モンタナシステムは、デンマークのデザイナー、ピーター・J・ラッセンによって生み出された革新的なモジュール式収納システムである。1982年の誕生以来、北欧デザインの系譜に連なる明快な造形と、無限に近い組み合わせの自由を両立させることで、現代の住空間における収納の概念を根底から再定義してきた。その本質は、単なる家具システムの枠を超え、使い手の個性と創造性を解放する空間装置としての機能にある。
基本モジュールは69.6センチメートル四方の立方体を基準とし、4種類の奥行きバリエーションを持つ。この厳密な幾何学的秩序の中に、43色にも及ぶ詩的な色彩パレットと多様な内部構成の選択肢が用意され、使い手は自らの生活様式と美意識に応じた収納空間を構築することができる。デンマーク・フューン島の自社工場で製造される各モジュールは、環境への深い配慮のもと、12ミリメートル厚のMDFに水性塗料を施した仕上げが特徴であり、2019年にはヨーロッパの家具メーカーとして先駆的にEUエコラベル認証を取得している。
デザイン哲学
ピーター・J・ラッセンがモンタナシステムの設計に込めた思想は、明確かつ深遠である。彼は「すべての人間には自由への欲求と、自分自身の個人的な空間を創造したいという本質的な願望がある」という信念を出発点とした。この哲学は、既製品の画一性を拒絶し、使い手一人ひとりの個性と生活の多様性に応答する家具の在り方を追求するものである。
ラッセン自身の言葉によれば、デザインの過程は彫刻家の創作行為に類似している。「彫刻家が抽象的な石塊から始めるように、私は抽象的な立方体から始めた。そして箱の不要な部分を取り除いていくことで、最終的に丸みを帯びた縁、欠けた角、引っ込んだ前面といった要素が生まれ、これがモンタナのデザインアイデンティティとなった」。この言葉が示すように、モンタナシステムの形態は削減と洗練の美学の結実である。
システムの構造には、5.7センチメートルを基準単位とする精緻な数学的計算が用いられている。しかしラッセンが真に追求したのは、数理的正確性よりも、むしろ哲学的な普遍性であった。すなわち、すべてのモジュールが無限に組み合わせ可能であること、実用的であること、美しいこと、耐久性を備えていること、そして流行に左右されない時代を超えた価値を持つこと。これらの原則は1982年の創業時から一貫して守られ、今日に至るまでモンタナシステムの設計思想の根幹を成している。
デザインの特徴
モジュラー構造と幾何学的秩序
モンタナシステムの構造的特徴は、厳密な幾何学的秩序に基づくモジュラー設計にある。36種類の基本モジュールは、すべて69.6センチメートル四方を基準寸法とし、深さのみが4種類のバリエーション(30センチメートル、38センチメートル、42センチメートル、60センチメートル)で展開される。この統一された寸法体系により、垂直方向・水平方向ともに自在な拡張が可能となり、壁面全体を覆う大型収納から、小さな空間に収まるコンパクトなユニットまで、あらゆる規模の構成を実現できる。
各モジュールの接合部は精密に設計され、複数のユニットを組み合わせた際にも継ぎ目が目立たず、一体的な造形美を保つ。この構造的完成度の高さは、ラッセンがフリッツ・ハンセン社での長年の経験で培った家具製造の深い知識と、アルネ・ヤコブセンやヴェルナー・パントンといった巨匠たちとの協働から得た造形感覚の結晶である。
色彩システムの詩学
モンタナシステムを特徴づける重要な要素が、その豊かな色彩パレットである。現行のカラーシステムは、デンマークの色彩専門家マルグレーテ・オドゴーとの緊密な協働により開発された43色から成る。これらは単なる装飾的選択肢ではなく、使い手の感性と感情に訴えかける詩的な色彩言語として構想されている。
パレットには、明るく軽やかな色調から、濃密で深い色調まで、多様な表情を持つ色彩が含まれる。各色は相互に組み合わせることを前提に選定されており、異なる色のモジュールを隣接させても調和が保たれるよう、慎重に調整されている。これにより、使い手は単色の統一感を選ぶことも、多色の躍動感を楽しむことも、自らの美意識に従って決定できる。
環境への配慮から、2007年以降、すべての塗装には水性ラッカーが使用されている。この塗料は臭気がなく、有害な溶剤を含まないため、居住空間での使用に最適である。塗装の耐久性も高く、適切な手入れを行えば、長期にわたって色彩の美しさを保つことができる。
カスタマイゼーションの自由
モンタナシステムの真価は、その比類なきカスタマイゼーション能力にある。使い手は基本モジュールの選択から始まり、内部の棚板、扉、引き出し、トレイ、照明といった多様なアクセサリーを自由に組み合わせることができる。さらに、設置方法も壁掛け、台座、脚部、キャスターなど複数の選択肢が用意され、空間の条件と使用目的に応じた最適な構成を実現できる。
このシステムの柔軟性は、家具としての寿命を大きく延長する。最初は書棚として使用されたユニットが、のちに食器棚に、あるいはメディア収納に、さらにはワードローブシステムへと、生活の変化に応じて役割を変えていくことができる。この適応力こそが、モンタナシステムを真の意味での「投資」たらしめる特質である。
創造の背景とエピソード
誕生の経緯
モンタナシステムの起源は、1974年にピーター・J・ラッセンが構想した「6060」システムにさかのぼる。当時、彼はフリッツ・ハンセン社のCEOとして、アルネ・ヤコブセン、ヴェルナー・パントン、ヨーン・ウツソンといった時代を代表する建築家・デザイナーたちと協働していた。この「6060」は、1975年にフリッツ・ハンセン社からヤコブセンのデザインを補完する製品として市場に投入された。
