Kvadrat / Raf Simons Cushion(クヴァドラ/ラフ・シモンズ クッション)は、デンマークの名門テキスタイルメーカー「Kvadrat」と、ベルギー出身のファッションデザイナー「Raf Simons」による革新的なコラボレーションから生まれた、芸術性と機能性を兼ね備えた高品質なクッションコレクションである。2014年に始まったこの協業は、ファッションとインテリアテキスタイルの境界を超えた創造的な対話を生み出し、現代的な居住空間に独特の美的価値をもたらしている。
両者の出会いは、シモンズがジル・サンダーのクリエイティブディレクターを務めていた時期に遡る。深みのあるウール素材を求めていた彼は、Kvadratの上質なテキスタイルと出遭い、2011年秋冬コレクションにおいて、前例のない試みとして家具用テキスタイルをファッションショーで使用した。この成功が契機となり、Kvadratはシモンズをクリエイティブディレクターとして迎え、Kvadrat/Raf Simonsブランドが誕生することとなった。
デザイナーについて
ラフ・シモンズは1968年1月12日、ベルギーのネールペルトに生まれた。1991年にヘンクの大学で工業デザインと家具デザインの学位を取得し、当初は家具デザイナーとしてキャリアをスタートさせた。アントワープ王立芸術アカデミーのファッション学部長リンダ・ロッパの励ましを受け、1995年に自身の名を冠したメンズウェアレーベルを立ち上げた。
独学でファッションデザインを学んだシモンズは、反抗的な若者文化と伝統的なテーラリングを融合させた革新的なアプローチで、1990年代のファッション界に大きな影響を与えた。その後、ジル・サンダー(2005-2012)、クリスチャン・ディオール(2012-2015)、カルバン・クライン(2016-2018)といった世界的なメゾンでクリエイティブディレクターを歴任し、2020年4月からはミウッチャ・プラダと共にプラダの共同クリエイティブディレクターを務めている。
シモンズの創造性は、ファッションの領域を超えて、アート、音楽、パフォーマンスといった多様な文化的要素を取り込み、個性と独立性についての力強いメッセージを発信し続けている。彼の美学は、現代的なプロポーション、素材とテクスチャーへの絶え間ない探求、そして純粋な構築性と新しい形状の相互作用によって特徴づけられる。
特徴・コンセプト
Kvadrat/Raf Simons Cushionコレクションは、ファッションテキスタイルの繊細な色彩と質感を、家具用テキスタイルの耐久性と機能性に翻訳するという革新的な試みから生まれた。シモンズは、ツイードやブークレといったファッション素材の微妙な色合いと織り構造を、家具用途に適した高密度な織物へと昇華させることで、絵画的とも言える独特の視覚効果を生み出している。
代表的なファブリック
「Atom(アトム)」は、コレクションを代表するブークレファブリックの一つである。点描画法による風景画の断片から着想を得たこのテキスタイルは、表面に無作為に散りばめられたような色彩の斑点が特徴的である。大胆なコントラストを持つ糸の組み合わせ(黒地にダックエッグブルーとバーガンディ、フォレストグリーンに明るい黄色とグレーなど)は、シモンズの色彩に対する独特の感性を示している。
「Helia(ヘリア)」は、アストラカン(子羊の毛皮)のテクスチャーを織物で再現した実験的な作品である。新毛を主体とし、アクリル、ビスコース、ナイロンを配合したブークレ織りは、有機的で構造的なデザインを特徴とし、先染めされた繊維がメランジュ効果を生み出している。
「Silas(サイラス)」は、オートクチュールで使用されるニットから着想を得た、柔らかく豊かなボリューム感を持つファブリックである。新毛とナイロンから作られ、複雑な仕上げ工程を経て、カシミアコートのような心地よい触感を実現している。
サイズ展開と構成
クッションは主に45×45cmの標準サイズで展開され、インテリアスキームの最終的なディテールとして、色彩、織り、テクスチャーの多様な組み合わせを可能にしている。慎重に編集されたコレクションは、補完的なテキスタイルの幅広いバリエーションを提供し、空間に洗練された表現力をもたらす。
コラボレーションの発展
2014年の第一弾コレクション以降、Kvadrat/Raf Simonsは年々進化を続けている。初期のコレクションは、ジャン・ロワイエ、ピエール・ジャンヌレ、フィン・ユール、ハンス・ウェグナーといった20世紀中期のモダン家具デザイナーたちから着想を得ていた。
