WMF ソルト&ペッパー シェイカーは、ドイツの工業デザイナー、ヴィルヘルム・ヴァーゲンフェルトがWMF(ヴュルテンベルク金属製品工場)のために設計したテーブルウェアである。ドイツでは風刺物語にちなんで「マックス・ウント・モーリッツ(Max und Moritz)」の愛称で親しまれ、1950年代前半の発表以来、現在まで生産が続けられている。バウハウスに学んだヴァーゲンフェルトが、日々の食卓で使う道具に機能性と簡潔な美しさを与えた、戦後ドイツのプロダクトデザインを代表する一品である。
特徴・コンセプト
本品は、クリスタルガラスの本体と、クロマーガン(WMFの18/10ステンレススチール)製の蓋を組み合わせた塩・胡椒入れである。塩用と胡椒用の2本を基本に、ステンレスの受け皿(プレート)と組み合わせたセットで供されることが多い。
形状と機能
ガラス本体は、上部に大きめの充填口を設け、中ほどをゆるやかに絞り込んだ形をしている。この絞り込みが中身をほぐし、塩や胡椒が固まらずに振り出せるよう働く。安定して食卓に置ける形でありながら、手に取りやすい大きさにまとめられている。蓋は差し込み式で、押し込むだけで着脱でき、補充や手入れがしやすい。
素材と仕上げ
蓋や受け皿に用いられるクロマーガンは、WMFが使う18/10ステンレススチールで、酸に強く、さびにくく、扱いやすい。マットな質感の金属とガラスの組み合わせが、簡潔で落ち着いた印象を生んでいる。塩用と胡椒用は、蓋の穴の数で見分けられるようになっている。
誕生の背景
「マックス・ウント・モーリッツ」という愛称は、19世紀ドイツの画家・詩人ヴィルヘルム・ブッシュによる同名の物語に登場する、いたずら好きの二人の少年に由来する。塩と胡椒の二本が寄り添って並ぶ姿から、この親しみやすい名で呼ばれるようになった。
ヴァーゲンフェルトは戦後、WMFのために塩・胡椒入れやスタッキングできるエッグカップ、バターディッシュなど一連のテーブルウェアを手がけた。本品はその代表作で、飾りを抑え、使いやすさと形の美しさを両立させた「良いフォルム(Die gute Form)」の考え方を示す作例として知られる。発売以来、ドイツの家庭で長く使われてきた定番である。
評価と収蔵
WMF ソルト&ペッパー シェイカーは、簡潔で機能的なテーブルウェアとして国際的に評価されてきた。ニューヨーク近代美術館(MoMA)は本品を収蔵しており(1953年、ガラスとステンレススチール、収蔵番号SC14.1982.1-2、Walter Schnepel氏寄贈)、建築・デザイン部門のコレクションに含まれている。半世紀以上にわたり生産が続き、現在も入手できる点に、流行に左右されないデザインの息の長さがうかがえる。
基本情報
| 製品名 | Salt & Pepper Shaker(Max und Moritz)/ ソルト&ペッパー シェイカー |
|---|---|
| デザイナー | ヴィルヘルム・ヴァーゲンフェルト(Wilhelm Wagenfeld, 1900-1990) |
| デザイン年 | 1952年ごろ |
| メーカー | WMF(Württembergische Metallwarenfabrik)/ ドイツ |
| 素材 | 本体:クリスタルガラス / 蓋・受け皿:クロマーガン(18/10ステンレススチール、マット仕上げ) |
| 構成 | ソルト・ペッパー各1本(受け皿付きのセットもあり) |
| サイズ | シェイカー:高さ約4.5〜5cm(モデルにより異なる) |
| 参考型番 | WV 505 ほか |
| 生産状況 | 現行生産品(WMFによる復刻) |