概要

SMEG 50's Style Toasterは、イタリアの名門家電メーカーSMEGが誇る小型家電シリーズを代表する製品である。1950年代アメリカのポップカルチャーが最も華やかだった時代のデザインエッセンスを現代に蘇らせ、キッチンに置くだけで空間全体に特別な雰囲気をもたらす。丸みを帯びた流麗なフォルムとクロームの輝き、そして豊富なカラーバリエーションは、単なる調理器具の枠を超えた存在感を放つ。

ミラノを拠点とするディープデザインスタジオのマッテオ・バッツィカルーポとラファエッラ・マンジャロッティが手掛けたこのトースターは、SMEGの75年以上にわたる技術的蓄積と美的探究の結晶である。パウダーコーティングされたスチールボディは、クラシックな外観の下に高度な機能性を秘めており、毎朝の食卓を豊かに彩る。世界中のデザイン賞を受賞し、MoMAをはじめとする著名な美術館でも展示されるSMEGのデザイン哲学を、最も身近な形で体現した逸品といえる。

特徴とコンセプト

レトロフューチャーの美学

SMEG 50's Style Toasterの最大の魅力は、ノスタルジアと先進性が見事に調和したデザイン言語にある。1950年代の楽観的な未来観と、当時のアメリカンドリームを象徴する家電製品の優雅な曲線美を、21世紀の技術水準で再構築している。丸みを帯びたボディラインは、戦後の豊かさと希望に満ちた時代のシンボルであり、クロームのアクセントは当時の宇宙時代への憧憬を映し出す。

ディープデザインは、単なる様式の模倣ではなく、記憶に刻まれた形態的アーキタイプの再解釈を試みた。ステンレススチールのボールレバーノブ、バックライト付きクロームノブ、そして磨き上げられたクロームベースといった細部に至るまで、オリジナルの時代精神を尊重しながらも、現代のライフスタイルに最適化された機能美を追求している。この製品が放つ独特のオーラは、過去への郷愁と未来への希望が交差する地点に立っている。

人間工学と機能性の融合

美しい外観の背後には、徹底的に考え抜かれた機能設計が存在する。2つの超幅広スロット(各36mm)は、厚切り食パンからベーグル、クロワッサンまで、多様なパンに対応する。セルフセンタリング機構により、パンの厚さに関わらず自動的に中央に配置され、均一な焼き上がりを実現する。この技術的配慮は、朝の忙しい時間帯においても、確実に美しい仕上がりを約束する。

6段階の焼き加減調整に加え、リヒート、解凍、ベーグル専用モードという3つのプリセットプログラムを搭載している。ベーグルモードでは片面のみを加熱し、外側はカリッと、内側はふんわりとした理想的な食感を生み出す。取り外し可能なステンレススチールのクラムトレイは、清掃を容易にし、キッチンカウンターを常に清潔に保つ。ビルトインのコードラップ機構と滑り止めフィートは、実用性への細やかな配慮を示している。

色彩という語彙

SMEG 50's Style Toasterは、単色のホワイト、ブラック、レッド、クロームといった大胆な色彩から、クリーム、パステルブルー、パステルグリーン、ピンクといったヴィンテージ調の柔らかな色調まで、豊富なカラーパレットを提供する。この色彩戦略は、キッチンという空間を単なる調理場所から、自己表現の舞台へと変容させる。各色は慎重に調合されたパウダーコーティングにより、深みのある光沢仕上げを実現している。

SMEGのカラーリングは、イタリアの工芸的伝統と密接に結びついている。1948年の創業以来、エナメル加工と金属加工を専門としてきた同社の技術は、この製品の美しい表面処理に結実している。ドルチェ&ガッバーナとのコラボレーションによる特別版では、シチリアの伝統装飾や地中海の青を基調としたアートピースとしての展開も見せており、トースターという日用品の可能性を拡張し続けている。

デザイナーの哲学

マッテオ・バッツィカルーポとラファエッラ・マンジャロッティは、1995年にミラノでディープデザインスタジオを設立した。両者はミラノ工科大学で建築学を修め、最優秀の成績で卒業した後、同大学で教鞭を執る。建築家としての訓練と教育者としての視点を併せ持つ彼らは、製品デザインにおいて空間性と時間性の両方を重視する。

ディープデザインの名称は、表層的な装飾を超えた本質的な探求への姿勢を示している。彼らは感情的要素と記憶に根ざした形態、そして文化的アーキタイプの再解釈を通じて、製品に深い意味の層を与える。SMEG 50's Styleシリーズは、この哲学が最も成功した事例の一つであり、2014年の発表以来、グッドデザイン賞、レッドドット・デザイン賞、iFデザイン賞など、国際的なデザイン賞を数多く受賞している。

彼らはSMEG以外にも、Barilla、Coca-Cola、Giorgetti、Whirlpoolなど、グローバルブランドとの協働を通じて、日常生活に美と機能性をもたらしてきた。2008年には彼らのダンデライオンランプがニューヨーク近代美術館(MoMA)の永久コレクションに加えられるなど、その作品は現代デザインの重要な遺産として認識されている。SMEGとの長期的なパートナーシップにおいては、調理器具、小型家電、さらには最近のポルシェとのコラボレーションに至るまで、ブランドの視覚的アイデンティティを形成する中心的役割を果たしている。

