概要
T3ポケットラジオは、1958年にディーター・ラムスがウルム造形大学(Hochschule für Gestaltung, Ulm)との協働によりデザインした、Braun初のポケット型トランジスタラジオである。トランジスタ技術の採用により小型化を実現し、白いプラスチック製の筐体に円形のチューナーダイヤルと穴を均等に配したスピーカーグリルのみを備えた、装飾を排した佇まいを特徴とする。
ラムスの「Less, but better(より少なく、しかしより良く)」という考え方を反映した製品として、20世紀のプロダクトデザインを代表する一台に数えられている。
デザインと特徴
幅8.3 × 高さ15.2 × 奥行4.1センチメートルという手のひらに収まる寸法の中に、6個のトランジスタと中波・長波(MW/LW)の2バンド受信機能を搭載する。電源は単3電池4本を用いる。
前面には円形のチューナーダイヤルと、小さな穴を均等に配列したスピーカーグリルのみが配され、要素を最小限に絞り込んでいる。当時主流であった装飾的な電子機器のデザインとは対照的なアプローチであり、白い直方体のフォルムは製品の機能をそのまま外観に表したものといえる。軽量で量産に適したプラスチックの採用は、携帯機器としての実用性と普及を両立させる選択でもあった。
歴史的意義とエピソード
T3は、ウルム造形大学との協働から生まれた製品であり、教育機関と企業のコラボレーションの成果としても知られる。発売当初の価格は140ドイツマルクと高価であったが商業的に成功し、その後のBraunのポータブル機器の方向性を示す製品となった。
後年、しばしばApple社のiPodのデザインとの関連が指摘される。Apple社の元最高デザイン責任者ジョナサン・アイブはラムスのデザイン哲学への敬意を公言しており、iPodの白い筐体や円形の操作部にT3への影響を見る評価がある。
評価と収蔵
T3ポケットラジオは、1965年にニューヨーク近代美術館(MoMA)のコレクションに収蔵された(収蔵番号595.1965、メーカーからの寄贈)。日用品である電子機器が美術館のコレクションに加えられた例として位置づけられ、ポータブル電子機器のデザインに影響を与えた製品として広く参照されている。
基本情報
| 製品名 | T3 ポケットラジオ(Transistor 3) |
|---|---|
| デザイナー | ディーター・ラムス、ウルム造形大学 |
| ブランド | Braun AG |
| 製造年 | 1958年 |
| サイズ | 幅8.3 × 高さ15.2 × 奥行4.1 cm |
| 素材 | プラスチック、金属、電子部品 |
| 技術仕様 | 6トランジスタ、MW/LW 2バンド、単3電池4本使用 |
| 収蔵 | ニューヨーク近代美術館(MoMA)1965年収蔵(収蔵番号595.1965) |