ネッソは、1967年にジャンカルロ・マッティオーリがイタリアの照明メーカー、アルテミデのためにデザインしたテーブルランプである。その流麗な曲線を描くマッシュルーム型のシルエットは、スペースエイジ・デザインの精華として広く認知されている。ABS樹脂による一体成型という革新的な製造技法を採用し、有機的なフォルムと工業製品としての完成度を高次元で両立させた本作品は、1960年代イタリアン・ラディカル・デザインを象徴する傑作として、現在もなお世界中のデザイン愛好家から敬愛されている。
特徴・コンセプト
ネッソの最も顕著な特徴は、キノコを想起させる有機的なフォルムにある。緩やかに広がる傘部と、それを支える曲線的な脚部が一体となったシルエットは、自然界の造形美と宇宙時代の未来的ヴィジョンを融合させている。この独創的な形態は、単なる装飾的意匠を超え、光を効果的に拡散させるという機能的要請をも満たすものである。
素材にはABS樹脂が採用され、射出成型によって一体的に形成されている。この製造方法により、継ぎ目のない滑らかな曲面が実現され、プラスチックという素材の可能性を最大限に引き出すことに成功している。発売当初より提供されているオレンジ色は、本作品を象徴する色彩として広く知られており、その鮮烈な色調は1960年代のポップカルチャーの精神を体現している。
内部には四つの光源が配置され、半透明の傘部を通して柔らかく温かみのある光を放つ。この光の拡散効果は、空間に親密な雰囲気を創出し、単なる照明器具を超えた情緒的な体験を提供する。
エピソード
ネッソという名称は、ギリシャ神話に登場するケンタウロス「ネッソス」に由来する。この神話的存在の名を冠することで、マッティオーリは本作品に時代を超越した物語性を付与した。人間と馬の特性を併せ持つケンタウロスのように、ネッソもまた自然と人工、伝統と革新という異なる要素を統合する存在として構想されたのである。
1960年代後半のイタリアは、経済成長と社会変革の只中にあり、デザイン界においても従来の価値観を問い直す「ラディカル・デザイン」運動が興隆していた。ネッソは、まさにこの時代精神を体現する作品として誕生した。アルテミデ社は当時、エルネスト・ジズモンディの指導のもと、革新的なデザイナーたちとの協働を積極的に推進しており、マッティオーリとの連携もその一環であった。
発表以来、ネッソは世界中で高い評価を受け、数十年にわたって継続的に生産されている。この事実は、本作品がデザイン史における一過性の流行ではなく、普遍的な価値を有する古典であることを証明している。
評価
ネッソは、20世紀後半を代表するプロダクトデザインの傑作として、国際的に高い評価を確立している。ニューヨーク近代美術館(MoMA)をはじめとする世界有数の美術館において、その永久収蔵品として所蔵されていることは、本作品の芸術的・文化的価値を如実に物語っている。
デザイン評論家や歴史家たちは、ネッソをスペースエイジ・デザインおよびイタリアン・ラディカル・デザインの代表作として位置づけている。有機的形態と工業生産の融合、機能性と詩的表現の両立という点において、本作品は20世紀デザインの到達点の一つを示すものである。
また、半世紀以上にわたって生産が継続されているという事実は、ネッソが時代を超えた普遍的魅力を有することの証左である。現代においてもなお、インテリアデザインの文脈で頻繁に参照され、新世代のデザイナーやコレクターに影響を与え続けている。
受賞歴・収蔵
- コンパッソ・ドーロ賞(Compasso d'Oro)選定
- ニューヨーク近代美術館(MoMA)永久収蔵品
- トリエンナーレ・デザイン・ミュージアム(ミラノ)収蔵
基本情報
| 名称 | Nesso(ネッソ) |
|---|---|
| デザイナー | ジャンカルロ・マッティオーリ(Giancarlo Mattioli) |
| ブランド | アルテミデ(Artemide) |
| 発表年 | 1967年 |
| 原産国 | イタリア |
| 素材 | ABS樹脂(射出成型) |
| カラー | オレンジ、ホワイト |
| 寸法 | 高さ 約34cm、直径 約54cm |
| 光源 | E14 × 4 |
| カテゴリー | テーブルランプ |