しかし1979年、ラッセンはフリッツ・ハンセン社のCEO職から解任されるという転機を迎える。パントンやウツソンといった進歩的なデザイナーとの協働により実現した革新的な家具が、当時の市場にはまだ早すぎたためである。この挫折は、しかし新たな創造への契機となった。ラッセンは退職金を元手に「60×60」システムの権利を買い取り、1982年、自らの理想を実現する場として、モンタナファニチャー社を創設したのである。
社名の意味
新会社の名称「モンタナ」の選定には、複層的な意図が込められている。まず、この名が国際的に通用する響きを持つこと。次に、3つの音節のリズムがモジュラーシステムの概念を想起させること。さらに、デンマーク語の「montere(組み立てる)」という動詞を連想させることも考慮された。この名称は、製品の本質と企業の志向性を、言語的な遊戯性を持って表現している。
環境への先駆的取り組み
モンタナファニチャー社は、創業当初から環境への配慮を企業理念の中核に据えてきた。1992年、デンマーク環境保護庁との協力により、同社は独自の環境会計制度を導入した。これは製品のライフサイクル全体における環境影響を評価する「ゆりかごから墓場まで」の分析を実施する、デンマーク企業としては先駆的な試みであった。
この取り組みは、2019年のEUエコラベル認証取得という形で結実する。モンタナファニチャー社は、ヨーロッパにおいて最初期にこの認証を獲得した家具メーカーの一つとなった。認証は原材料の採取から製造、流通、廃棄に至るまでの製品ライフサイクル全体を対象とし、環境負荷の最小化に向けた同社の長年の努力を公式に認めるものである。さらに近年ではPEFC認証も取得し、MDF材料の大部分がPEFC認証木材から製造されている。
現在、同社を率いるのはラッセンの末息子ヨアキム・ラッセンである。彼は環境コンサルティングの専門家としての経歴を持ち、「企業は世界をより良くするための最も強力な推進力の一つである」という信念のもと、持続可能性をさらに深化させている。ヨアキムは家具製造に携わる一族の5代目であり、偉大な製造業者フリッツ・ハンセンの玄孫でもある。この家系の伝統は、デザインと革新への献身として、今日のモンタナファニチャー社の DNA に刻まれている。
評価と影響
モンタナシステムは、発表以来40年以上にわたり、北欧デザインの重要な達成として国際的に認知されてきた。その評価の基盤は、機能的卓越性と美的完成度の統合、そして時代を超えた普遍性にある。デザイン批評家や建築家たちは、このシステムを「レゴブロックのようなインテリアデザイナー向けシステム」と形容し、その組み合わせの無限性と構造の明快さを称賛してきた。
特筆すべきは、モンタナシステムが流行に左右されることなく、現代においてもなお新鮮な魅力を保ち続けている点である。これは、ラッセンが当初から「流行に依存しない」ことを設計原則としたことの証左である。ミニマリズムが主流となる時代にあっても、マキシマリズムが台頭する局面においても、モンタナシステムは使い手の美意識に柔軟に応答し、常に時代精神と共振する表現を可能にしてきた。
システムの影響は、単なる収納家具の領域を超えて拡大している。オフィス空間、公共施設、商業空間など、多様な環境において採用され、それぞれの文脈に応じた独自の表情を生み出している。この適応力と汎用性こそが、モンタナシステムを単なる製品ではなく、現代空間デザインの基本的な語彙の一部たらしめている所以である。
認証と保証
モンタナシステムは、その品質と環境性能を証明する複数の国際認証を取得している。2019年に獲得したEUエコラベルは、製品のライフサイクル全体における環境配慮を認証する最も権威ある基準の一つである。この認証は、モンタナシステム、CO16、モンタナフリーの各製品ラインに適用されている。
デンマーク技術研究所によるデンマーク室内気候ラベル、および環境マネジメントシステムの国際規格であるISO 14001認証も取得しており、製品の安全性と製造過程の環境管理体制が国際水準を満たしていることが保証されている。
品質面では、モンタナファニチャー社は製品に対して10年間の保証を提供している。この保証は、正しく設置・使用されたモンタナシステム、モンタナミニ、モンタナフリー、パントンワイヤー、モンタナCO16の各製品に適用され、設計、可動部分、機能性を対象としている。この長期保証は、同社が製品の耐久性と恒久的価値に絶対的な自信を持っていることの証である。
基本情報
| 製品名 | モンタナシステム(Montana System) |
|---|---|
| 分類 | モジュール式収納システム |
| デザイナー | ピーター・J・ラッセン(Peter J. Lassen) |
| メーカー | モンタナファニチャー(Montana Furniture) |
| 発表年 | 1982年 |
| 製造国 | デンマーク(フューン島ハーボー) |
| 基本寸法 | 幅・高さ:69.6cm、奥行:30/38/42/60cm(4種類) |
| 素材 | 12mm厚MDF、水性ラッカー塗装 |
| カラー展開 | 41色のラッカー仕上げ、2種類の突板仕上げ(計43色) |
| 認証 | EUエコラベル(2019年)、デンマーク室内気候ラベル、ISO 14001、PEFC認証 |
| 保証期間 | 10年 |