アルフレド・ベースは、2015年にデンマークの名門ブランド、ゲオルグ・イェンセンから発表された花器コレクションである。スイスを拠点に活動するデザイナー、アルフレド・ハベリによって創造されたこの作品は、ミラーポリッシュ仕上げのステンレススティールと口吹きガラスという二つの異なる素材で展開され、それぞれが独自の魅力を放っている。ハベリが提唱する「家族のようなオブジェクト群」というコンセプトのもと、アルフレド・コレクションの中核を成す存在として、現代的な北欧デザインの美学を体現している。

ステンレススティール版は高さ47cmの大型サイズから22cmの小型サイズまで複数のバリエーションを擁し、鏡面仕上げが室内の光と色彩を反射することで空間に動的な要素をもたらす。一方、ガラス版はスウェーデンのグラフォ・ガラス研究所との緊密な協力により開発された独自のライトグリーンカラーを特徴とし、高さ25cmの口吹き製法による繊細な造形が魅力である。どちらのバージョンも、花を活けていない状態でも彫刻作品としての存在感を示し、単体で置いても複数を組み合わせても美しい調和を生み出す。

特徴とデザイン・コンセプト

有機的フォルムと彫刻性

アルフレド・ベースの最大の特徴は、その大胆かつミニマルな有機的フォルムにある。重力に逆らうかのような流動的なシルエットは、静止しているにもかかわらず動きを感じさせる造形美を実現している。この形態は、ハベリが幼少期を過ごしたアルゼンチン・ブエノスアイレスの活気と創造性、そしてスイスで学んだ機能主義的デザイン哲学の融合から生まれたものである。花器としての実用性を保ちながら、花が活けられていない状態でも空間における彫刻的オブジェとして成立する二重性が、この作品の本質的な価値となっている。

素材の対比と表面処理

ステンレススティール版では、鏡面研磨という伝統的な金属加工技術が現代的なフォルムと結びつき、周囲の環境を映し込む反射面が空間に奥行きと変化をもたらす。この高度な研磨技術は、ゲオルグ・イェンセンが120年以上にわたり培ってきた金属工芸の伝統を現代に継承するものである。一方、ガラス版では口吹き製法による微細な質感の変化が、工業製品にはない手仕事の温もりを感じさせる。スウェーデンのグラフォ・ガラス研究所と共同開発された独自のライトグリーンは、自然光の下で繊細な色彩変化を見せ、北欧の自然への敬意を表現している。

ユーモアと親密性の追求

ハベリのデザイン哲学において中心的な位置を占めるのが、日常的なオブジェクトにユーモアと喜びを注入するという姿勢である。アルフレド・コレクション全体は「家族」というメタファーで構想され、各アイテムが独立した個性を持ちながらも相互に調和する関係性を持つよう設計されている。この花器もまた、形式張った装飾品ではなく、日々の生活に寄り添う親しみやすい存在として機能するよう意図されている。大胆なフォルムと優美な曲線の組み合わせは、威圧感を与えることなく、むしろ花器そのものが空間に対話を生み出す触媒となることを目指している。

デザイン背景とエピソード

アルフレド・ハベリとゲオルグ・イェンセンのコラボレーションは、2015年のアルフレド・コレクション発表により本格的に始動した。ハベリは1964年にアルゼンチン・ブエノスアイレスで生まれ、13歳でスイスに移住。1991年にチューリッヒ造形芸術大学工業デザイン学科を優秀な成績で卒業した後、国際的なデザイナーとしてのキャリアを築いてきた。アリアス、イッタラ、モローゾ、ヴィトラなど世界的なブランドとの協働を経て培った経験が、ゲオルグ・イェンセンとのプロジェクトにも反映されている。

このコレクションの構想において、ハベリは単一の製品ではなく、互いに関連性を持ちながら独立して存在できるオブジェクト群を創造することを目指した。この「家族」としてのアプローチは、彼自身の経験—アルゼンチンからスイスへの移住という文化的越境と、そこで培った多様性への理解—に深く根ざしている。ガラス版の開発においては、ゲオルグ・イェンセン・リビングのデザインチームとスウェーデンのグラフォ・ガラス研究所が緊密に協力し、ブランド独自の色彩を追求した。この研究開発プロセスには数ヶ月を要し、最終的に到達したライトグリーンは、北欧の春の新緑を想起させる独特の色調となった。

評価と影響

アルフレド・ベースは発表以来、国際的なデザイン愛好家から高い評価を獲得している。その要因は、伝統的な北欧デザインの美学—機能性、シンプルさ、素材への敬意—を継承しながらも、ラテンアメリカ的な情熱と遊び心を融合させた独自の表現にある。デザイン批評家たちは、この花器が単なる容器としての機能を超え、空間における彫刻的要素として機能する点を特に評価している。

ゲオルグ・イェンセンにとって、アルフレド・コレクションは21世紀における同社のデザイン方針を明確に示す試金石となった。創業者ゲオルグ・イェンセンが1904年に確立した「外部の才能との協働」という伝統を現代に継承し、国際的な視点を取り入れながらも北欧デザインの核心的価値を保持する姿勢が、この作品に体現されている。アルフレド・ベースは、同ブランドのホームコレクションにおける代表作の一つとして、世界中のデザインストアやミュージアムショップで販売され続けている。

受賞歴

アルフレド・コレクション全体は複数の名誉ある賞を受賞している。デザイナーであるアルフレド・ハベリ自身も、2009年にドイツの建築・インテリア専門誌「A&W(Architektur & Wohnen)」より「デザイナー・オブ・ザ・イヤー」に選出され、同年のケルン国際家具見本市においてモノグラフ展の栄誉に浴した。また、2006年にはベルギー・コルトレイクの第20回デザイン・ビエンナーレにおいて名誉ゲストとして招待され、2008年にはチューリッヒのデザイン博物館で個展「SurroundThings」を開催するなど、国際的なデザイン界において確固たる地位を築いている。

基本情報

デザイナー アルフレド・ハベリ(Alfredo Häberli)
ブランド ゲオルグ・イェンセン(Georg Jensen)
発表年 2015年
コレクション アルフレド(Alfredo)
素材 ステンレススティール(ミラーポリッシュ仕上げ)/ 口吹きガラス
サイズ ステンレススティール版:高さ22cm(小)、高さ47cm(大)
ガラス版:高さ25cm、直径22.3cm
製造国 デンマーク
特徴 有機的フォルム、彫刻的存在感、複数サイズ展開、独自のライトグリーンカラー(ガラス版)