クエロ(CUERO)

クエロは、スウェーデンの森深くで生まれた家族経営のファニチャーブランドです。 1986年、創業者ラース・シェスタディウスが南米から高級レザー製品をスウェーデンへ輸入する事業を開始したことに端を発します。 やがてアルゼンチン発祥の名作「バタフライチェア」と運命的な出会いを果たしたラースは、 その造形美に魅せられながらも座り心地の改善に情熱を注ぎ、15年もの歳月をかけて独自の改良を重ねました。 オリジナルよりも30パーセント大きく設計された「マリポーサ」は、現代人の体格に適した究極の座り心地を実現し、 スウェーデン産スチールとイタリア・トスカーナ産の植物タンニン鞣しレザーという最高峰の素材が融合した、 世界で最も美しく快適なバタフライチェアとして名声を確立しました。

「ネイチャー・ミーツ・アート(Nature meets Art)」を掲げるクエロは、 自然素材の持つ本質的な美しさと職人技の融合を追求しています。 現在は創業者の息子ニルス・シェスタディウスと、パタゴニア出身の妻アグスティーナが二代目として事業を継承し、 スウェーデンとアルゼンチンという地球の反対側に位置する二つの国の伝統と美意識を融合させながら、 世代を超えて受け継がれる家具づくりを続けています。

ブランドの特徴・コンセプト

クエロのデザイン哲学は「ネイチャー・ミーツ・アート」という言葉に集約されます。 自然が育んだ最高品質の素材を、熟練の職人技によって芸術作品へと昇華させること。 それがクエロのものづくりの根幹です。

使用される素材は厳選を極めています。 レザーはイタリア・トスカーナ地方の伝統的な植物タンニン鞣し製法で仕上げられたものを採用。 クロム鞣しとは異なり、栗や樫の樹皮から抽出した天然タンニンによって時間をかけて鞣されたレザーは、 使い込むほどに深い艶と独特のパティナ(経年変化による風合い)を纏い、唯一無二の表情を見せます。 その芳醇な香りは上質なワインにも例えられ、本物の革だけが持つ官能的な魅力を放ちます。

シープスキンはアイスランド産を使用。 ヴァイキング時代から変わらぬ品種の羊が、汚染のない大地で自然放牧され、 厳しい気候の中で育まれた毛皮は類まれな保温性と柔らかさを誇ります。 食肉産業の副産物として持続可能な方法で調達され、エコロジカルな鞣し加工により自然な色合いが保たれています。

フレームにはスウェーデン産の12ミリ厚ソリッドスチールを使用。 ロボット技術による精密な加工と、職人の手仕事による仕上げが融合し、 何世代にもわたって使い続けられる堅牢性を実現しています。

ブランドヒストリー

クエロの歴史は、1986年にラース・シェスタディウスが南米からスウェーデンへ高級レザー製品の輸入を始めたことに遡ります。 事業を通じてラースはアルゼンチン発祥のバタフライチェアと出会い、 そのレザーとスチールの融合による造形美、職人技と工業生産の調和という設計思想に深く感銘を受けました。

しかしラースは同時に、1938年にデザインされたオリジナルのバタフライチェアには課題があることにも気づいていました。 当時の人々の体格に合わせて設計されたサイズは、20世紀後半の人々にとって窮屈で座り心地が良くなかったのです。 この課題を解決すべく、ラースは10年以上の歳月を費やして改良を重ねました。

その結果誕生したのが「マリポーサ(Mariposa)」です。 スペイン語で「蝶」を意味するこの名を冠したチェアは、オリジナルより30パーセント大きく設計され、 シートのカーブも現代人の体に沿うよう微調整されました。 クエロ(CUERO)というブランド名もスペイン語で「革」を意味し、 アルゼンチンの伝統への敬意とスウェーデンの品質への誇りが込められています。

現在、クエロはラースの息子ニルスと、その妻でアルゼンチン・パタゴニア出身のアグスティーナが経営を担っています。 スウェーデンの森の中にある工房で、熟練の職人たちが一脚一脚丁寧に製作を続けており、 北欧のアイスホテルやフィンランドのアークティック・ツリーハウス、 グリーンランドのイリマナック・ロッジといった世界的に有名な高級ホテルにも採用されています。

主なプロダクト

パンパ・マリポーサ(Pampa Mariposa)