2015年の第二弾では、ツイル織りという通常は頑丈な生地に使用される織り方を導入し、クッションとスローのラインナップを拡充した。2016年の第三弾は、モダニスト家具、ポップアート、現代アート、ファッションテキスタイル、音楽といった多様な要素から影響を受け、コバルトブルー、レモンイエロー、パウダーピンク、ブライトレッドといった鮮やかな色彩が特徴的だった。
2019年のミラノデザインウィークで発表された第六弾「No Man's Land」では、ジャン・プルーヴェのプレハブ建築内に、花々に囲まれた幻想的な空間を創出し、内と外の境界を遊び心豊かに探求した。最新の2020年コレクションでは、オートクチュールのファーや豪華なニットにフォーカスし、触感と表面の要素を強調した、より家庭的で心地よいテキスタイルを提案している。
Kvadratについて
1968年にポール・ビュリエルとアーリング・ラスムッセンによってデンマークのエーベルトフトに設立されたKvadratは、スカンジナビアデザインの伝統に深く根ざした、世界をリードするテキスタイルデザイン企業である。創業当初から、ナナ・ディッツェル、フィン・スケット、ニーナ・コッペル、グナー・オーガード・アンデルセンといったデザイナーたちと密接に協働し、高品質な家具用テキスタイルのポートフォリオを構築してきた。
同社の革新性への取り組みは、パトリシア・ウルキオラ、ロナン&エルワン・ブルレック、マルグレーテ・オドガード、アルフレード・ヘーベルリ、ドーシ・レヴィエン、ピーター・サヴィル、オラファー・エリアソンといった世界的なデザイナー、建築家、アーティストとのコラボレーションに表れている。
Kvadratのテキスタイルは、ロンドンのガーキン、ニューヨーク近代美術館、ロサンゼルスのウォルト・ディズニー・コンサートホール、ベルリンの連邦議会議事堂、ビルバオ・グッゲンハイム美術館、コペンハーゲン・オペラハウス、オスロ・オペラハウスといった世界的な建築プロジェクトで採用されており、現代インテリアにおいて確固たる存在感を示している。
評価と影響
Kvadrat/Raf Simonsコレクションは、ファッションとインテリアデザインの境界を曖昧にする革新的なアプローチにより、デザイン界から高い評価を受けている。シモンズの色彩に対する大胆な感性と、Kvadratの技術的専門性の融合は、テキスタイルデザインの新たな可能性を切り開いた。
特に注目すべきは、ファッションテキスタイルの制作プロセスや色彩表現の制約が、家具用テキスタイルとは異なることへの深い理解と、その違いを創造的な機会として捉えたシモンズのビジョンである。高密度な織りが必要とされる家具用途において、色彩はより興味深く、絵画的なインパクトを持つようになるという彼の発見は、テキスタイルデザインに新しい美的次元をもたらした。
コレクションは、カッシーナなどの高級家具メーカーがヴィンテージ作品の復刻版に採用するなど、業界内で広く認知されている。また、シモンズ自身のファッションコレクションにも度々登場し、ファッションとインテリアの創造的な対話を継続的に示している。
持続可能性への取り組み
Kvadratは、持続可能なデザインの核心に耐久性があるという信念のもと、製品の多くに10年保証を提供している。最高品質の原材料のみを使用し、環境への影響を最小限に抑えながら、長期間使用できる製品づくりを追求している。イギリス、ノルウェー、オランダに自社織物工場を所有することで、生産とデザインプロセス全体を通じて排出物、廃棄物、資源使用をより厳密に管理している。
Kvadrat/Raf Simonsコレクションにおいても、この持続可能性への姿勢は貫かれており、時代を超越したデザインと優れた品質により、トレンドに左右されない長期的な価値を提供している。
| デザイナー | ラフ・シモンズ(Raf Simons) |
|---|---|
| ブランド | Kvadrat(クヴァドラ) |
| コラボレーション開始年 | 2014年 |
| 原産国 | デンマーク |
| 主な素材 | 新毛(ウール)、ナイロン、ポリエステル、アクリル、ビスコース |
| 代表的なファブリック | Atom、Helia、Silas、Sunniva 3 |
| サイズ | 45×45cm(標準)、その他複数サイズ展開 |
| 価格帯 | 約246~593 USD |
| お手入れ方法 | ドライクリーニング推奨 |