カイ・ボイスン モンキー(Kay Bojesen Monkey)は、1951年にデンマークの銀細工職人にしてデザイナーであるカイ・ボイスンが生み出した木製玩具である。チーク材とリンバ材を組み合わせた愛らしい猿のフィギュアは、発表から70年以上を経た今日においてもなお、世界中の人々に愛され続けている。デンマークデザインの精神性を体現する本作品は、単なる玩具の域を超え、北欧デザインを代表するアイコンとして揺るぎない地位を確立している。

本作品は、子どもの玩具として構想されながら、その普遍的な魅力ゆえに大人のコレクターをも魅了し、インテリアオブジェとしての新たな価値を獲得した。手足が自在に動く構造により、さまざまなポーズをとることができ、所有者との対話的な関係性を育む点も特筆に値する。

特徴・コンセプト

カイ・ボイスン モンキーの設計思想は、ボイスン自身が掲げた「線は微笑まなければならない(The lines have to smile)」という哲学に深く根差している。この理念は、工業製品においても温かみと人間性を失わないことの重要性を説くものであり、北欧デザインの根幹を成す思想として今日まで継承されている。

素材と製法

本作品には、チーク材とリンバ材という二種類の木材が用いられている。深みのある茶褐色のチーク材は胴体部分に、明るいリンバ材は顔や手足、腹部に配され、この対比が生き生きとした表情を生み出している。すべての工程は熟練の職人による手作業で行われ、一体一体が丁寧に仕上げられる。木目の美しさを活かした無塗装仕上げは、経年とともに深い艶を帯び、使い込むほどに味わいを増す。

可動構造

両腕と両脚には可動機構が組み込まれており、棚の縁に腰掛けさせたり、物を抱えさせたりと、多彩なポーズを楽しむことができる。この遊び心溢れる仕掛けは、静的なオブジェとは一線を画す、対話的な魅力を本作品に付与している。

サイズ展開

現在、ミニ(高さ約9.5cm)、スモール(高さ約20cm)、ミディアム(高さ約28cm)、ラージ(高さ約46cm)の四種類のサイズが展開されている。いずれのサイズにおいても、オリジナルのプロポーションと品質が忠実に継承されている。

エピソード

カイ・ボイスン モンキーの誕生には、ボイスンの孫であるオットーの存在が深く関わっている。1951年、ボイスンは愛する孫のために特別な玩具を作ろうと考え、生命力に満ちた猿のフィギュアを構想した。完成した作品は孫を喜ばせただけでなく、そのデザインの卓越性から瞬く間に評判を呼び、デンマーク国内で広く流通することとなった。

デンマークでは、本作品を洗礼式の贈り物とする伝統が根付いている。子どもの健やかな成長を願い、世代を超えて受け継がれる慣習は、デンマーク文化における本作品の特別な位置づけを物語っている。また、多くの家庭において、子ども時代に贈られたモンキーを大人になっても大切に保管し、やがて自らの子どもへと継承する光景が見られる。

ボイスンは生前、「良い木製玩具は、角が丸くなければならない」と語っていた。この信念は本作品にも反映されており、すべての角が滑らかに仕上げられ、子どもが安心して触れられるよう配慮されている。

評価

カイ・ボイスン モンキーは、デンマークデザイン界における最高傑作の一つとして国際的に認知されている。デンマーク・デザインミュージアムをはじめとする世界各地の著名な美術館・博物館にその作品が収蔵されており、デザイン史における重要性が学術的にも認められている。

本作品の価値は、単なる歴史的意義にとどまらない。現代のインテリアデザインにおいても、その時代を超越した美しさと温かみは高く評価されており、ミッドセンチュリーモダンから北欧モダン、さらにはコンテンポラリーな空間に至るまで、あらゆるスタイルのインテリアに調和する稀有な存在として認められている。

デザイン批評家たちは、本作品が体現する「機能と情緒の融合」を高く評価する。玩具としての実用性を保ちながら、彫刻作品としての芸術性をも兼ね備える本作品は、デザインの本質に関する示唆に富んでいる。

受賞歴・評価

カイ・ボイスンの作品群は、デンマーク王室からも高い評価を受けている。1938年にはデンマーク王室御用達の栄誉に浴し、その後、彼が手がけたカトラリー「グランプリ」シリーズは王室の公式晩餐会で使用されることとなった。このような権威ある評価は、モンキーを含むボイスンの木製玩具シリーズの品質と芸術性を裏付けるものである。

また、モンキーはデンマーク・デザインアワードにおいて「20世紀を代表するデンマークデザイン」の一つに選出されており、同国のデザイン史における不朽の名作として位置づけられている。

デザイナーについて

カイ・ボイスン(Kay Bojesen、1886-1958)は、デンマークのコペンハーゲンに生まれた銀細工職人にしてデザイナーである。デンマーク・ロイヤルアカデミーで学んだのち、著名な銀細工工房で修業を積み、1910年に自身の工房を設立した。当初は銀器を専門としていたが、1930年代より木製玩具の制作に取り組み始め、独自のデザイン言語を確立していった。

ボイスンのデザイン哲学は、北欧モダニズムの根底にある人間中心主義を体現している。「子どもの視点に立つこと」「素材の特性を活かすこと」「手触りの心地よさを追求すること」という三つの原則は、彼の全作品に通底するものであり、後進のデザイナーたちに多大な影響を与えた。

基本情報

名称(日本語) カイ・ボイスン モンキー
名称(英語) Kay Bojesen Monkey
デザイナー カイ・ボイスン(Kay Bojesen)
デザイン年 1951年
ブランド Kay Bojesen Denmark(カイ・ボイスン デンマーク)
原産国 デンマーク
素材 チーク材、リンバ材
サイズ展開 ミニ(約9.5cm)、スモール(約20cm)、ミディアム(約28cm)、ラージ(約46cm)
カテゴリー 木製玩具 / インテリアオブジェ