クエロを代表するレザー製バタフライチェアです。 イタリア・トスカーナ産の植物タンニン鞣しレザーとスウェーデン産スチールフレームの組み合わせは、 「世界で最も美しいバタフライチェア」と評されています。 ポロ、ブラック、チョコレート、クルード・ネイチャー、グラスグリーン、モンタナ、オーク、オーシャンブルーなど、 豊富なカラーバリエーションを展開。 使い込むほどに革が柔らかくなり、独自の艶を帯びていくエイジングも魅力の一つです。 オプションでレザー製ヘッドレストを追加することも可能です。

アイスランド・マリポーサ(Iceland Mariposa)

アイスランド産シープスキンを贅沢に使用したバタフライチェアです。 「氷と火の国」アイスランドで、清浄な空気と水に恵まれた環境で育った羊の毛皮は、 驚くほどの柔らかさと保温性を誇ります。 ホルモン剤不使用、抗生物質も厳格に規制された環境で育てられた羊から、 食肉生産の副産物として持続可能な方法で調達されています。 ワイルドホワイト、ワイルドブラック、ワイルドブラウン、ワイルドグレーなど自然な色合いが揃い、 一枚として同じものがない個性的な表情が特徴です。

キャンバス・マリポーサ(Canvas Mariposa)

高密度の100パーセントコットンキャンバスを使用したバタフライチェアです。 レザーやシープスキンとは異なる軽やかな印象で、よりカジュアルな空間にも調和します。 堅牢で安定感があり、屋内での日常使いに適しています。

サンシャイン・マリポーサ(Sunshine Mariposa)

フランス製のサンブレラ・プラス生地を採用した屋外用バタフライチェアです。 「地球上で最高のアウトドア・バタフライチェア」を謳い、 耐候性に優れた素材により、テラスやガーデン、プールサイドでも使用可能。 ステンレススチールフレームとの組み合わせで、屋外環境に対応しています。

フライング・グース(Flying Goose)

バタフライチェアと同じデザイン言語を共有するフットスツールです。 横から見ると飛翔する雁の姿に見えることからこの名が付けられました。 レザーとシープスキンの両タイプがあり、マリポーサチェアと組み合わせることで より寛いだ姿勢でくつろぐことができます。 単独でも美しいオブジェとして空間を彩ります。

その他のプロダクト

クエロはチェア以外にも、バースツール、ダイニングチェア、アイスランディック・シープスキンラグ、 シューラック、コートハンガー、レザー製ウォールパネルなど、 同じ素材哲学に基づいた幅広いホームファニシング製品を展開しています。 いずれも最高品質の素材と職人技によって、空間に統一感のある上質さをもたらします。

オリジナル・バタフライチェアの歴史

クエロが改良を加えた「マリポーサ」の原型となるバタフライチェアは、 1938年にアルゼンチンで誕生しました。 設計者はアントニオ・ボネット、ホルヘ・フェラーリ=ハルドイ、フアン・クルチャンの三人の建築家で、 三人の姓の頭文字から「BKFチェア」とも呼ばれています。 彼らはブエノスアイレスの建築家集団「アウストラル・グループ」のメンバーであり、 同グループが設計した集合住宅のためにこのチェアをデザインしました。

このチェア自体も、1881年にイギリスの技術者ジョセフ・B・フェンビーが特許を取得した 「ラ・トリポリーナ」という折りたたみ式軍用椅子から着想を得たものでした。 三人の建築家が制作したプロトタイプはわずか三脚のみ。 そのうち一脚はニューヨーク近代美術館(MoMA)に、 もう一脚はフランク・ロイド・ライト設計の名建築「落水荘(フォーリングウォーター)」に収蔵されています。 三脚目の所在は今も不明のままです。

1940年にアルゼンチンで開催された「サロン・デ・アーティスツ・デコラトーズ」展で発表されると、 MoMAのキュレーターであったエドガー・カウフマンの目に留まり、アメリカへと紹介されました。 1950年代から60年代にかけて爆発的な人気を博し、 従来の「背筋を伸ばして座る」という固定観念からの解放、自由と反逆の象徴として時代を象徴するアイコンとなりました。

基本情報

ブランド名 クエロ(CUERO)
創業 1986年
創業者 ラース・シェスタディウス(Lars Kjerstadius)
現経営者 ニルス・シェスタディウス(Nils Kjerstadius)、マリア・アグスティーナ・シェスタディウス(Maria Agustina Kjerstadius)
所在地 スウェーデン・ストックホルム
コンセプト Nature meets Art(ネイチャー・ミーツ・アート)
主な素材 イタリア・トスカーナ産植物タンニン鞣しレザー、アイスランド産シープスキン、スウェーデン産スチール
公式サイト https://www.cuerodesign.com/