Alexander Girard Rugs / アレキサンダー・ジラード ラグ
Alexander Girard Rugs(アレキサンダー・ジラード ラグ)は、20世紀を代表するテキスタイルデザイナー、アレキサンダー・ジラード(1907-1993)が1950年代から1970年代にかけて手がけたラグコレクションである。鮮烈な色彩と大胆な幾何学模様、そしてフォークアートへの深い造詣から生まれた独自の装飾言語は、ミッドセンチュリーモダンの精髄を今日に伝える貴重な遺産として、世界中のデザイン愛好家から敬愛されている。
特徴・コンセプト
ジラードのラグデザインを特徴づけるのは、フォークアートの素朴な力強さとモダニズムの洗練された造形感覚の融合である。彼は世界各地を旅して収集した10万点を超える民芸品コレクションから霊感を得ながら、それを現代的な文脈へと昇華させた。幾何学的パターンには厳格な秩序がありながらも、手仕事の温かみを感じさせる有機的なリズムが息づいている。
色彩においてジラードは、当時の抑制的なデザイン潮流に対して一種の革命を起こした。マゼンタ、ターコイズ、サンイエロー、バーミリオンといった鮮やかな色調を大胆に組み合わせ、空間に生命力と歓びを吹き込むことを追求した。彼にとって色彩とは単なる装飾ではなく、人々の情緒に直接語りかける視覚言語であった。
代表的なパターン
「Eden」は楽園を想起させる抽象的な植物モチーフを展開した作品であり、自然の生命力を幾何学的形態へと翻案している。「Circles」は同心円の反復による瞑想的な静謐さを湛え、「Diamonds」は菱形の連続パターンによってダイナミックな視覚効果を生み出す。いずれも単純な基本形態から驚くべき豊穣さを引き出すジラードの卓越した造形力を証している。
デザイナーについて
アレキサンダー・ジラード(Alexander Hayden Girard)は1907年、ニューヨークに生まれた。イタリアのフィレンツェで幼少期を過ごし、ロンドンの建築協会付属建築学校およびローマの王立建築学校で建築を学んだ。1937年にアメリカへ帰国後、デトロイトを拠点にインテリアデザインの実践を開始した。
1952年、家具メーカーのハーマンミラー社にテキスタイル部門のディレクターとして招聘され、以後1973年までの21年間にわたり、300種を超えるファブリックデザインを手がけた。チャールズ&レイ・イームズ、ジョージ・ネルソンらと協働し、ミッドセンチュリーモダンの黄金時代を築いた中心人物の一人である。
建築家としても知られ、1957年から1965年にかけて設計したブラニフ航空のコーポレートアイデンティティ・プログラムでは、機体塗装から機内サービスに至るまで総合的なデザインを手がけ、航空業界に革新をもたらした。1993年、サンタフェにて逝去。彼の膨大なフォークアートコレクションは、サンタフェの国際民芸博物館(Museum of International Folk Art)に永久収蔵されている。
エピソード
ジラードの自邸は、彼の美学を最も純粋に体現した空間であった。サンタフェに構えた住居では、世界中から収集した民芸品が壁面を埋め尽くし、自らデザインしたテキスタイルやラグが空間に彩りを添えていた。訪問者たちは、まるで万華鏡の内部に足を踏み入れたかのような感覚を覚えたという。
ハーマンミラー社との協働において特筆すべきは、イームズ夫妻との深い友情と創造的交流である。ジラードはイームズハウス(ケーススタディハウス#8)のために特別なテキスタイルをデザインし、イームズ夫妻もまたジラードのプロジェクトに参画するなど、互いの才能を高め合う関係を築いていた。
1965年のニューヨーク万博において、ジラードは「Tower of the Sun」パビリオンのデザインを担当した。高さ約30メートルの塔の表面を覆った極彩色のグラフィックは、彼の装飾哲学の集大成として多くの来場者を魅了した。
評価と現代における再評価
ジラードの仕事は長らく、イームズやネルソンの影に隠れがちであった。しかし2000年代以降、ミッドセンチュリーモダンへの再評価の機運が高まるなか、その独創的なテキスタイルワークは新たな脚光を浴びることとなった。
2011年、Vitraはジラードのアーカイブに基づくラグコレクションを発表し、彼のオリジナルデザインを忠実に再現した製品を世に送り出した。Maharam社もまた、ジラードのファブリックパターンを復刻し、現代のインテリアシーンに供給している。これらの製品は、オリジナルの持つ精神を尊重しながら、現代の製造技術と品質基準によって新たな生命を得ている。
ニューヨーク近代美術館(MoMA)、ヴィトラ・デザイン・ミュージアム、クーパー・ヒューイット国立デザイン博物館など、世界の主要なデザインミュージアムがジラードの作品を永久収蔵品として所蔵しており、20世紀デザイン史における彼の重要性を物語っている。
受賞歴・栄誉
- 1950年
- AIA(アメリカ建築家協会)デトロイト支部賞
- 1973年
- AIGA(アメリカグラフィックアーツ協会)メダル受賞
- 1981年
- Textile Society of America 功労賞
- 1999年
- クーパー・ヒューイット国立デザイン賞 生涯功労賞(没後受賞)
基本情報
| 製品名 | Alexander Girard Rugs(アレキサンダー・ジラード ラグ) |
|---|---|
| デザイナー | Alexander Girard(アレキサンダー・ジラード) |
| デザイン年代 | 1950年代〜1970年代 |
| 製造・販売 | Vitra / Maharam |
| 素材 | ニュージーランドウール100%(製品により異なる) |
| 製法 | 手織り / ハンドタフテッド |
| 生産国 | インド / ネパール |
| 代表的パターン | Eden、Circles、Diamonds、Cross Section、Sun、Heart |