スカルプテッド・スチール・コンソールは、20世紀アメリカを代表する家具デザイナー兼彫刻家、ポール・エヴァンス(Paul Evans, 1931-1987)が1960年代後半から1970年代初頭にかけて制作した彫刻的コンソールテーブルです。高浮き彫りのパティーナ鋼鉄とエナメル仕上げによる独創的な造形は、家具の域を超えた芸術作品として高く評価されています。

デザインと特徴

本作品の最大の特徴は、木製のケースに配置された高浮き彫りのパティーナ鋼鉄マウントです。グリッドパターンに整然と配列された各マウントには、独自の金属エンブレムやグリフが埋め込まれており、その視覚効果は「力強いキルト」と形容されています。

表面には、グレー、レッド、ブルー、シルバーホワイトといった多彩なエナメル仕上げが施され、深い立体感と豊かな色彩表現を実現しています。扉部分には、交互に配置されたシェブロン模様と溶接による縞模様が特徴的で、エヴァンスの卓越した金属加工技術を示しています。

キャビネット内部は、オックスブラッド色のポリクローム仕上げが施され、2つの棚と2つの引き出しを備えた機能的な収納空間を提供します。多くの作品には「P EVANS」の署名と制作年が刻まれており、その芸術的価値と真正性を証明しています。

製作技法

エヴァンスは、革新的な金属加工技術を駆使してこの作品を生み出しました。製作プロセスは、まず木製フレームに溶接された鋼鉄を用いて基本構造を形成し、その上にパティーナ処理を施して独特の質感を生み出します。さらに、高浮き彫りの装飾要素は手作業で鍛造され、各ピースごとに異なる表情を持つエンブレムやグリフが配置されました。

エナメル仕上げの工程では、酸によるパティーナ処理と色付きエナメルを組み合わせることで、金属表面に深みのある色彩と複雑なテクスチャーを実現しています。すべての工程において、エヴァンス自身が厳格に監督を行い、一つひとつの作品が手作業で仕上げられることを徹底しました。

歴史的背景とコンセプト

ポール・エヴァンスは、1931年にペンシルベニア州ニュータウンに生まれ、フィラデルフィア・テキスタイル・インスティテュート、ロチェスター工科大学、そして名門クランブルック美術アカデミーで学びました。1964年、著名な家具メーカーDirectional Furnitureの専属デザイナーとなり、アルジャントシリーズ、スカルプテッドブロンズシリーズ、シティスケープシリーズなど、数々の革新的な家具ラインを発表しました。

スカルプテッド・スチール・コンソールは、エヴァンスが「スカルプテッド・フロント」キャビネットとして確立したスタイルの代表作です。このシリーズは、ルイーズ・ネヴェルソンやアドルフ・ゴットリーブといった現代美術家のコラージュ的構成と、ブルータリズムムーブメントの生々しい素朴さを融合させた、独自の表現主義的美学を体現しています。

当時のアメリカやヨーロッパで主流だった洗練された無装飾の家具デザインとは対極に位置する、大胆で表現力豊かな作品として注目を集めました。

評価と影響

21世紀に入り、ポール・エヴァンスの作品は再評価され、20世紀アメリカ家具デザインの最も収集価値の高い作品の一つとなっています。2017年には、エヴァンスのキャビネットがオークションで382,000ドルで落札されるなど、その芸術的・商業的価値は年々高まっています。

グウェン・ステファニー、レニー・クラヴィッツ、トミー・ヒルフィガーといった著名人がコレクターとして知られており、ロンドンのKen Bolan Studioのケン・ボランは、エヴァンスの作品を「彫刻」として捉え、デザイナーとしての彼の魅力を高く評価しています。

2014年には、ペンシルベニア州のジェームズ・A・ミッチェナー美術館で初の包括的な回顧展「Paul Evans: Crossing Boundaries and Crafting Modernism」が開催され、その後クランブルック美術館に巡回しました。この展覧会は、エヴァンスのアメリカンスタジオ家具ムーブメントにおける重要な役割と、家具を彫刻および抽象的構成として捉える革新的なアプローチを記録する重要な機会となりました。

スカルプテッド・スチール・コンソールは、手工芸の伝統と最新技術を融合させたエヴァンスの哲学を象徴する作品として、現代の家具デザインに多大な影響を与え続けています。

基本情報

デザイナー ポール・エヴァンス(Paul Evans)
制作年代 1960年代後半〜1970年代初頭
分類 コンソールテーブル
素材 鋼鉄、木材、エナメル、パティーナ仕上げ
製造元 Paul Evans Studio / Directional Furniture
スタイル ブルータリズム、アメリカンクラフトムーブメント
サイン 多くの作品に署名と制作年が刻印