780/783 セクレテールは、イタリアを代表する建築家・デザイナーであるジャンフランコ・フラッティーニが1961年にベルニーニ社のために設計したライティングビューロー(書き物机)である。本作品は、イタリア・モダンデザインの最高峰を示す傑作として、同年コンパッソ・ドーロ賞を受賞した。上質なローズウッドの木目を活かした端正な佇まいと、実用性を兼ね備えた収納機能を特徴とし、半世紀以上を経た今日においても、デザイン史に燦然と輝く名作として世界中のコレクターから敬愛されている。
特徴・コンセプト
本作品は、イタリア合理主義デザインの精髄を体現するライティングビューローである。フラッティーニは、伝統的なセクレテールの機能を継承しながらも、戦後イタリア・デザインの美学を反映させた革新的な造形を追求した。
素材と仕上げ
本体には厳選されたローズウッド(パリサンダー)を採用している。深みのある紫褐色の木目が醸し出す気品は、イタリア家具職人の卓越した技術によって最大限に引き出されている。一部のモデルではチーク材を使用したバリエーションも製作され、いずれも木材本来の美しさを活かした仕上げが施されている。
構造と機能
フラップ式の天板を開くと、執筆作業に適した広々とした書き物面が現れる。内部には書類や文房具を整理するための小引き出しや仕切りが巧みに配置され、実用性と美観の両立が図られている。780と783の二つのモデル番号は、寸法や収納構成の異なるバリエーションを示しており、使用者の空間や用途に応じた選択を可能としている。
デザイン言語
フラッティーニのデザイン哲学である「機能と美の融合」が随所に表れている。直線を基調としながらも冷たさを感じさせない造形、過剰な装飾を排しながらも存在感を放つプロポーション——これらの特質は、北欧モダニズムとは一線を画すイタリア・デザイン独自の温かみを体現している。
エピソード
1961年、フラッティーニはこのセクレテールにより、イタリア工業デザイン界の最高栄誉であるコンパッソ・ドーロ賞を受賞した。同賞は1954年にデパートメントストア「ラ・リナシェンテ」によって創設され、優れた工業製品に贈られる世界で最も歴史ある権威あるデザイン賞の一つである。
本作品が高く評価された背景には、1960年代初頭のイタリア経済成長期(ミラコーロ・エコノミコ)における住空間の変容がある。都市生活者の居住空間が近代化する中で、限られたスペースを有効活用しながらも格調高い暮らしを演出する家具への需要が高まっていた。フラッティーニのセクレテールは、まさにこうした時代の要請に応える形で誕生したのである。
製造を担ったベルニーニ社は、1957年に創業したイタリアの家具メーカーであり、フラッティーニをはじめとする当代一流のデザイナーたちと協働し、数々の名作を世に送り出した。同社の卓越した木工技術と品質管理が、本作品の完成度を支えている。
評価
780/783 セクレテールは、イタリア・ミッドセンチュリー・モダンを代表する傑作として、デザイン史において確固たる地位を築いている。世界各地のデザイン美術館において収蔵・展示され、学術的研究の対象となると同時に、オークション市場においても継続的に高い評価を得ている。
本作品の意義は、単なる機能的な家具を超えたところにある。それは、戦後イタリアがいかにして独自のデザイン文化を確立し、世界のモダンデザインに貢献したかを示す証左であり、フラッティーニの卓越した造形力と、イタリア家具産業の高い製造水準を後世に伝える文化遺産である。
現代のインテリアデザインにおいても、本作品はクラシックとモダンが共存する空間のアクセントとして、あるいは書斎の中心的存在として、その価値を失っていない。上質な素材と普遍的なデザインは、時代を超えて愛され続ける所以である。
受賞歴
- 1961年
- コンパッソ・ドーロ賞(Compasso d'Oro)受賞
基本情報
| デザイナー | ジャンフランコ・フラッティーニ(Gianfranco Frattini) |
|---|---|
| ブランド | ベルニーニ(Bernini) |
| 発表年 | 1961年 |
| 製品タイプ | セクレテール(ライティングビューロー) |
| 主要素材 | ローズウッド(パリサンダー)、チーク |
| 原産国 | イタリア |