SMEGの伝統と革新

1948年、ヴィットリオ・ベルタッツォーニがイタリア北部エミリア・ロマーニャ州グアスタッラに創業したSMEGは、Smalterie Metallurgiche Emiliane Guastalla(グアスタッラ・エミリア金属エナメル工場)の頭文字に由来する。ベルタッツォーニ家は19世紀から鍛冶職人として活動しており、金属加工の深い知識と技術を代々受け継いできた。戦後の復興期、家族構造の変化と女性の社会進出に伴い、家事を効率化する家電製品への需要が高まる中、SMEGは時代の要請に応える製品開発に注力した。

1950年代から60年代にかけて、SMEGは自動点火機能付きガスコンロ、調理プログラマー搭載オーブン、そして1970年には世界初の14人分の食器を収容できる食器洗い機を発表するなど、技術革新の最前線を走り続けた。1977年にイタリアの著名な出版者でありグラフィックデザイナーのフランコ・マリア・リッチがデザインした現在のロゴは、ガスコンロのバーナーとオーブンの丸いノブを抽象化したものであり、同社の製品哲学を視覚化している。

1980年代以降、SMEGは建築家やデザイナーとの協働を本格化させ、グイド・カナーリ、マリオ・ベリーニ、レンゾ・ピアノ、マーク・ニューソンといった巨匠たちと製品を生み出してきた。1997年に発表されたFABシリーズ冷蔵庫は、レトロスタイルの家電というカテゴリーを確立し、SMEGを世界的なデザインアイコンブランドへと押し上げた。2002年にはグイド・カナーリ設計による本社ビルが完成し、2006年のミラノ・トリエンナーレで建築賞の特別賞を受賞している。

現在もベルタッツォーニ家の三代目によって経営されるSMEGは、イタリア北部に点在する専門工場で製品を製造し、世界18か国に子会社を持つグローバル企業へと成長した。しかし、その中核には常に「Made in Italy」の職人精神とデザインへの情熱が息づいている。50's Styleシリーズは、この長い歴史と伝統が現代に結実した証である。

受賞歴と評価

SMEG 50's Style Toasterは、発表以来、国際的なデザイン界から高い評価を受けてきた。2015年、TSF01モデルはドイツのiFデザイン賞を受賞し、優れたプロダクトデザインに与えられる最も権威ある賞の一つとして認められた。同年、レッドドット・デザイン賞も受賞し、国際的なデザイン専門家による厳格な審査を通過した。2019年には、4スライスモデルのTSF03がレッドドット・デザイン賞を受賞し、シリーズ全体の卓越性が再確認された。

さらに、グッドデザイン賞(シカゴ・アテネウム建築デザイン美術館およびヨーロッパ建築芸術デザイン都市研究センター主催)も受賞しており、機能性と美的バランスの両立が評価されている。イギリスの消費者団体Which?は2015年にTSF02モデルを「ベストバイ」に選出し、77%という高いスコアを付けた。BBC Good Food、Good Housekeeping、Trusted Reviewsなどの権威あるメディアも、デザインと性能の両面で高評価を与えている。

これらの受賞歴は、SMEG 50's Style Toasterが単なる流行の産物ではなく、時代を超えたデザイン価値を持つ製品であることを証明している。デザインミュージアムや家電専門誌の展示において、20世紀半ばのモダンデザイン復興の象徴として位置づけられることも多く、製品デザインの教育現場でも参照されるケーススタディとなっている。

現代のキッチンにおける位置づけ

現代のキッチンは、単なる調理空間を超えて、家族が集い、ゲストをもてなし、創造性を発揮する多機能的な場所へと進化している。SMEG 50's Style Toasterは、この変化に呼応し、機能的な道具であると同時に、空間の美的な中心点となる存在を目指している。ミニマリズムが支配的なトレンドとなる中で、このトースターは個性と温かみを空間にもたらす対抗的な提案でもある。

インスタグラムをはじめとするソーシャルメディアの時代において、SMEG製品は「インスタ映え」する存在として広く認知されている。しかし、その本質は表層的な見栄えを超えたところにある。毎朝使用する道具が美しいことで生まれる小さな喜び、視覚的な楽しみが日常生活に与える心理的効果は、決して些細なものではない。ウィリアム・モリスが唱えた「美しくないものを家に置いてはならない」という原則を、現代的な形で実践している。

サステナビリティが重要視される現代において、SMEGの製品は耐久性と修理可能性を重視した設計がなされている。流行に左右されないタイムレスなデザインは、使い捨て文化への批判でもあり、長く愛用される製品こそが真に持続可能であるという哲学を体現している。SMEG 50's Style Toasterは、祖父母の時代に愛された家電の記憶を呼び起こしながら、次の世代へと受け継がれる可能性を秘めた、時間を超越する製品である。

基本情報

デザイナー ディープデザイン(マッテオ・バッツィカルーポ&ラファエッラ・マンジャロッティ)
ブランド SMEG
発表年 2014年(50's Styleシリーズ)
製造国 イタリア/中国
主要モデル TSF01(2スライス)、TSF02(4スライス長型)、TSF03(4スライス)
スロット数 2(幅36mm各)
消費電力 950W(TSF01)
寸法 H198 × W310 × D195mm(TSF01)
重量 2.4kg(TSF01)
材質 パウダーコーティングスチールボディ、クロームベース、ステンレススチール
カラー展開 ホワイト、ブラック、レッド、クリーム、パステルブルー、パステルグリーン、ピンク、クロームほか
主な機能 6段階焼き加減調整、リヒート、解凍、ベーグルモード、自動ポップアップ、セルフセンタリング機構
受賞歴 グッドデザイン賞、レッドドット・デザイン賞(2015, 2019)、iFデザイン賞(2015)
オプション サンドイッチラック(TSSR01)、バンウォーマー(TSBW01)