ブーメラン デスクは、イタリアを代表する建築家・デザイナーであるカルロ・モリーノが1950年に設計した、彫刻的造形美を極めたライティングデスクである。その名称が示すとおり、天板がブーメランのような有機的な曲線を描き、従来の直線的なデスクの概念を根底から覆す革新的なデザインとして、20世紀イタリアデザインの金字塔に数えられている。
本作品は、モリーノの創造哲学を体現する傑作として、トリノの貴族階級の邸宅のために制作されたオリジナルから、現在はイタリアの名門家具メーカー・ザノッタによる復刻版として、世界中のデザイン愛好家に愛され続けている。
特徴・コンセプト
ブーメラン デスクの最大の特徴は、有機的曲線と構造的合理性の見事な融合にある。天板は流麗な曲線を描きながら、使用者の身体に沿うように設計されており、機能性と造形美が高次元で調和している。
バイオモルフィックデザイン
モリーノは自然界の有機的形態、とりわけ人体の曲線や昆虫の翅、流体力学的形状から着想を得ており、ブーメラン デスクにおいてもその美学が如実に表れている。デスクの輪郭は、まるで生命体が息づいているかのような躍動感を湛え、静的な家具の概念を超越した存在感を放っている。
素材と構造
天板には上質なオーク材が用いられ、木目の美しさを最大限に活かしながら、複雑な曲面を実現している。脚部は真鍮製の細身の支柱で構成され、天板の重厚な存在感と対照的な軽やかさを演出している。この視覚的なコントラストが、作品全体に独特の緊張感と優雅さをもたらしている。
人間工学的配慮
曲線的なデザインは単なる装飾ではなく、着座した使用者が自然な姿勢で執筆や作業に集中できるよう綿密に計算されている。天板の凹曲線に身体を預けることで、書類や文具が手の届きやすい位置に配置される機能的な利点も備えている。
エピソード
ブーメラン デスクは、1950年にトリノの実業家のために設計された邸宅の内装プロジェクトの一環として誕生した。モリーノは建築から家具、照明に至るまでを総合的にデザインする「ゲザムトクンストヴェルク(総合芸術作品)」の理念を実践しており、本作品もその文脈において構想された。
モリーノは航空工学にも精通しており、飛行機の翼や流線型の胴体から得たインスピレーションが、このデスクの空気力学的なフォルムに反映されている。彼自身も熱心なアマチュアパイロットであり、その経験が独自の造形言語を形成する源泉となった。
制作当初、この革新的なデザインは一部から懐疑的な評価を受けたものの、時代を経るにつれてその先見性が認められ、20世紀デザイン史における重要な作品として再評価されることとなった。
評価
ブーメラン デスクは、戦後イタリアデザインの黄金期を象徴する作品として、国際的に高い評価を受けている。ニューヨーク近代美術館(MoMA)をはじめとする世界有数のデザインミュージアムにおいて、イタリアンデザインの傑作として紹介されており、その芸術的価値は揺るぎないものとなっている。
美術史家やデザイン評論家からは、モリーノの作品群の中でも特に完成度の高い一品として評され、有機的モダニズムの到達点の一つに位置づけられている。オークションにおいてもオリジナル品は極めて高値で取引されており、コレクターズアイテムとしての価値も非常に高い。
ザノッタによる復刻版の製造は、モリーノのデザイン遺産を後世に伝える重要な取り組みとして評価されており、現代のインテリア空間においても、その造形美が時代を超えた普遍的な魅力を放ち続けている。
受賞歴・収蔵
- 世界各地のデザインミュージアムにおける企画展での展示
- 20世紀イタリアデザインを代表する作品として複数の美術文献に収録
- 国際的なデザインオークションにおいて継続的に高評価を獲得
基本情報
| デザイナー | カルロ・モリーノ(Carlo Mollino) |
|---|---|
| ブランド | ザノッタ(Zanotta) |
| デザイン年 | 1950年 |
| 原産国 | イタリア |
| 素材 | オーク材、真鍮 |
| カテゴリー | デスク / ライティングデスク |
| スタイル | オーガニックモダン / イタリアンミッドセンチュリー |