジャーナルメソッドとの公式コラボレーションにより誕生した専用ノートブックである。国際的なバレットジャーナルコミュニティとの綿密な対話を経て開発されたエディション2は、120g/m²のFSC認証用紙、206ページのドット方眼、ページディバイダー、曜日・月のステッカーシート、3本のリボンマーカー、インデックスとフューチャーログなど、自己管理のための最適な機能を搭載している。

MONOCLE by LEUCHTTURM1917

英国発の国際的ライフスタイルマガジン「MONOCLE」との共同プロジェクトとして展開されるプレミアムエディションである。ヨーロピアンリネンの表紙にゴールドのMONOCLEロゴが箔押しされ、洗練された都市生活者のための上質なコレクションとして位置づけられている。ノートブック、ウィークリーダイアリー、Drehgriffel筆記具がラインナップされ、MONOCLEが編纂した「20 ideas for living a quieter, more considered life」ガイドが綴じ込まれている。

Drehgriffel ― ツイスト式筆記具

1920年代のデザインにインスピレーションを得た六角形シルエットのツイスト式筆記具である。精密切削加工されたアルミニウムボディに、カラーコントラストが映えるテーパードチップとツイストボタンを配した個性的なデザインが特徴である。Drehgriffel Nr. 1(ボールポイント/ジェルインク)とDrehgriffel Nr. 2(メカニカルペンシル)の2モデルが展開され、いずれもRed Dot Design Awardを受賞している。ノートブックのカラーに合わせた統一感のあるコーディネートが可能である。

PEKAスプリングバックバインダー

LEUCHTTURM社の創業期から続くクラシックプロダクトのひとつである。穴を開けずに書類を綴じることができる独自のスプリング機構を持ち、最大150枚の用紙を本のように確実に固定する。レシピカード、証明書、スケッチ、楽譜など多様な用途に対応し、A4、A5、A4横など複数サイズで展開されている。創業時と変わらぬ製法で作られ続けている製品も存在し、ブランドの一貫した品質哲学を象徴する存在である。

Outlines 防水ノートブック

アウトドアや悪天候下での使用を想定したウェザープルーフノートブックである。ペーパーバック仕様のB6+サイズで、雨や湿気に強い特殊素材を採用し、フィールドワークや旅先での記録に適している。

スケッチブック・スケッチノートジャーナル

ビジュアルシンキングやイラストレーションに特化したラインナップである。A6からA4+まで複数サイズを展開し、描画に適した用紙と180度に開くフラットバインディングにより、クリエイターの制作環境を支えている。

特別エディション・コラボレーション

LEUCHTTURM1917は時代の文化的潮流と共鳴する特別エディションを定期的に発表している。バウハウス100周年記念エディションでは、三原色とバウハウスの幾何学的フォルムを取り入れたコレクションを展開し、Red Dot Design Awardを受賞した。ワシリー・カンディンスキーの「すべては一つの点から始まる(Everything starts from a dot)」という言葉を引用したこのエディションは、ドット方眼ノートとバウハウスの精神を見事に結びつけた。そのほか、「Rising Colours」「Smooth Colours」「Muted Colours」「Natural Colours」など、テーマ別のカラーコレクションも展開されている。

受賞歴・評価

LEUCHTTURM1917は、国際的なデザイン賞において高い評価を受けている。Drehgriffel Nr. 1は2020年にRed Dot Design Awardを受賞し、続くDrehgriffel Nr. 2も2022年に同賞を獲得した。また、A4+フォーマットのMaster Slim Dottedノートブックや、バウハウス100周年記念エディションもRed Dot Design Awardに選出されている。ドイツの名門企業・ブランドを紹介する「DEUTSCHE STANDARDS」にも長年にわたり掲載されており、メルセデス・ベンツやBMWといった世界的ブランドと肩を並べるドイツ品質の象徴として認知されている。

基本情報

ブランド正式名称 LEUCHTTURM1917(ロイヒトトゥルム1917)
運営会社 LEUCHTTURM Gruppe GmbH & Co. KG
創業 1917年5月8日(KABE出版社として)/ 1948年(LEUCHTTURM Albenverlag設立)/ 2005年(LEUCHTTURM1917ブランド発足)
創業者 パウル・コッホ(Paul Koch)
現経営者 アクセル・シュトゥルケン、マックス・シュトゥルケン(第四世代)
本社所在地 ドイツ・シュレースヴィヒ=ホルシュタイン州 ゲーストハハト
拠点 ドイツ、アメリカ、カナダ、スウェーデン、中国(世界5拠点)
従業員数 約500名(うち300名以上がゲーストハハト本社勤務)
展開国 世界80カ国以上
主要プロダクト ノートブック、プランナー、バレットジャーナル、スケッチブック、筆記具(Drehgriffel)、ペンループ、スプリングバックバインダー、ポートフォリオ
主な受賞歴 Red Dot Design Award(複数回受賞)、DEUTSCHE STANDARDS掲載
公式サイト https://www.leuchtturm1917.com
日本国内取扱 平和堂(日本総代理店 / leuchtturm1917.jp)、伊東屋、DELFONICS、HIGHTIDE ほか